今回は、遺言書を活用して「不動産の瑕疵担保責任」を減免する方法を見ていきます。※本連載は、長年、不動産会社で不動産金融・不動産法務に従事し、現在は相続・不動産コンサルタントとして活躍する藤戸康雄氏の著書、『「負動産」時代の危ない実家相続 知らないと大損する38のポイント』(時事通信出版局)の中から一部を抜粋し、実家の相続について問題点や対策をわかりやすく解説します。

継いでほしいといわれた実家がボロボロだったら・・・

前回の例のように実家をどうしてもあなたに継いでほしいと親が考えていた場合でも、すでに実家が老朽化してボロボロだったりしたら、あなたは実家を相続するのをためらいますよね。弟や妹にしても、遺産分割した後に実家のことでもめるのは嫌ですよね?

 

このような場合を想定して、民法には遺言で遺産に関する担保責任を指定することができる規定があります。

 

●民法914条(遺言による担保責任の定め)

前3条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、適用しない。

 

例えば、被相続人が遺言の中で、

 

「長男に実家を相続させる。現金2000万円は、長男に400万円、次男に800万円、長女に800万円ずつ相続させる。なお、取得した財産に瑕疵がある場合は長男の負担とし、次男と長女には負担させない」

 

と書いておけば、仮に実家(1000万円相当とします)がボロボロで長男が住むためには600万円の修理代がかかるとしても、相続した後で修理代でもめることがなくなります(次男、長女の相続分と同額だから)。

遺言の法的な問題の有無は「遺留分」を基準に判断

もっとも、修理代が600万円より少なくて済む場合は次男と長女は損したと感じるかもしれませんし、修理代が600万円より高くつけば長男が損したと感じるかもしれません。しかし、いずれにしても次男、長女がそれぞれ500万円以上相続していれば「遺言に問題なし」とされます。

 

どういうことかといいますと、もともと3000万円の遺産分割における(相続人がきょうだい3人だけだとした場合の)3きょうだいそれぞれの遺留分(最低でももらえるはずの遺産の分け前)は500万円(法定相続分の半分)ずつだからです

 

この例では長男が実家(1000万円)と現金400万円で合計1400万円を、次男と長女は現金で800万円ずつ相続しますから、法定相続分よりも長男がたくさん相続していますが、遺留分を侵害していないので法律的には問題がない遺言となります。

 

[図表]

 

ただし、遺言をもってしても遺留分は侵害できないとされていますから、仮に実家の修繕費が1000万円かかった場合には、長男の実質的な相続財産が、1400万円 - 1000万円= 400万円となり、500万円の遺留分より少なくなってしまいます。

 

遺言によって遺留分を侵害されたということになり、法的に問題があるとされるかもしれません。

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    本連載は、2017年11月30日刊行の書籍『「負動産」時代の危ない実家相続 知らないと大損する38のポイント』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性がございますので、あらかじめご了承ください。

    「負動産」時代の危ない実家相続  知らないと大損する38のポイント

    「負動産」時代の危ない実家相続  知らないと大損する38のポイント

    藤戸 康雄

    時事通信出版局

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