前回は、病院建設を依頼するにあたってのゼネコンと設計会社のメリット・デメリットを説明しました。今回は、病院の建設に最適な「設計会社」を選定する方法を見ていきます。

長期間十分なコミュニケーションを取れる業者を選ぶ

設計を総合建設会社に委託するか、どこの設計会社にするか。いずれにしても、次に考えなくてはならないのが、自院に最適な委託先を決めるための選定方法です。

 

大きく5通りある選定方法を次ページの表にまとめました。

 

[図表]設計会社の選定方法

 

特命方式、総合評価方式、プロポーザル方式、設計競技方式(コンペ)、入札方式。選定の初期段階では、与条件の整理・提示をするなど、上から順に発注者側の作業負担が大きくなりますが、それと最終的に得られる設計の質は比例するものではありません。

 

とくに病院建築の場合は、病院・設計者間の長期にわたる十分なコミュニケーションが重要ですから、有効なコミュニケーションを成立させることができるだけの設計者の資質と、その結果を設計に反映させられる技術力・実績については十分に吟味し、自院にとってもっともふさわしい設計委託先を選定することが大切です。

建設費が予想を上回り、事業の見直しを迫られる事例も

最近では震災復興や東京五輪建設の需要による建設費の高騰を背景に、建物の設計・施工会社を決定したあとで、病院の建設費が予想を大きく上回り事業そのものの見直しを迫られるケースが発生しています。こうしたリスクを避けるために、発注者は早い段階で全体のコストを確定させる発注手法を模索しています。

 

その一つが、DB方式(Design Build/設計・施工一括方式)です。これは設計会社と施工会社の共同事業体に設計と施工を一体で発注する手法です。病院建築の専門的な知識を有する設計会社と同時に施工会社まで決定することによりコストや工期を早期に見通すことが期待できる手法です。

 

また、工法や工事費に関する提案で選ばれ、施工者としての優先交渉権を得た施工会社が、設計の進捗に合わせて技術提案や見積もりを行うECI方式(Early ContractorInvolvement/技術協力・施工方式)もあります。これも、発注者が全体のコストや工期を早期に見通す手法の一つです。

 

DB方式では、工事費を見積もる設計図書がないまま施工者と工事費の契約をするため、詳細に設計を進めていくうちに工事費が当初契約よりも増えるリスクがあることには留意が必要です。

 

また、一旦施工者を決定すると競争原理は働きませんので、契約以降に発生する追加工事費の妥当性確認はかなり困難です。この手法を用いる場合は、設計段階で当初契約より工事費が増えるリスクを取っても早期に工事費を見通すことに事業上のメリットがあるかどうかの判断が必要です。

 

一方ECI方式では、施工会社の技術力を活かし、工事費を確認しながら施工者から独立した設計会社が設計を進められるという点で、DB方式のデメリットを補う手法といえます。

 

久米設計では、「施工者選定調査室」を独自に設けており、全国の工事費の相場観や施工会社が抱えている工事量などの情報を収集しています。

 

久米設計の病院設計タスクチームはこれを活用し、価格の競争状況(どのくらい価格が抑えられるか)や適正な発注方式など工事発注に関する様々な情報を発注者に提供し、候補施工会社の選定や発注条件の策定の支援を行っています。

本連載は、2017年8月30日刊行の書籍『病院再生の設計力[増補改訂版]』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

病院再生の設計力[増補改訂版]

病院再生の設計力[増補改訂版]

久米設計 病院設計タスクチーム

幻冬舎メディアコンサルティング

病院の設計から、経営を改善する── 数々の病院を再生させてきた百戦錬磨のプロ集団が、設計のプロセスを公開 情報化・高齢化による市場の変化や度重なる医療制度改革にさらされ、病院経営は、年々厳しさを増しています…

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