前回は、利用者に「特別感」を味わってもらうために、介護施設が行った具体的な取り組みを取り上げました。今回は、軽費老人ホームに位置づけられる「ケアハウス」の役割について見ていきます。

少ない費用で「住まい」と「介護サービス」を提供

ケアハウスは、「軽費老人ホーム」という位置づけの施設です。高齢者の自立支援を目的として、住み慣れた地域で生活を継続することができるように取り組んでいます。住まいの提供と、必要な場合には介護サービスを提供する役割を果たします。

 

軽費老人ホームの歴史は古く、1963年に日本の老人福祉の先駆けである、老人福祉法が施行されたときがはじまりだといわれています。

 

ケアハウスには「一般型」と「介護型」の2つのタイプがあります。「一般型」では通所介護などの介護サービスが必要になった場合、ケアマネジャーに再度申し込みをしなければなりませんが、私の法人の施設のような「介護型」では、ケアハウスの職員が介護サービスを提供することができ、「特定施設入居者生活介護」と呼ばれています。

 

ただ、ケアハウスの施設数は少なく、私の法人内でも1つだけです。入所基準も施設によってさまざまで、私の法人の場合は60歳以上で、自炊できない程度の身体機能の低下がある人や、高齢のため一人で生活することに不安を感じる人を対象としています。

万一に備え、利用者同士で助け合うしくみを作っておく

ケアハウスは、高齢者のマンションのような雰囲気です。居室はすべて個室。各部屋には冷暖房、風呂、トイレ、ベッド、ミニキッチンが設置されているほか、自宅から家具の持ち込みも可能です。

 

要介護度の低い利用者が多いため、日々の生活もほとんどのことが利用者に任されています。

 

アクティビティも多岐にわたり、共同スペースで編み物や詩吟のクラブ活動、お茶会などを開き自由に参加してもらいます。利用者同士で日帰り・1泊旅行も実施可能であるなど、アットホームな雰囲気が魅力です。

 

しかし、入所している利用者が高齢になるにつれ、どうしてもADLの低下が進行します。利用者が少しでも長く自立した生活を維持できるようにリハビリの時間を設けたり、室内に閉じこもりきりにならないように参加しやすいアクティビティを準備したりするなどの工夫が必要になります。

 

夜間は介護職員は不在となり、利用者だけの時間になります。

 

アクシデントが起こったときどうすればよいか、夜間想定の避難訓練などを実施し、利用者同士の人間関係をつくり、お互いに助け合うことのできるしくみを整えておくと安心です。

 

また場合によっては、利用者がケアハウスでの看取りを希望することもあります。その際はできるだけ希望に沿えるように、看取りの準備を進めます。

 

特別養護老人ホームや介護老人保健施設などと違い、ケアハウスでは、看取りの準備・環境が整っているとはいえないところがあります。そのため介護職員の間でも「自分たちにできるのか」「何かあったらどうしよう」と不安を抱える人も多くいます。普段から職員同士で意識を高め合い、利用者の希望を叶えるために何ができるかを考えておく必要があります。

 

[図表]ケアハウスのタイムスケジュール

本連載は、2017年8月26日刊行の書籍『利用者満足度100%を実現する 介護サービス実践マニュアル』から抜粋したものです。

利用者満足度100%を実現する 介護サービス実践マニュアル

利用者満足度100%を実現する 介護サービス実践マニュアル

山田 俊郎

幻冬舎メディアコンサルティング

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