前回は、コアマーケティングが成功した事例を紹介しました。今回は、 コアを対象とした商品の「商機」のつかみ方について見ていきます。

スタッフを鼓舞して「量産体制の確立」を前倒し

1組のカップルが認めて「ほしい」といってくれた――。私はそれを、家具の神様が私に用意してくれた天啓のように感じました。

 

そのフェアの中でこの新シリーズに着目してくれたのは、このカップルだけではありませんでした。全国から集まっていた多くのバイヤーもまた、「この家具はいい、うちにも卸してください」と注文を出してくれたのです。通常ならどんなに売れている家具でも100店舗から注文があれば多いほうでしたが、この時は実に200店舗からオーダーがありました。

 

また、このシリーズに反対していたスタッフの家でも、年老いたお母様が「私も見てみたい」といったという話も聞きました。そうしたあらゆる評判を聞いて、私はスタッフに「森のことば」の量産体制の確立を前倒しして、翌月には販売を開始するという指示を出しました。

 

スタッフたちが驚いたのも無理はありません。絶対に受け入れられないと思っていた節のある家具が好評なだけでなく、それを翌月には市場に出せといわれたのですから――。

 

通常秋の家具フェアで展示した新商品は、翌年の3月、4月から発売するのが慣例でした。来場者の意見を聞いてデザインや仕様を微調整したり、オーダーを受けてから材料を確保したりと、工場の生産体制をつくらなければいけないからです。

 

ところがそんなことに時間をかけている暇はありません。目の前でほしいという人がいて、バイヤーたちがすぐにでも店頭に並べたいといっているのです。

 

私としても社長に就任して初めての新商品であり、自分がアイデアを出してベテランスタッフの反対を押し切った企画でしたから、思い入れも強かったのです。

 

「このチャンスを逃すな。前倒しにして、なんとしても来月から市場に出そう!」

 

そうスタッフを鼓舞して、生産体制の確立にあたらせたのです。

コア対象商品は「購入希望者がほしがる時」が売り時

これもまたコアマーケティングの鉄則のひとつ。鉄は熱いうちに打て。

 

マスを対象にした大量生産商品ならば在庫を確保してから発売となりますが、ごく一部のコアを対象とした商品は、その人がほしい時が売り時。それを逃したら、自ら商機を失うことになります。

 

実際に「森のことば」の初期の商品は、家具フェアの翌月にあたる2001年10月から市場に出ていきました。もちろん量は少なかったのですが、商品を求める人の手元に確実に届いたのです。

 

その様子を取材していた家具業界新聞の編集長は、「これまでもこの業界の2塁打3塁打はありましたが、場外ホームランは初めて見た。これは凄い商品になる」

 

と目を丸くしていました。そして、「森のことば」は実際に私の会社の苦境を救う大ホームランになったのです。

 

森のことばシリーズ
森のことばシリーズ

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    本連載は、2017年7月28日刊行の書籍『よみがえる飛騨の匠』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    よみがえる飛騨の匠

    よみがえる飛騨の匠

    岡田 贊三

    幻冬舎メディアコンサルティング

    時代とともに移り変わる消費者ニーズの変化によって、崩壊の危機を迎えている地場産業。地場産業が生き残るためには「販売戦略」「製品開発」「生産体制」「後継者育成」「ブランディング」「地域プロモーション」の6つの改革…

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