髙松コンストラクショングループ技術研究所(茨城県・つくば市)

安定収入源の確保や相続対策のために重用される土地活用。賃貸物件の経営が一般的だが、高い空室率で苦しんでいるオーナーも少なくない。そんな中、C&Cカンパニー(Consultant Construct Company)を掲げる髙松建設では、高い施工技術に裏打ちされた「確かな物件」を提供することで、後々まで稼動が落ちない「安定した賃貸経営」の実現を後押ししている。この10月に創業100周年を迎えた同社の取り組みについて、常務執行役員の井本清司氏と黒木惠二氏が解説する本企画。第5回目は、髙松建設の品質管理の中枢を担う「技術監査部」についてお話を伺った。

他社にはない「全建物・全棟・全フロア」の配筋検査

――貴社の品質管理を担っている技術監査部の仕事について教えてください。

 

免震装置は髙松建設の監理者が厳格な立会い検査を行い、品質検査に合格したものだけを出荷する
免震装置は髙松建設の監理者が厳格な立会い検査を行い、品質検査に合格したものだけを出荷する

井本 鉄筋コンクリート造建物の工事でコンクリートを打ち込む前に、柱・梁・壁・スラブ・基礎などの各鉄筋が正しく配置されているかどうかを確認する検査のことを「配筋検査」といいます。簡単に言ってしまえば、この検査を行うのが技術監査部の主な仕事です。建物の耐久性や強度に直接影響を及ぼすため、重要な検査と言えます。

 

黒木 特徴的なのは、当社の技術監査部は工事部と設計部と完全に切り離された部署だということ。というのも、工事部や設計部の中に設置してしまうと、“なあなあの関係”でどうしてもチェックが甘くなってしまいがち。そうしたことを避けるのが目的です。いってみれば、第三者機関のようなもの。

 

――会社にとって不都合でも、建物のクオリティのためには断固とした対応を取るということですね。

 

建築・土木分野において日々最新の技術開発が行われている髙松コンストラクショングループ技術研究所の大型実験棟
建築・土木分野において日々最新の技術開発が行われている髙松コンストラクショングループ技術研究所の大型実験棟

井本 そういうことです。たとえば、当社では全建物・全棟・全フロアの配筋検査を行っています。通常はサンプルとして一部分だけ検査すればOKなのですが、ここまで徹底しているのは、他社でもなかなかないのではと思いますよ。

 

――技術監査部の配筋検査をクリアできなかった場合、どうなるのですか?

 

黒木 当然ながら、コンクリート打ち込みのスケジュールは全てキャンセルされます。正しい配置に修正して技術監査部がOKするまで、コンクリートを打つことができません。逆に言うと、技術監査部はコンクリートの打ち込みをストップできる、大きな権限を持っているわけです。だからこそ、工事部や設計部とは完全に切り離したセクションなのです。

 

金銭的な負担が自社に強いられるとしても・・・

――一部外者からすると、大きな権限という感覚がいまひとつピンと来ないです。

 

髙松建設株式会社 東京本店 取締役 常務執行役員 井本 清司 氏
髙松建設株式会社 東京本店
取締役 常務執行役員 井本 清司 氏

井本 コンクリートの打ち込みには、多くの業者やミキサー車などのさまざまな段取りが必要になってきます。そして、これをキャンセルするということは全ての段取りをやり直さなければならず、工期が延びるだけでなく手間もコストもかかってしまい、しかも価格に上乗せすることができないので、社内で負担しなければなりません。

 

会社に対して大損害を与える判断と言えるだけに、もし技術監査部が工事部や設計部と関連していたら、二の足を踏んでしまうかもしれません。それが人情というものですからね。しかし、会社に金銭的な損害をもたらそうとも、正しく鉄筋を配置し直すのはオーナー様にとっては絶対必要なこと。建物の強度や耐久性に直接関わるだけに、「ちょっとぐらいいいじゃないか」では絶対済まされないことです。

 

髙松建設株式会社 千葉支店    
常務執行役員 支店長 黒木 惠二 氏
髙松建設株式会社 千葉支店     常務執行役員 支店長 黒木 惠二 氏

――最近、大企業の不正が相次いでいますが、これらも「ちょっとぐらいなら大丈夫」という軽率な判断ですよね。

 

黒木 でも、場合によっては、会社にとって耳の痛い指摘や不都合な判断をしなければならないだけに、技術監査部のメンバーもなかなか辛いですよ。スケジュールをキャンセルされた工事部のスタッフは面白くないでしょうし、社内の目も気になりますからね。ただ、配筋検査をクリアできずにコンクリートの打ち込みをキャンセルした、なんていうケースはゼロとは言いませんが、ほとんどありませんから誤解のなきように(笑)。

 

取材・文/牧 隆文 撮影/永井 浩(人物)
※本インタビューは、2017年10月12日に収録したものです。