前回は、必要に応じて利用できる救済措置「生活保護」の詳細と利用方法を紹介しました。今回は、意思決定能力が低下した人の生活を守る「成年後見制度」について見ていきます。

判断能力の不十分な人に代わり、別の人が財産を管理

成年後見制度は、精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により判断能力の不十分な人に代わり、別の人が不動産や預貯金などの財産を管理したり、介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする制度です。

 

認知症が進むと、自分にとって不利益な悪徳商法の契約を結んでしまったり、テレビショッピングの商品を次々と買ってしまい、食費や公共料金の支払いが滞ったり……ということが珍しくありません。こうした判断能力の不十分な人を保護して支援する制度です。

 

ほかにも、生活保護を受ける時に、自治体から自宅や土地を処分してくださいといわれたものの、本人に判断能力がないため処分できないということがあります。こういう場合には成年後見制度で財産上の手続きを行うことが必要になります。 

 

成年後見制度には、「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類があります。

事前に本人が任意後見人を選ぶ「任意後見制度」

●任意後見制度

 

本人の判断能力がしっかりしているうちに、将来に備えて「この人に頼みたい」と本人が選んだ代理人(任意後見人)に、自分の生活や療養看護、財産管理に関する事務について代理権が与えられる仕組みです。

 

公証人の作成する公正証書で「任意後見契約」を結んでおくことで、本人の判断能力が低下した後に、任意後見人は本人の意思にしたがった適切な保護・支援をすることが可能になります。ただし、この場合は裁判所が「任意後見監督人」(弁護士や司法書士など)を選任して、任意後見人を監督します。

 

[図表]法定後見の開始までの流れ

申し立てから4カ月以内に法定後見が開始される
このように長期間にわたるのは、鑑定手続きや成年後見人の候補者の適格性の調査、本人の
陳述聴取などのために、一定の審理期間を要するため
申し立てから4カ月以内に法定後見が開始される このように長期間にわたるのは、鑑定手続きや成年後見人の候補者の適格性の調査、本人の 陳述聴取などのために、一定の審理期間を要するため

 

不正などを防ぐために、任意後見人は本人が希望してもなれない場合があります。親族調査を行い、この人なら大丈夫だと裁判所が判断してはじめて認められます。また、不正な行為などが発覚した場合、任意後見監督人、あるいは本人や親族、検察官の申し立てにより、裁判所が任意後見人を解任することがあります。

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