前回は、ゴッホがパリからアルルへ移住した経緯についてを紹介しました。今回は、創作時期で価格が異なるゴッホの絵を見ていきます。

アルル時代の作品の取引価格は「非常に高額」

これまで紹介したように、ゴッホの有名な作品は何十億〜百億円を超える価格で取引されています。それほど有名ではない作品でも、アルル時代のゴッホであれば10億円を下ることはめったにありません。

 

たとえば、2014年のロンドン・サザビーズに出品された『母と子』は、1500万ポンドでの落札となりました。落札手数料を含めた支払額は1688万ポンド(約28億円)になります。個人の所蔵だったこともあり、画集などにはあまり取り上げられることのない作品ですが、ゴッホ独特のくねるような筆致と若い頃のゴッホが情熱を傾けた宗教的な主題が顕著に見られる良作です。

 

狂気の画家というイメージのあるゴッホですが、絵の制作に関しては理論的な一面も持っていました。ゴッホの絵が明るくて印象的なのは、さまざまな色の毛糸などで配色の研究をしていたからです。

 

ある一つの色と色相環において反対に位置する色を、補色(反対色)と呼びます。たとえば、青の補色はオレンジで、緑の補色は赤紫です。従来は、このように対比の強い補色を隣り合わせで使うと、絵がどぎつくなるので良くないと考えられていました。しかし、ゴッホの絵では、青と黄色などの補色があえて一緒に使われています。このような配色の妙が、ゴッホの絵を一目見たら忘れられないものにしているのです。

大きく値段が下がる、パリ時代・パリ以前の作品

一方、パリ時代の作品『アニエールのヴォワイエ・ダルジャンソン公園の入口』は、2000年のニューヨーク・クリスティーズのオークションで、落札手数料を含めて177万ドル(約1億8000万円)にしかなりませんでした。パリ以前の作品となると、さらにその価格は下がります。

 

2003年、ゴッホの修業時代(恐らくは1884〜1885年)に描かれたと思われる『左向きの農婦の頭部』(41・2㎝×34・8㎝)が日本で見つかり、東京のオークションにおいて、6600万円で落札されたことがありました。

 

この絵は洋画家の中川一政のコレクションにあったもので、死後に遺族によって処分されました。興味深いことに、当初は誰の作品かわからなかったために1万〜2万円という落札予想価格が設定されていたそうです。

 

オークション側が念のためゴッホ美術館に問い合わせたところ、「加筆・修復されているが本物である」との回答が返ってきて、あっというまに値がつり上がりました。美術品の価値について深く考えさせられる出来事です。

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