前回は、会社の後継者として「従業員」を選ぶメリットとデメリットについて取り上げました。今回は、資金面での大きな障壁など、従業員を会社の後継者に選ぶ際の注意点を見ていきます。

株の取得で借金が必要なら、後継者の家族にも影響が・・・

前回の続きです。

 

財産の面でいえば、業績が良い場合、株式をどのように引き継ぐかが問題となります。手段としては基本的に譲渡、相続、贈与のいずれかしかありませんが、親族外の従業員への相続は現実的ではないので、生前に譲渡するか、贈与するかのどちらかを選択することになります。

 

ところが、贈与を行うと高額な贈与税がかかりますし、譲渡するなら対価となる資金が必要です。上場企業の場合は所有と経営が分離しているため、株式の保有は条件となりません。しかし、中小企業では所有と経営が一致していることが多いため、株式を買い取るための資金力が必要ということになります。後継者である従業員は、もともとはサラリーマンであり、多額の現金を保有しているケースは稀でしょう。そのため贈与税の納税資金や株式の購入資金を捻出するには苦労します。

 

借金が必要となると、後継者本人だけでなく、その家族の今後にも影響を及ぼす問題になります。かといって経営権だけを引き継げば、雇われ社長です。それではいざ重要な決断を迫られたときに、株主である元社長の意見でひっくり返されてしまうなど、何のために重圧のかかる社長をやっているのかわかりません。ただし、子や親族に承継するまでのリリーフ的な立場であれば、株式を譲渡する必要もありませんし、雇われ社長でも構わないでしょう。

 

このような事業承継時の金銭的な問題を回避するスキームはいくつかありますが、膨大かつ専門的な内容になるので本書では基本のみ筆者著書『オーナー社長の後継者育成読本』で解説しています。

 

加えていえば、大胆な経営改善がしにくいというデメリットもあります。たたき上げの従業員であれば先代社長に対する恩義があり、先代社長一族の意向も気になるため、先代社長の負の遺産を整理したり、大胆な方針転換をしたりしにくいものです。

たたき上げ社員なら、すでに「高齢」である場合も

最後は身体的な問題です。平たくいえば年齢ということです。たたき上げということは、それ相応の年齢を重ねていることがほとんどです。

 

創業時や先代社長の就任時からの付き合いであれば、先代社長とさほど年齢が変わらないこともあり得ます。

 

実際に2017年版の「中小企業白書」を見ても、親族内承継(名字が同じ)の場合は約8割の社長が20歳以上若返りしているのに対して、親族外承継(名字が異なる親族承継およびたたき上げ承継を含む)の場合、約2割の会社で社長の年齢が上昇してしまっています。これでは、いつ次の事業承継が起こるか分かりません。

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