前回は、管理業務の円滑化を目指す「PDCAサイクル」が抱える問題点を取り上げました。今回は、PDCAサイクルを阻害する「心理的バリア」を取り除く方法を見ていきましょう。

自らの営業経験が「外部のアドバイス」を遮断!?

第11回で紹介したA社の例でいうと、多くの営業マンの深層心理に何らかの心理的バリアが存在しているため行動に移せないのです。

 

それは、「営業責任者の俺の言うことが絶対だから、外部のコンサルタントの言うことを聞く必要などない」というような、営業責任者に備わった心理的バリアであるかもしれません(実際にそうでした)。

 

あるいは、「そんな低い価格を今さら提示したら、今までの提示価格は何だったんだと、クライアントに逆に怒られてしまうじゃないか」と過去の営業での提示価格にこだわってしまう気持ちや、「あの会社の購買部長、本当に苦手なんだよ。取引ができなくて喜んでいるのに、今までよりも安い提示価格で営業に行けだなんて、なんて事を言うんだよ」といった気持ちかもしれません。

 

このようないろいろな心理的バリアが邪魔をして、彼らが新規顧客を訪問して新しい価格を提示するという行動から遠ざけていたのです。従って、彼らに行動してもらうには、この心理的バリアが何なのかを把握し、対処する必要があります。

顧客の説得方法などの具体的な助言で、ようやく克服

本件では、A社の個々の営業担当にデプスインタビューを実施したところ、先ほど例示したように、「新しい価格を提示すれば、新規顧客の開拓に繋がることは理解しているのだけれども、その前に、今までの提示価格は何だったのか。今までは、掛け値商売をしていたのではないか。と疑われたり、怒られたりするのが嫌だから、新しい価格を持って営業に行きたくはありません」という意見が大勢を占めていました。

 

そこで、今までは何回営業しても価格が問題で開拓できなかった営業先に、A社の営業担当が新しい価格を提示しやすくするために、「新しいお客様との取引開始によって、当社の工場の稼働率が上がったために、今回の廉価な価格のご提示が可能となりました」と説明するよう指示を出し、ようやく彼らを納得させて、新しい価格で営業に回ってもらうことができるようになりました。

 

一見すると、喜び勇んで新しい価格で営業に行くと思えるようなケースでも、「行動」に移すまでに半年間の時間を要しました。いかにPDCAサイクルを回すことが難しいか、ご理解頂けたでしょうか。

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    本連載は、2017年5月26日刊行の書籍『「事業再生」の嘘と真実 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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