今回からは、中小企業の「事業承継に向けた準備」の進め方を説明します。※本連載は、島津会計税理士法人東京事務所長の岸田康雄氏と、事業承継コンサルティング株式会社の取締役である村上章氏による共著、『図解でわかる 中小企業庁「事業承継ガイドライン」完全解説』(ロギカ書房)の中から一部を抜粋し、中小企業庁によって策定された「事業承継ガイドライン」を分かりやすく読み解き、「事業承継」の重要性について詳しく探ります。

まずは事業承継に向けた準備の必要性・重要性を認識

現在、事業承継が円滑に進まない原因の一つに、事業承継の準備を行われていないことが挙げられます。これは、そもそも事業承継に準備が必要であること、事業承継の準備に5年~10年の期間を要すること、事業承継の準備の巧拙がその成否を分けることが知られていないからでしょう。

 

事業承継を実行するまでには、親族内・従業員承継の場合は、事業承継計画を立案することが必要となりますし、M&A等の場合は、引継ぎ先を選定するためのマッチング(相手探し)が必要となります。いずれも手間と時間をかけて行わなければなりません。準備の必要性を認識するとともに、早めに着手することが求められるのです。

 

事業承継の円滑化のためには、早期に準備に着手し、公認会計士や中小企業診断士等の支援機関の協力を得ながら、事業承継の実行、さらには自社の事業の10年後をも見据えて、着実に行動を重ねていく必要があります。

 

どのような経営者であっても、まずは事業承継に向けた準備の必要性・重要性をしっかりと認識しなければ、準備に着手することはできません。

 

次に、経営状況や経営課題等を把握し、これを踏まえて事業承継に向けた経営改善に取り組む必要があります。ここまでで、事業承継に向けて中小企業の足腰を固めることができるでしょう。

 

その後、親族内・従業員承継の場合には、後継者とともに事業計画や資産の移転計画を含む事業承継計画を策定し、事業承継を実行に移すこととなります。他方、社外への引継ぎを行う場合には、引継ぎ先を選定するためのマッチングを実施し、合意に至ればM&A等を実行することとなります。

 

さらに、事業承継実行後(経営交代後の取組み=「ポスト事業承継」)には、後継者による中小企業の成長・発展に向けた新たな取組みの実行が期待されます。

 

経営者が「60歳」に達した頃には、準備に取りかかる

【1】 ステップ1:事業承継に向けた準備の必要性の認識

 

 

経営者に対して事業承継を促すようなアドバイスをしてくれる人は、周りにほとんどいないでしょう。経営者個人は、何歳になってもいつまでも現役で働くことができると意気込んでいることが多く、60歳なんてまだまだ若いと思っているはずです。

 

一方、従業員にとってみれば、自分の雇い主であり、上司に対して、引退を促すことを進言できるはずがありません。そのため、経営者は、多忙な毎日の中で立ち止まって事業承継のことを考える機会がないのです。

 

公認会計士や中小企業診断士が、「事業承継診断」という簡易な質問リストを配布しています。ぜひ一度、その質問に回答してみてください。この「事業承継診断」を使い、一度立ち止まって事業承継のことを考えるきっかけとしていただきたいものです。

 

一般的に、事業承継問題は、家族内の課題として捉えられがちであり、気軽に外部に相談できないとする経営者がたくさんいらっしゃいます。このため、やっと事業承継の準備に着手し、専門家のもとを訪れた時には既に手遅れになっていたという事例が多いようです。

 

このため、後継者教育等の準備に要する期間を考慮し、経営者が概ね60歳に達した頃には事業承継の準備に取りかかることが望ましいと言えます。他方で、60歳を超えてなお経営に携わっている経営者も多数いらっしゃいますが、そのような場合は、すぐにでも身近な公認会計士や中小企業診断士に相談し、事業承継に向けた準備に着手すべきです。

 

他方、支援機関側にとっても、事業承継問題は、広範かつ専門的な知識・経 験を必要とすることに加え、プライベートな領域にも踏み込まざるを得ない側面を有していることから、相談を待つといった受け身の姿勢になりがちです。

 

そこで、事業承継に向けた準備状況の確認や、次に行うべきことの提案等、事業承継に関する対話のきっかけとなる「事業承継診断」(事業承継に関する診断項目への回答を通じて、自社の将来や事業承継に向けた進め方・課題について経営者自ら検討するきっかけとする取組であり、事業承継に向けた早期かつ計画的な準備への着手を促すもの。)の実施が始まったのです。

 

この話は次回に続きます。

 

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    本連載は、『図解でわかる 中小企業「事業承継ガイドライン」完全解説』(ロギカ書房)を一部抜粋し、加筆・再編集したものです。

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