前回は、中小企業の経営課題として、顧客満足と従業員満足のどちらが重要であるのかを検証しました。今回は、創造性が求められるこれからの時代に向けた、伸びる従業員を育成する方法を見ていきます。

「売る仕組み作り」=ビジネス全般に使える思考方法

多くの中小企業は総じて現場力が強い。ところが、その前段階のマーケティング力は弱い、と言うよりないに等しいのです。

 

マーケティングとは、「売る仕組み作りである」という理解が一般的です。私もマーケティングを学び始めた時は、そう理解をしていました。

 

しかし、「売る」場面にかかわる課題(まさにマーケティングの問題です)、直接「売る」場面とは関係のない課題の両方に繰り返し取り組むことを通じて、その本質は同じだということに気が付きました。

 

つまり、どういったビジネス上の問題でも、「顧客と会社」の関係に置き換えられ、そこに表出している問題の中に潜む「課題の本質」は何かを掴むこと、「課題」をロジックとセンスを駆使しながら解くことは共通しているということです。従って、マーケティングはその本質において、「売る仕組み作り」というような狭義の定義が当てはまるものではなく、ビジネス全般に使える思考方法なのです。

 

よって、「弓削ジム」では「マーケティング」は単なる「売る仕組み作り」には留まらない課題を取り扱います。

2割の「良くできる人」が育てば、組織は上手くいく

従業員教育には時間がかかります。特に中小企業の従業員は、入社後もまともにビジネスの思考方法についての訓練を受けたことがない人が大半です。入社後、年数が経てば経つほどモノの見方も固まり、強力な「フレーム」が形成されます。その「フレーム」を通じてしか物事が見られなくなっていきます。オペレーションの観点からは、「フレーム」は有効な目に見えないツールです。「フレーム」は定型的な仕事の効率を間違いなく上げます。短期的な視点しか持てない経営者は、そうした人材に高い評価をするでしょう。

 

一方で、「フレーム」は発想のジャンプ力を脆弱化します。いつも同じ場所で同じ仕事のやり方をしているので、見える景色は同じです。世界には違う景色がたくさん存在することさえ分からなくします。このような人材は、創造性がより求められるこれからの時代には「全く」使えません。その処遇に困る場面が今後多くなることは間違いないでしょう。

 

そのような従業員の思考のクセを取り払い、これからの時代に必要な存在に変えるためには相当の時間がかかります。また、時間をかけても全てが育つとは限りません。経験から言えば、3年ジムを継続して本当に変わったなと実感した生徒は、10人中2人くらいです。ですが、この2人が大事なのです。この2人がさらに研鑽を積んで次の世代の中心となって、真のリーダーに育ってくれればよいのです。

 

もちろん、ジムの生徒全てが育つように平等に接しますが、全てが育てば逆に組織の体をなしません。全員がリーダーという組織は存在できないからです。

 

社会は良くできていると思います。2割の良くできる人と2割のできる人、4割の普通の人、2割の出来の悪い人がいるくらいの組織のほうが上手くいくのが生物の世界の不思議なところです。ですから弓削ジムの目標は、上の2割を作ることなのです。

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    本連載は、2017年5月26日刊行の書籍『「事業再生」の嘘と真実 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    弓削 一幸

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