米国の「商業向け短期つなぎ不動産融資」の仕組み

「劣後融資」という返済の優先度が低いローンがありますが、アメリカでは、この劣後融資を活用した不動産の転売が盛んです。そこで今回は、米国の「商業向け短期つなぎ不動産融資」の仕組みを解説します。

キャッシュフローを生まない物件は融資面で厳しいが・・・

前回は、米国での商業不動産融資の種類とプレーヤーについて解説しました。今回は、具体的な案件を例に、商業向け短期つなぎ不動産融資の目安とその仕組みについて説明します。

 

11月中旬、筆者はネバダ州ラスベガスのホテルで行われた不動産貸金業者協会(AAPL)の年次カンファレンスに、情報収集・ネットワーキングのため出席してきました。全米から不動産転売事業者、開発業者、貸金業者、サービスプロバイダー約数百名が一堂に会し、情報交換・ネットワーキング等を行う場です。

 

たまたまそこで知り合った転売事業者から持ち込まれた、劣後融資案件をご紹介します。

 

彼の場合は、ある特定のサブ市場において、戸建て転売30件・商業物件転売5件の過去実績があり、比較的経験があります。市場から見て安く据え置かれている物件を仕入れて、建物をリノベして、高い家賃でテナントを入居させて高く売るというビジネスです。今回の商業物件も、競売で安く仕入れています。

 

通常、キャッシュフローを生んでいない収益物件は「収益還元での価値評価」が徹底されている米国では、値段が低く据え置かれていますし、当然のことながら現況での商業銀行での融資取り組みは大変ハードルが高くなります。

 

案の定優先融資についても、いわゆる前回説明した不動産貸金業者(プライベート・マネー・レンダー)が貸し付けをしました。

 

築年:1968年

物件種類:路面店舗物件

床面積:700㎡

土地面積:1,800㎡

現況:空室

買値:120万米ドル

優先融資:60万米ドル

申込金額:30万米ドル

資金使途:優先出資返還およびリノベ資金

担保順位:第2順位

鑑定額:

〈現状価値〉144万米ドル

〈出口価値〉243万米ドル

担保掛目:37%

 

転売業者の出口戦略は、リノベ後・リースアップ後安定期(数年後)を目途に、商業銀行等から低い金利で期日が長目のミニ、あるいはパーマネント・ローンを導入して返済するというものでした。安定期になれば、物件から上がるキャッシュフローで勝手にパーマネント・ローンを返してくれる状況になるからです。

 

今後数年のうちに市場が下落しない限りにおいて、鑑定価格通りに(テナントが入る、入らないにかかわらず)物件売却ができれば、ローン回収に懸念がないのはすぐに分かると思います。

 

それでは、業者の計画通りに将来商業銀行からのリファナンスが可能なのか、数字で検証していきましょう。優先融資貸し手による鑑定書によると、予想される安定期の収益状況は以下の通りです。

 

また、そこから導き出される商業銀行等からのパーマネント・ローンを獲得できる金額もある程度予想できます。不動産金融業界では、融資引受基準はいわゆるNOIと、デットサービス(元利返済額)の関係数値(サブ市場と物件種類で相違)で決める商慣習があるからです。

 

以下の図表で言えば、予想される安定期の将来収益から期待できる融資金額が約140万米ドルとなり、現在の融資金額合計90万米ドルを大きく上回っていることから、返済見込みが比較的高いと考えられます。これらの数字から、30万米ドルの劣後融資の申込みに妥当性があると見極めることができます。

 

 

その時の市況によって回収額が決まる点がリスク

もう一つ加えると、業者が当該プロジェクトに入れた自己資金が劣後融資導入後30万米ドルとなり、パーマネント・ローンを取ることによりキャッシュアウトの金額として50万米ドルになって返ってくるわけです。

 

数年で1.7倍(≒50万/30万)になるだけでなく、物件売却後に手にするキャピタルゲイン100万米ドルも含めれば、元手の5倍となります。もし仮に不動産貸金業者(プライベート・マネー・レンダー)の存在がなければ、元手が150万米ドルをまるまる投入せざるを得ず、計画通りの値段で売れても1.6倍にしかならなかったということになります。

 

したがって、銀行が取れないリスクを取った不動産貸金業者(プライベート・マネー・レンダー)に対して、8〜15%程度の高い金利を払ったとしても、業者としては十分おつりが戻ってくる計算になります。

 

もし仮に、不動産市況が何らかの理由で大きく下落しテナント募集が計画通りに上手くいかずにローン期日を向かえる場合、融資期限延長という選択肢もありますが、業者としては投入した30万米ドルに何の価値も見いだせないと判断した場合、事業意欲が減退し物件を捨てる可能性が高まります。

 

優先融資貸し手が60万米ドルで物件を取得後競売にかけるか、劣後融資貸し手が優先融資部分を買い取り、90万米ドルで物件を取得し競売にかけることになります。その時の市場の状況によって回収額が決まります。これが、劣後融資貸し手の潜在的なリスクというわけです。

 

本記事の内容は筆者個人の分析・見解です。

 

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連載集積するイノベーション産業と頭脳――米国シリコンバレー不動産投資の最新事情

クラウドクレジット株式会社 商品部 商品組成担当マネージャー

北海道出身、一橋大学経済学部卒業。UCLA不動産関連科目履修。
東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)開発金融部海外不動産グループ(米国担当2年半)、ユニオンバンク(7年加州駐在)にて、不動産を中心とした開発金融・アドバイザリー業務を経験。2000年に退職後、ローンスターファンド・ラサールインベストメント等の外資系投資ファンド・日系投資会社、ブルックス・グループで、不良債権・再生・不動産・未公開企業等のオルタナ投融資の実績と経験。2017年7月より、クラウドクレジット商品部にてソーシャルレンディング関連販売ファンド組成業務に就き、現在に至る。

著者紹介

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