前回は、海外進出成功のカギを握る「7つのポイント」とは何かを説明しました。今回は、海外事業進出の成功に欠かせない「海外専任担当者」の存在について考察します。

専任者の存在が「海外進出の成功率」を格段に高める

海外進出に取り組む企業の多くは「試しにやってみるか」程度のモチベーションで行うものです。中には、大きな危機感を持ち、社運をかけて本格的に海外投資を行う企業もありますが、まだあまり多くないのが現状です。

 

そのため、海外への新規進出でも進出後の事業展開でも、担当者が海外事業に専任しておらず、国内事業と兼務しているケースが多くなります。

 

中小企業では特にこの傾向が顕著です。なぜならば、中小企業は人手不足であることが多く、社長をはじめとして、仕事のできる人は、あっちにもこっちにも常に顔を出さねばならないからです。

 

では、大企業はどうでしょうか。私の見るところ、大企業もあまり事情は変わりません。いわゆる大企業といっても、縦割りの事業部制を採用していると、事業部の一つひとつの規模は、中小・中堅企業と変わらないからです。

 

企業全体として海外展開をするのではなく、個々の事業部単位で商品や製品を海外に売り込もうとすると、中小企業と同じく、人手不足になってしまうのです。

 

具体的にいえば、私のところに海外進出の相談にお見えになる方は、中小企業の場合、たいてい一人で動いています。

 

大企業で海外展開の部署がきちんと存在する場合でも、責任者の上司は他の部と兼任で、実際に動いている専任担当者は一人きりということが多いものです。

 

しかし、他の事業と兼任で動いてうまくいくほど、海外進出は甘いものではありません。海外事業は専任の担当者を設置したほうが、成功する確率は飛躍的に高まると私は考えています。専任で行えばスピード感がまったく違うからです。

国内事業との兼務では、担当者の負担が大きすぎる

そうはいっても、海のものとも山のものともつかない海外進出に、専任の担当者を置くことを躊躇する企業が多いでしょう。たしかにリスクはありますが、それは新規事業のすべてに存在するものです。

 

しかし兼任の場合、どうしてもリスクをとらない方向に動いてしまいがちです。

 

たとえば、現在、国内事業と海外事業を比べた場合、売上や利益規模では国内事業のほうが圧倒的に大きいケースがほとんどだと思います。その場合、国内と海外を兼任している方の重心はおのずと国内事業に傾きます。

 

リスクの大きな海外事業よりも、国内事業に力をいれたほうが、会社からの評価が高くなるからです。逆に専任であれば、目の前の海外進出に全力を注ぐことしか、生き残る道はありません。

 

以前、次のようなことがありました。

 

とある飲食店チェーンから、具体的に海外進出を検討していると相談を受けました。いま日本食は世界的にブームになっているため、他社に先んじて海外進出すれば、先駆者として市場を押さえられると、私は思いました。

 

ところが、海外進出の担当者に任命されたのは、日本国内の店舗展開も担当している、いわば国内開拓のエースでした。日本国内で次々と新規店舗の開発に成功している人だから、海外でもうまくいくだろうと思われていたのです。

 

その考えは決して間違いではありません。間違いではないのですが、国内での店舗開発を行っている方が、兼任で海外の事業開発も担当することには、リスクがあります。

 

最初の段階だけなら兼任でもいいのですが、本格的に海外店舗の立ち上げが動きだすと、国内事業との兼務は負荷が大きすぎるのです。

 

結局、この企業は「国内の競争が厳しくなって、海外にかける時間がなくなってしまいました」という理由で、海外進出を取りやめてしまいました。あのとき海外展開を実現できていたら、どれほど成長しただろうかと考えると、残念でなりません。

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