前回は、「甥や姪」も後継者の候補となる「親族承継」を取り上げました。今回は、会社の後継者として「従業員」を選ぶメリットとデメリットを見ていきます。

経営理念の承継、企業文化の維持が期待できる

ここでいう「たたき上げ」は、親子でもその他の親族でもない社内の従業員を指します。

 

たたき上げ従業員を後継者にするメリットは、親族承継よりもさらに幅広く人材を選べることです。従業員であれば、実務能力や仕事に対する姿勢など、次期社長として見極めたい資質を事前にある程度把握することができます。また、長年勤続していることから、会社の考え方が染みついており、経営理念の承継や企業文化の維持が期待できます。

 

さらに、同じ部門や部署などに勤めている人たちからの信頼が厚いという点もメリットの一つでしょう。現場の番頭さんとして活躍している従業員であれば、取引先にも人柄や能力が十分に認知されている可能性が高いため、信頼関係構築の面でより円滑な事業承継が期待されます。

 

会社の長期的な発展を考えるのであれば、たたき上げの従業員を社長に育てていく仕組みが最適です。新卒から幹部へ、幹部から次期社長へとステップアップしていく仕組みを確立できれば、後継者不在となるリスクを軽減することができます。

ほかの従業員の嫉妬、親族や株主との距離に課題も

たたき上げの場合、社長の子ども、親族に適任者が見つからないときに、ギリギリのタイミングで従業員に白羽の矢が立つ可能性が高く、本人も他の従業員も寝耳に水で理解や納得が追いつかないことがあります。入社した当初から、自分は次期社長だと思っている従業員はほとんどいません。

 

本人としては、覚悟不十分な状態からのスタートになるので承諾まで時間を要し、それまで関わりがあまり深くなかった従業員たちから納得を得るためには丁寧な共有が必要です。次期社長となれば、一般的な他の役職とは異なる尺度で〝品定め〟されることにもなります。もし、ライバルのような立場の従業員がほかにいて説得しきれていないと「なんで私ではないのか?」と異論が噴出し、社内分裂の危機も生じます。

 

また、中小企業はステークホルダーと密接な関係にあるため、たたき上げの従業員は先代社長の親族や株主と信頼関係を構築しないことには、経営権や事業用資産の承継がスムーズに進まないという点でも注意が必要です。

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