本連載は、フランス近代絵画を中心に扱う画廊・翠波画廊の髙橋芳郎代表が、「値段」という観点からフランス近代絵画と作家の背景に迫ります。

印象派を代表する画家、モネ

日本で最も人気のある印象派(インプレッショニスト)。その印象派を代表する画家がモネです。印象派とは何かといえば、厳密なデッサンや絵画の構成よりも目で見た「印象」を重視して、主に日中の戸外で光の織り成す色模様を描いた画家たちのことです。

 

モネが51歳の時に描いた『積み藁』ですが、実は、描かれた当時にこの絵を見て「わからない」と感じた人がいます。それは、抽象絵画の始祖といわれるカンディンスキーです。

 

しかし、カンディンスキーは、何が描かれているかわからなくても、そこに広がる色彩に激しく感動しました。このことが、後に彼が抽象絵画を生み出すきっかけの一つになったと言われています。

 

カンディンスキーの抽象絵画と異なり、モネの絵には描く対象物が存在しています。それは「積み藁」と呼ばれる干し草の山です。そう言われてよく見ると、円錐形に積まれた干し草の山が逆光の中に浮かび上がってきます。朝日や夕日の照り返しのような一瞬の光景――モネはそれを切り取って、キャンバスに写し取ったのです。

2016年、7250万ドルで落札された『積み藁』

ちなみに、モネは同じ対象を何度も描く傾向がありました。この『積み藁』も25点の連作になっていて、他に晴天の日の積み藁や雪の日の積み藁、夏の終わりの積み藁、靄の中の積み藁などがあります。

 

その中でも『積み藁』は、2016年にニューヨークで行われたクリスティーズのオークションで、7250万ドルで落札されました。手数料などを含めると、およそ8145万ドル(約89億円)にもなります。これは小規模企業を買える金額です。

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    本連載は、2017年4月28日刊行の書籍『「値段」で読み解く魅惑のフランス近代絵画 』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください

    「値段」で読み解く 魅惑のフランス近代絵画

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    髙橋 芳郎

    幻冬舎メディアコンサルティング

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