今回は、相続、遺贈、贈与、時価の2分の1未満の低額譲渡によって取得した財産の「取得費」「取得時期」の算出法等を見ていきます。※本連載は、税理士の松本繁雄氏の著書、『資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金』(経済法令研究会)の中から一部を抜粋し、土地・建物の譲渡により発生する「譲渡所得」の計算方法や課税方法などについて解説します。

土地の造成・改良に要した費用は「土地の取得費」に

前回の続きです。

 

5.土地の整地、防壁、石垣積み等の費用

 

住宅や工場などの敷地を造成するために要した土地の測量、地盛り、地ならし、切土、防壁、上水道、下水道、石垣積みその他土地の造成または改良のために要した費用は、その土地の取得費に算入します。

 

しかし、土地について防壁、石垣積みをした場合等でも、その規模、構造等からみて土地と区分して構築物とすることが適当と認められるものの費用の額は、土地の取得費に算入しないで、構造物の取得費とすることができます(所基通38-10)。

 

なお、もっぱら建物、構築物等の建設のために行った地質調査、地盤強化、地盛り、特殊な切土などに要した費用で土地の改良のために支出したものでないと認められる工事費用は、その建物、構築物の取得費に算入することができます。

該当資産に対応した「名義変更費用」も計上可能

6.相続・贈与等により取得した財産

 

(1)取得費および取得の時期

 

相続、遺贈、贈与または時価の2分の1未満の低額譲渡(譲渡損失が生じた場合に限る)によって取得した資産の取得費および取得の時期は、被相続人または贈与者がその資産を取得したときの価額および取得日がそのまま相続人、受遺者、受贈者に引き継がれ、これらの者が引続きその資産を所有していたものとして、それぞれ取得費および取得の時期を計算します(所法60条1項)。

 

なお、相続、遺贈、贈与により不動産、株式、ゴルフ会員権等の資産を取得する際に通常支払われる名義書換手数料、不動産取得税、不動産登記費用など、名義変更のための費用を支出しているときは、その費用のうちその資産に対応する金額についても譲渡所得金額の計算上取得費とすることができます(所基通60-2、最高裁平成17年2月1日判決)。

 

ただし、取得費が不明等により譲渡収入金額の5%を概算取得費として譲渡所得を計算している場合には、これらの名義変更のための費用等をその概算取得費に加えることはできません。

本連載は、2017年7月6日刊行の書籍『資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金』(経済法令研究会)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金

資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金

松本 繁雄

経済法令研究会

●平成29年度の税制改正に対応した最新版 ●日常の相談業務、窓口業務を展開するうえで必要な所得税の全てを網羅 ●随所に「申告書への記入」欄を設け、申告書の記入方法を具体的に解説 ●相談業務を展開するうえでの実務書…

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