今回は、銀行の融資担当者が「個人保証に頼りたがる」理由について見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

融資担当者の時代の流れに逆行したお願い

「個人保証に頼る融資をするな!」
というのが、金融庁の方針です。
しかし、
融資現場の末端は相変わらず、個人保証に頼りたがるのです。

 

ある会社に、銀行の融資担当がアポをとってやってきました。
社長はさっそく、要件をお聞きしました。
すると、融資担当が言いました。
「あのぉ、現状、個人保証のない融資枠があるのですが、
 そちらに個人保証を、お願いできないでしょうか?」
という要件だったのです。
なんと、今まで、個人保証なしだった当座貸越枠に、
個人保証をつけてくれ、と言うのです。
完全に、時代の流れに逆行した、お願いだったのです。

 

社長は驚きました。
「個人保証に頼るな、というのが、金融庁の方針でしょ!
 それはご存じなんですよね?」
「ええ、存じ上げてはおります。」
「じゃあ、なぜ今どき、そんなことを言うんですか?」
「まあ、その、昨年度は、前年度に比べて、
御社の業績が、悪化しておりますから…。」

 

確かに、営業利益は若干の赤字でした。
ただし、経常利益は黒字で、自己資本比率は40%超です。
しかも、翌年度の業績は、営業黒字で推移しています。
ただちに個人保証をつけて不良債権に備えよ!
というような財務状態では、まったくないのです。
しかも、その当座貸越枠は、ほとんど使っていないのです。
あまりにも、財務に無知な融資担当なのです。

本来は財務状況をみて事業性評価をすべきだが…

「うちの財務内容で、個人保証をつけてください、ていうのは、
 いくらなんでもおかしいんじゃないですか?
 そんなことをおっしゃるのなら、私も納得できないので、
財務局に聞いてみようかと思いますけど、構わないんですか?」
と、社長は強気に出てみました。すると、
「財務局に連絡するかどうかは、社長におまかせいたします。」
との返事で、その担当は、その日は帰っていったのです。

 

金融庁が声を大にして叫ぼうが、現実の現場はまだまだ、
このような状況なのです。
個人保証に頼ってはいけない、と言われても、
現場担当はやっぱり、頼りたいのです。
その銀行支店は、支店長が変わったばかりでした。
支店長から融資担当に何らかのプレッシャーがあり、
そのような行動に出たのかもしれません。

 

加えて、
財務に関する知識も乏しいとしか、いいようがありません。
金融庁が求めている、
融資担当は財務状況をみて事業性評価をせよ、
など、ムリとしか言いようがないレベルなのです。

 

社長から、私に連絡が来ました。
「融資担当は財務局に連絡してもいいって、言うんですが、
構わないでしょうか?」
「いいって言うのなら、してみましょうよ。」
ということで、財務局に連絡することにしたのです。
すると、意外な展開になったのです。

 

(続)

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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