写真:The official website of the President

2015年1月の大統領選挙で、劇的な政権交代が行われたスリランカ。その政権移行は民主的に行われましたが、前大統領との確執や経済政策の混乱などが今も見られます。8月の総選挙の結果、二大政党が「統一政府」を組むことに合意。そんなスリランカの政党政治についてお伝えする連載の中編です。

2015年1月、野党統一候補が大統領選に勝利

イギリスにおける二大政党制の特徴を前回お伝えしたが、現在のスリランカにおいてはイギリスのような二大政党間での経済政策の違いが存在しない。1994年以降、スリランカ自由党(SLFP)は経済開放政策を採用し、効果的に実践してきた。この政策が市場に厳しいものだと評価されるとしても、それは他の要因によるものだ。仮に、経済政策を批判する場合には、通常、有権者は政権交代とともに経済政策の転換を期待する。しかし同様の経済政策が続行されるのであれば、そもそも2015年になぜ政権交代が起こったのだろうか。

 

スリランカの現政権が、以前のどの政権とも異なっている点はこれだけではない。一般的に、政権は経済的な要因によって失墜する。そこに政治的に深刻な問題が追随して、国民が変革を求める。しかし、2015年の政権交代は経済がその主な要因ではなかった。さらなる助成金を期待するような少数の人を除けば、あとの国民は前のラージャパクサ大統領率いるSLFP政権による経済政策に対し、強い懸念を抱いている訳ではなかった。

 

政権交代が起きたのは、新自由主義とポピュラリズムのバランスが原因だったかもしれない。新自由主義が、富を蓄えるために重要な役割を果たし、ポピュラリズムの政策がその富を再分配し国民全体を満足させる。通常、その二つが均衡をとることは、実現不可能である。しかし2009年の内戦終結以降の復興期において、均衡を図るに適した状況がうみだされ、実践に理想的な土台がつくられた。そして今、現政権が直面している最も大きな課題は、全ての国民が満たされる、より良い体制を見出すことである。しかし、簡単にはいかない。

総選挙後、二大政党による「大連立」が成立

現在のシリセーナ大統領を支持し、ウィクラマシンハ首相を輩出する統一国民党(UNP)は、2015年8月の総選挙で勝利したものの過半数を獲得できず、第二党のSLFPと「統一政府」を樹立した(これを「連立政権」というと語弊があるだろう)。経済界は当然、UNPが過去に政権にいた際の功績を再びもたらしてくれることに期待をするだろう。しかしUNPの政治指針は、初代のセナナーヤカ政権から現在のウィクラマシンハ首相に至るまで、決して同じではない。

 

もちろん一貫した特徴もある。UNPはつねに資本主義を掲げる政党であり、また経済の自由化を図ってきた党でもある。経済の自由化が達せられたのは南アジアにおいて最も早く、インドが自由化をおこなったのはその15年後のことである。この市場指向の経済政策は、歴代のUNP政権を通じて行なわれてきた政策で、ジャヤワルナダ政権からはじまり、2001年から2004年という短命政権であったウィクラマシンハ政権の時にピークに達した。今回、UNP政権が継続されることにより、さらなる躍進を期待する声があがっても、不思議ではない。

 

次回は与党UNPが掲げる「新自由主義」政策における課題をお伝えします。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年10月に掲載した記事「The New Brooms」を、翻訳・編集したものです。

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