現代の経済に「銀行の信用創造機能」が不可欠な理由

今回は、現代の経済に「銀行の信用創造機能」が不可欠な理由を見ていきます。※本連載はジブラルタ生命保険株式会社勤務、冨島佑允氏の著書『「大数の法則」がわかれば、世の中のすべてがわかる!』(ウェッジ)の中から一部を抜粋し、世の中で大数の法則がどのように活用されているかなどをご紹介します。

企業の経済活動には「まとまったお金」が必要

前回の続きです。

 

信用創造のスタート地点になる預金(この例の場合はA銀行の預金)のことを、本源的預金と呼ぶ。そして、そこから派生した預金(B銀行、C銀行、D銀行・・・の預金)のことを、派生的預金と呼ぶ。本源的預金100億円から、派生的預金900億円が生み出されたわけだ。

 

預金者は、自分の預金をきちんと守ってくれると“信用”して銀行にお金を預ける。そして銀行は、貸したお金を必ず返してくれると“信用”して企業や個人にお金を貸す。そういう“信用”の連鎖によってお金が“創造”されていくので、信用創造という名前が付いている。

 

銀行の持つ信用創造機能は、現代経済に不可欠である。なぜならば、企業が経済活動をするためには、まとまった大きなお金が必要だからだ。そんな大金を自力で用意するのは難しいので、銀行から借りるわけである。

 

それに、私たちが家を買うときに借りる住宅ローンや、車を買うときに借りる自動車ローンも、部分準備制度のおかげで借りることができているといえる。もしこの制度がなくて、銀行が通帳残高と同じ額の現金をキープしておかなければならなかったとしたら、1円も貸すことができなくなるからだ。そして銀行も、貸し出しができなければ金利差で稼ぐことができないので、人件費やATMの管理費などを賄えずに破綻してしまう。

 

銀行は、部分準備制度のおかげでまとまった金額を企業に貸し出すことができる。お金を借りた企業はそれを原資にビジネスを展開して儲け、従業員に給料を払って、従業員がもらった給料でモノを買う。そして、自身も銀行から借り入れをして家や車を買う・・・という流れで経済が活性化していくのである。信用創造のおかげで、経済の規模が大きくなるというわけだ。

お金を借りる人がいないと「信用創造」は機能しない

前回ご紹介した例では、お金は10倍になったわけだが、現実の世の中では、信用創造でお金が何倍に膨らむかは経済の状況によって変わる。

 

日本の場合、バブルの前後は12~13倍だったが、2000年代に入ると6~8倍まで低下し、最近はさらに下がって3倍程度になっている。これは、景気を良くしようと当局がたくさんお金を供給している一方で、モノが売れないから企業がお金を借りて事業を拡大しようという気にならず、貸し出しが増えていないからである。お金を借りてくれる人がいないと、信用創造は機能しないのだ。

 

いずれにせよ、信用創造機能が現代経済を支えていることに変わりはない。そしてそれは、大数の法則が働くことで成り立っているのだ。

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ジブラルタ生命保険 

ジブラルタ生命保険勤務(金利リスク管理等を担当)。 1982年福岡県生まれ。京都大学、東京大学大学院(いずれも専門は素粒子物理学)を卒業後、みずほ銀行にクオンツ(金融工学を駆使する専門職)として採用され、信用デリバティブや日本国債・日本株の運用に加え、ニューヨークへ赴任しヘッジファンドのマネージャーを経験。みずほ銀行退職後、2016年2月から現職。欧米文化に親しんだ国際的な金融マンであると同時に、科学や哲学における最先端の動向に精通している。

著者紹介

「大数の法則」がわかれば、世の中のすべてがわかる!

「大数の法則」がわかれば、世の中のすべてがわかる!

冨島 佑允

ウェッジ

大数の法則とは、「1つ1つは予想が難しい物事も、それらが沢山寄せ集まると、全体としての振る舞いは安定する」というものだ。 たとえば、コイン投げを数多く繰り返すことによって表の出る回数は1/2に近づく。数多くの試行を…

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