前回は、従業員・取引先も受け入れやすい「親子承継」のメリットを取り上げました。今回は、不動産名義、抵当権等にまつわる問題が生じにくい親子承継の特徴について見ていきます。

土地・建物が社長名義のケースも多い中小企業

前回の続きです。

 

中小企業では、法人が使用している土地や建物が社長の個人名義になっていることも珍しくありません。特に個人事業主から法人成りをした会社に多く見られるケースです。

 

この場合、所有者である社長が、法人から賃料を得ていることもあります。それをいざ切り離してしまおうとすると、手続き上様々なことを考えなければなりません。なぜなら、実際には金銭のやり取りがなかったり、不動産賃貸契約を締結していなかったり、名義は個人なのに固定資産税は会社で納税していたりなど、個人と法人が実質的に一体となって取り扱っているケースがあるからです。

 

すると、第三者に移す場合、これまで市場の相場よりも安い賃料で事業を行っていたが、相場に合わせると地代家賃の負担が重くなるため家賃はどうするのかなどの問題が生じます。

 

また多くの場合、不動産は金融機関の抵当に入っているため、不動産オーナーが事業と関連がなくなってしまうと、会社の借入金に対する抵当を解除してほしいので、金融機関側は代わりとなる担保提供を求めたくなるという事情もあります。

 

このように、多くの問題に対する新たな決め事が必要になってきますが、親子だったらある程度曖昧な状態でもそのまま承継できることは強みです。

 

ただし、決して親子だからといって、そのあたりの問題が曖昧な状態でもよいということではありません。継ぐのが親子であろうが、第三者であろうが、放置することなく、きっちり整理してもらいたいところではあります。

社長親族と会社が金銭的に密接していると…

財務状態の悪い会社ほど、会社と経営者・親族との間に金銭貸借関係があります。会社の貸借対照表に役員貸付金がある場合、事業とプライベートのお金の管理ができていないと考えられます。役員が役員報酬では足らないような生活をしているようでは、話になりません。このようなズブズブの関係を親子以外の人は進んで清算してくれません。

 

また、経営の苦しい会社では役員借入金でなんとか会社を維持していることが多いです。しかし、この役員借入金は役員個人にとっては会社に対する貸付金です。そのため、役員借入金として社長から1億円借りていると、社長が亡くなってしまったときに相続財産として1億円の資産価値があるものと評価され、相続税の課税対象となってしまいます。そうならないように、貸付金を債権放棄するとか、役員借入金を資本金に振り替えるとか、役員報酬の代わりに役員借入金の返済という形で会社から役員にお金を支払うといった方法が考えられます。

 

このように社長親族と会社が金銭的に密接な関係にある場合、親子以外の人は積極的に関わりたいとは思えません。もちろん、現社長自身がきちんと整理してから事業承継できるのが理想ですが、きちんと整理できないまま後継者に会社を譲らざるを得ないこともままあります。

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