相続した実家の売却・・・結局「断念」した理由とは?

今回は、実家の売却を断念するに至った理由を見ていきます。※本連載は、士業プロフェッショナルネットワーク・アールパートナーズ代表で公認会計士の平林亮子氏の著書、『〈新版〉相続はおそろしい』を一部抜粋し、実際のトラブルをもとにしたフィクションを通じ、不動産の相続トラブルの予防策を見ていきます。

実家の売却を聞きつけ、乗り込んできた弟たち

勝が不動産の売却話を始めてから数週間後、噂を聞きつけた和夫と猛が勝のところに乗り込んできた。

 

「勝兄さん、家を売ろうとしているって本当なの?」

 

和夫がそうたずねると、猛が付け加えた。

 

「冗談じゃないよ。家族みんなの思い出が詰まっているこの家を売るなんて。兄貴がここを守ってくれると思ったから、相続してもらったんだよ」

 

二人の言葉に、勝は子供のころのように喧嘩腰になってこう答えた。

 

「現金を手に入れたお前らに偉そうなことを言われたくないよ。売ったら価値があると査定結果をつきつけてきたのはそっちだろう? 家を維持するのにだってお金がかかるんだ。そのうえ、借金まで背負ってるんだぞ」

 

「借金は俺たちだって背負っただろう。もしかしてこの家、けっこう高く売れるんじゃないのか? だからこの家を売って、自分だけ小金を手に入れようって思ってるんじゃないだろうな!」

 

「何を! 俺の気も知らないで!」

 

借金のこと、税金のこと、売却の可能性など、いろいろなことが頭の中でぐるぐると渦巻いていたこともあり、勝は一段と感情的になってそう言い返した。

 

こうなると、もう3人の対立は収拾がつかない状況となった。

 

不動産の維持には何かとお金がかかる。例えば、固定資産税。例えば、借地の上に家を建てているような場合の地代。例えば修繕費用。そのため、相続の際には、何十年も先の出費まで考慮して、財産を分割することが重要なのだ。

 

「とにかく、俺が相続した家だ。どうしようと俺の自由だろう! いやだったら、お前らに売ってやるから買えばいい」

 

勝はそう言って弟二人を追い出した。

問題を引き起こしたのは「自分の甘さ」・・・

しかし、実は勝も迷っていた。この家は、家族の思い出が詰まった場所。そして、これからも兄弟3人が遠慮なく集える場所。この家に「いくら」などという値段をつけて処分してしまってもいいのだろうか。そして、一度手放してしまったら、きっともう二度と手に入らないだろう。

 

そもそも、相続で家が手に入るだろうと期待して預金をしてこなかった自分の甘さが今回の問題を引き起こしたのだ。

 

売却したところで、代わりの不動産を購入したら自分の手許にたいしたお金が残るわけでもない。

 

悩んだ末、勝はできる限り家を守り続けようという結論を出した。

 

相続して数ヶ月。勝はやっと「家を守る」という覚悟を持つことができたのだった。

 

不動産を相続するときも処分するときも、不動産に関する契約書、権利証、お金の授受の書類が重要になる。そのためすべてをワンセットにして保管しておくとよい

 

また、不動産にはさまざまな税金など維持費がかかることを覚えておき、相続時にもその点に配慮しておかなければ、後々、大きなトラブルを引き起こすこともある。

本連載は、2015年10月30日に新版として刊行された書籍『〈新版〉相続はおそろしい』から抜粋したものです。稀にその後の法律、税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載フィクション事例で学ぶ「相続トラブル」回避術

士業プロフェッショナルネットワーク・アールパートナーズ代表
レオン自動機株式会社(東証1部上場)社外監査役 公認会計士

士業プロフェッショナルネットワーク・アールパートナーズ代表。レオン自動機株式会社(東証1部上場)社外監査役。
起業やプロジェクトのたち上げから、経営全般に至るまであらゆる面において経営者をサポートしている。また、女性プロフェッショナルに関するプロジェクト「SophiaNet」をプロデュース。経営サポートに必要な幅広いネットワークを持つ。2013年には女性会計士チームCPA745をプロデュースし、女性会計士全国ネットワークCPA745Clubの代表を務めるなど公認会計士業界の活性化にも力を入れている。
コンサルティング業務のかたわら、情報番組のコメンテーター、ラジオパーソナリティーを務めるなど、マスコミでも活躍。
上場企業等の社内研修講師、学校、ビジネススクール、各種セミナーやイベントなどで講義、講演、ファシリテーター等も積極的に行っている。
『決算書を楽しもう』(ダイヤモンド社)、『お金が貯まる5つの習慣』『<新版>相続はおそろしい』(幻冬舎新書)『レシートで人生を変える7つの手順』『損しないのはどっち?』(幻冬舎)など、著書は監修も含めると50冊を超える。
1975年千葉県生まれ。お茶の水女子大学文教育学部地理学科出身。大学3年次在学中に公認会計士試験合格。太田昭和監査法人(現新日本有限責任監査法人)にて国内企業の監査に多数携わった後2000年に25歳で独立。現在にいたる。

アールパートナーズ
http://www.r-cpa.co.jp

平林亮子オフィシャルウェブサイト
http://www.hirabayashi-cpa.com

著者紹介

<新版>相続はおそろしい

<新版>相続はおそろしい

平林 亮子

幻冬舎

「相続」の恐怖が、さらに多くの人を襲う――。2015年1月1日より相続税が大幅に増税。妻と子供二人で夫の財産を相続する場合、税金のかからなかった8000万円というこれまでのラインが、4800万円まで引き下がる。4%しかいなかっ…

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