スムーズな実家相続の第一歩 「登記簿謄本の確認」の重要性

本連載は、長年、不動産会社で不動産金融・不動産法務に従事し、現在は相続・不動産コンサルタントとして活躍する藤戸康雄氏の著書、『「負動産」時代の危ない実家相続 知らないと大損する38のポイント』(時事通信出版局)の中から一部を抜粋し、実家の相続について問題点や対策をわかりやすく解説します。

亡父の家のはずが、名義は祖父のまま!?

あなたの実家は親が初めて建てた、あるいは購入した家でしょうか? それとも親の親、すなわち祖父母の代から所有していた家でしょうか? 自分の実家が祖父母の代から所有されていた場合は、念のために実家の登記簿謄本を調べてみてください。

 

戦前のわが国には「家督相続制度」というものがありました。簡単にいえば「その家を継ぐ者(男子、年長者が優先されていました)がすべての財産を引き継ぐ」というものです。あなたの父親は8人きょうだいの長男です。祖父から実家を含め財産をすべて相続しました。そして父親が80歳で亡くなり、一人息子のあなたが実家を相続することになりました。

 

あなたはすでに便利な都心にマンションを買って住んでおり、実家に戻って住むつもりはありません。父親から相続した実家は早々に売却することを決め、近隣の不動産業者に仲介を依頼することになりました。すると不動産業者から、「お客さん、登記簿を調べてみたところお客さんのお父さんの名義になっていないようです」と言われて登記簿を見てみると、なんと名義が祖父のままになっているではありませんか。

 

不動産業者からは、「まず、おじいさんの相続人調査をしてください。そして相続人を確定し、その方々からお客さんへの相続の承諾をとっていただいたうえで、お客さんの名義に登記を変えてきてください」と言われてしまいました。

 

「相続人は20人いらっしゃいます」と司法書士が…

さっそく不動産業者から紹介された司法書士さんに頼むことにしました。プロである司法書士をもってしても、さすがに80歳で亡くなった父親のきょうだいをはじめとする相続人関係調査は難航を極めました。ようやく2カ月ほどたって「全部で相続人が20人いらっしゃいました。これからその方々全員に実印押印してもらって印鑑証明書を添付した遺産分割協議書を作成しなければなりません」と言われたときには、「もう実家の相続手続きも売却も諦めてしまおう」と思わざるを得ないあなたでした。

 

親戚付き合いが少しでもある間柄であれば、「おじいちゃんが言い残した遺言どおりにあなたのお父様が守ってくれてきた家を、今度はあなたが引き継いでくれるのですね」と気持ちよくハンコを押してくれる相手もいることでしょう。ですが、相続人がそんな優しい人ばかりとは限りません。「いくらかにはなるかもしれない財産の相続権がある」という降って湧いたような話に、「少なくても数十万円はもらえるのではないか?」と考える人も当然に出てきます。

 

そうなるといわゆる「ハンコ代」といって、「相続権は主張しない代わりに手続きに応じる手間賃として10万円くらいは払ってほしい」などという話が出てくるのは世間ではよくあることなのです。

 

仮におじいちゃんの相続人20人全員が同じようにハンコ代を要求したなら200万円もかかってしまいます。都会の土地なら最低でも1000万円以上で売れるかもしれませんが、田舎の土地だといくらで売れるかも分かりません。司法書士への報酬、不動産業者への仲介手数料、税金等を考えたら、「とてもじゃないが割に合わない。もう放っておくしかない」と思ってもおかしくありません。

相続登記しない場合も「固定資産税」の支払い義務が…

もし、あなたが父親から相続するはずの実家について、相続手続きをせずに放置していたとしても固定資産税は支払わされます。なぜなら、相続登記は必ずしも義務ではないのですが、固定資産税の支払いは義務だからです。

 

従って、祖父から父へ名義変更はされていなかった不動産の固定資産税を父親が払っていたとするなら、市町村役場としては「名義は祖父でも実際の所有者は父である」とみなしています。そうすると、一人息子のあなただけが相続人であったなら、市町村役場の固定資産税徴収係は、「あなたが新しい所有者として固定資産税を払ってください」と言ってくるのです。

 

「売れないなら貸し出そう」と考えたとします。けれども、賃貸の仲介業者も借主に対する重要事項説明を行う義務があります。その中では「誰が登記名義人であるか」を説明する義務があるのです。そうすると仲介業者は、「大家さんのおじいさんが登記名義人ですが、すでに亡くなっています」という説明をすることになります。

 

そう言われても気にしない賃借人であれば借り手がつくかもしれませんが、普通の人は「何となく嫌だな」と思うのではないでしょうか? 加えて、実家を賃貸するためにはそれなりのリフォームも必要となります。借り手がつくかどうか分からないのに、数十万~数百万円ものリフォーム代をかけることができるでしょうか?

 

こうして「売ることも貸すこともできないまま空き家として放置されている」実家がいかに日本全国に多いことでしょう。それが社会問題化したために「空家等対策の推進に関する特別措置法」という法律までつくられて施行されることになったのです。

 

本連載は、2017年11月30日刊行の書籍『「負動産」時代の危ない実家相続 知らないと大損する38のポイント』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性がございますので、あらかじめご了承ください。

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相続・不動産コンサルタント ファイナンシャルプランナー

1961年生まれ、大阪府出身。ラサール高校~慶應義塾大学経済学部卒業。大手コンピューターメーカー、コンサルタント会社を経て、バブル崩壊後に大手住宅ローン保証会社で不良債権回収ビジネスに6年間従事、不動産競売等を通じて不動産・金融法務に精通。その後、J‐REIT黎明期にREIT上場準備会社、世界最大級外資系不動産投資ファンドのアセットマネージャー、不動産投資ベンチャーの役員等、大小数々の不動産企業において不動産金融・不動産法務の最前線で活躍して25年が経過。アパート2棟と自宅不動産を東京都内に所有する妻の実家で相続が発生。それを契機にアパートオーナー等の不動産相続の大変さに気付き、相続・不動産コンサルタントを目指す。現在1級ファイナンシャルプランニング技能士・公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士。

著者紹介

「負動産」時代の危ない実家相続  知らないと大損する38のポイント 

「負動産」時代の危ない実家相続  知らないと大損する38のポイント 

藤戸 康雄

時事通信出版局

日本全国で約820万戸の「空き家」「所有者不明の土地」が九州の面積以上!実家や土地は、もはや「負動産」不動産は捨てられない! 2015年1月から相続税の基礎控除が大幅に縮小され、課税対象となる人が増えました。「実家が持…

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