ネット上で自然発生した流行語を「逆に利用する」中国当局

ネット上で流行する表現が、中国の首脳陣や当局によって逆に利用されるケースも少なくありません。最終回となる今回は、そうした例についても見ていきます。

ネット流行語を意識した内容で注目された首相の発言

ネット上で自然発生的に流行する表現を、逆に当局が利用しようとしていることにも注意すべきだ。習主席が前回述べた「不帯電高圧線」表現を利用して、腐敗汚職防止のための規則を真に「帯電高圧線」にすると発言しているのはその端的な例だ。

 

昨年、ネット上で流行った「有銭就是任性」も、当局に利用されたことがある。「有銭」、金持ちは「任性」、気まま、わがままで、「就」は「まさに」といった意味だ。ネットで医薬品を購入し続け、合計数十万元を支払った男性が、途中から詐欺だと疑ってはいたが、この程度の金額で警察に通報しても相手にされないのではないかと思ったと発言したことが話題になった。富裕層に対する嘲笑、からかい、羨望が混じった複雑な意識を表わしている。この流行語を意識してか、本年の政府活動報告で、李克強首相が「大道至簡、有権不可任性」と述べ、お堅い政府報告の中では珍しい「任性」という用語が使われ、注目された。

 

「大道至簡」は「大道」、物事の本質は「至簡」、平易、単純なものであるという老子思想で、行政の簡素化と、権力が裁量的であってはならないこと、つまり上記「依法治国」の重要性を強調しようとしたものだ。

自然発生する「熱詞」が表すのは、やはり人々の不満!?

習主席が「蛮拼的」「点贊(賛)」を国民向けの15年年頭賀詞で使用したことも然りである。前者は「一生懸命頑張る」、後者はネット上で「いいね!」にクリックすることだ。国民受けをねらったものだろうが、実は「蛮拼的」は元来、「努力しても報われない」とのニュアンスがあって流行したという側面もあり、一般の人々がこれをどう受け止めたか微妙だ。

 

中国で、ネットで自然発生的に現れる「熱詞」が、一般の人々の欲求(裏を返せば不満)や本音を表す程度は、おそらく欧米以上だ。中国社会で何が起こっているかを探るひとつの手がかりになるということだろう。

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) 独立取締役

1976年、大蔵省入省。1990年、アジア開発銀行理事代理、2000年、香港理工大学中国商業センター客員研究員。2003年、アジア開発銀行研究所総務部長、2006年以降、財務省神戸税関長、財務省財務総合政策研究所次長、財務省大臣官房政策評価審議官、2010年から大和総研常務理事等の要職を歴任。 2015年、NWB(日本ウェルス)の独立取締役に就任。一橋大学卒。香港中文大学普通話課程修了。
WEBサイト https://jp.www.nipponwealth.com/

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