前回に引き続き、日本を待ち受ける「ゆでガエル」シナリオを紹介します。今回は、「日本経済破綻」までの道のりを探ります。※本連載は、金融情報全般を扱う大手情報配信会社、株式会社フィスコ監修の『FISCO 株・企業報 2017年冬号 今、この株を買おう』(実業之日本社)の中から一部を抜粋し、「第4次産業革命」以降の日本経済のゆくえを探ります(分析:株式会社フィスコIR取締役COO・中川博貴氏)。

第4次産業革命に乗り遅れれば、外貨獲得モデルは崩壊

前回の続きである。もし仮に、日本の人口が中長期に減少していく中で、旧い体制や規制が足枷となり、第4次産業革命に乗り遅れたならば、これまで築き上げた独自の外貨獲得モデルはいずれ機能不全に陥ることになる。

 

すると「貯蓄率の低下」「財政赤字の膨張」が起点となって、日本の資金繰りが著しく悪化する可能性が高い。

2040〜50年に財政破綻か? 日本は長期停滞不況国へ

以下の図表で示すのは、フィスコで実施したシミュレーションである。変数は人口成長率のみ、2016年度から対前年比でマイナス成長すると仮定した。推計結果だが、外貨準備は2030年には2015年比で19兆円減の約104兆円まで減少する。

 

また、家計金融資産残高は2030年に約1632兆円、対外純資産残高も291兆円といずれも減少する見込みだ。一方、政府債務残高は2015年比で221兆円増の約1458兆円へと膨れ上がると予測する。

 

下記の参考資料を参考に予測 明治安田生命「日本経済中期見通し(2016-2025 年度)」、三菱総研「内外経済の中期展望(2015-2030 年度)」、内閣府「中長期の経済財政に関する 試算」、ニッセイ基礎研究所「中期経済見通し(2015 ~ 2025 年度)」、三菱UFJ リサーチ& コンサルティング「経常収支の長期展望」
下記の参考資料を参考に予測
明治安田生命「日本経済中期見通し(2016-2025 年度)」、三菱総研「内外経済の中期展望(2015-2030 年度)」、内閣府「中長期の経済財政に関する 試算」、ニッセイ基礎研究所「中期経済見通し(2015 ~ 2025 年度)」、三菱UFJ リサーチ& コンサルティング「経常収支の長期展望」

 

前 提 1)経済モデル・S-I=(G-T)+NX 2)変数の捉え方・アブソープションモデルを想定し、各条件を設定 3)シミュレーションにおける留意点・日本経済の現状は、モデル式における左辺が資金余剰(+++ぐ らい)、それを右辺の政府部門が財政赤字(++ぐらい)、かつ海外への貯蓄という意味で貿易黒字(+ぐらい)である・経済モデルとして理論上は均衡する。膨らみ続ける政府部門(G-T)を国内資金余剰(S-I)と海外部 門(NX<0)がまかなうという構図が中長期な日本経済の姿に近い 4)メソッド ①国民経済月報データ(2000-2015)に基づき、民間貯蓄バランスを測定 ②計測期間を2016年から2030年とし、GDP成長率=人 口成長率として基礎変数を推測 ③上記モデルに立脚するため、不均衡の是正は海外部門が調整するとした ④国民一人が当たり有する資産残高と国民一人当たりが背負う債務残高の比率を自己資本比率にみたてた 気付き 日本経済の安定性(経済モデルの頑健さ)は2019年までは力強い 2020年を分水嶺に、2050年には債務超過(財政破綻)に陥る可能性が高い

下記の参考資料を参考に予測 明治安田生命「日本経済中期見通し(2016-2025年度)」、三菱総研「内外経済の中期展望(2015-2030年度)」、内閣府「中長期の経済財政に関する試算」、ニッセイ基礎研究所「中期経済見通し(2015~2025年度)」、三 菱UFJリサーチ&コンサルティング「経常収支の長期展望」
前提 1)経済モデル・S-I=(G-T)+NX 2)変数の捉え方・アブソープションモデルを想定し、各条件を設定 3)シミュレーションにおける留意点・日本経済の現状は、モデル式における左辺が資金余剰(+++ぐ らい)、それを右辺の政府部門が財政赤字(++ぐらい)、かつ海外への貯蓄という意味で貿易黒字(+ぐらい)である・経済モデルとして理論上は均衡する。膨らみ続ける政府部門(G-T)を国内資金余剰(S-I)と海外部 門(NX<0)がまかなうという構図が中長期な日本経済の姿に近い 4)メソッド ①国民経済月報データ(2000-2015)に基づき、民間貯蓄バランスを測定 ②計測期間を2016年から2030年とし、GDP成長率=人 口成長率として基礎変数を推測 ③上記モデルに立脚するため、不均衡の是正は海外部門が調整するとした ④国民一人が当たり有する資産残高と国民一人当たりが背負う債務残高の比率を自己資本比率にみたてた 気付き 日本経済の安定性(経済モデルの頑健さ)は2019年までは力強い 2020年を分水嶺に、2050年には債務超過(財政破綻)に陥る可能性が高い
 
下記の参考資料を参考に予測 明治安田生命「日本経済中期見通し(2016-2025年度)」、三菱総研「内外経済の中期展望(2015-2030年度)」、内閣府「中長期の経済財政に関する試算」、ニッセイ基礎研究所「中期経済見通し(2015~2025年度)」、三 菱UFJリサーチ&コンサルティング「経常収支の長期展望」

 

この状態を企業経営の安定性を判断する自己資本比率の尺度に照らしてみると、国の自己資本比率は2030年に28%、2040年には18%、2050年には8%と著しく悪化していくことが理解できる。

 

この過程において、人口減少による貯蓄率の低下、経常収支の赤字転落。そして海外機関投資家の台頭という経路と、財政赤字が膨張し、穴埋め不能な水準に達したことで国債の信用力が低下するという経路が重なり、国の信用力が懸念されるかもしれない。

 

すると、国債価格が下落、追い打ちをかけるように投資家の損失切りが浴びせられれば価格は暴落。国債の買い手がいなくなり、政府の資金繰りが行き詰まることになるだろう。

 

日本は今、まさに未来に向けて策を講じなければ、2040〜50年に財政破綻の危機に直面する状況にある。資金繰りが行き詰まってしまった状況に陥った日本は財政破綻への道をたどるしかない。長期停滞不況から逃れることはできない。

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