介護が原因となって、親のみならず子の世帯までが貧困化し、やがて破産に――いわゆる「介護破産」は、もはや社会問題の一つになっています。しかし、利用する側が積極的に動いて情報を集め、最適なサービスや施設を正しく見極めれば、介護破産に陥るリスクは大きく軽減できます。そこで本連載では、介護破産を回避する「補助金」「減税制度」を紹介します。

介護は「公的サービスの利用と支出の抑制」で乗り切る

介護生活はいつまで続くか分かりません。「介護イコール施設介護と決めつけて施設を利用する」、あるいは「お金のかかる介護サービスは受けず家族が離職して介護にあたる」といった極端な考えで介護生活をはじめてしまえば、その先に待ち受けているのは介護破産です。

 

介護破産を防ぐには、できるだけ家族が働き続けて収入を確保しながら、介護保険サービスを上手に使い、支出を可能なかぎり抑えることが重要です。

 

そのためには要介護者の状態に加え、家族の経済状況や生活パターンに合った介護保険サービスを選ぶことが必要ですが、それについては本書『人生を破滅に導く「介護破産」』第5章で詳しく解説します。

 

そのほかにも、以下で述べる各種の公的制度を利用することで、負担を大幅に減らすことができます。ただし、こうした制度は、基本的に利用者が申請しなければ適用されることはありません。申請するとかなりの金額を支払わずに済んだり、還付されたりすることがあるので、各制度の適用対象になっていないかどうか、こまめにチェックするようにしましょう。

所得が低い場合は、居住費・食費の自己負担額に上限

■補足給付(特定入所者介護サービス費)

 

介護保険施設やショートステイなどの短期入所サービスの居住費(滞在費)および食費は、保険給付外なので全額自己負担です。ただし、住民税非課税世帯に属する低所得者の場合は、自己負担額の上限が段階ごとに設けられていて、それを上回る場合は超過分が給付されます(補足給付)。

 

該当する場合は、自治体の介護保険の窓口で「介護保険負担限度額認定証」の認定を受けて、施設に提示しましょう。認定の際には「介護保険負担限度額認定申請書」と介護保険証、預貯金に関する資料(通帳など)が必要になります。

 

無年金の人や、国民年金で受給額が低い人などは、この制度を利用しなければ介護破産につながる可能性がありますので、ぜひ申請してください。

 

ただし、次の場合は補足給付の対象外になるので注意が必要です。

 

●預貯金などが単身1000万円(夫婦2000万円)を超える場合

●住民票上では世帯分離していて、別世帯になっていても、配偶者が住民税課税対象である場合

●遺族年金や障害年金(非課税年金)を含めると、住民税の課税対象になる場合

 

補足給付の有無は、従来本人の所得のみで決められていましたが、多額の預貯金がある人も給付対象になっていたため、不公平だという理由で2015年にこのような改正が行われました。さらに土地や建物などの不動産を所有する場合も補足給付の対象外にしようという案が出ており、今後の動向に注意が必要です。
 

[図表]利用者負担段階と負担限度額

※第1段階〜第3段階すべて、預貯金等が単身で1000万円(夫婦で2000万円)以下の人 厚生労働省「平成26年介護保険法改正周知用リーフレット」より作表
※第1段階〜第3段階すべて、預貯金等が単身で1000万円(夫婦で2000万円)以下の人 厚生労働省「平成26年介護保険法改正周知用リーフレット」より作表

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    杢野 暉尚

    幻冬舎メディアコンサルティング

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