不動産 国内不動産
連載空室を埋める「リーシングマネジメント」の進め方【第13回】

入居者から「退去負担金」をできるだけ多く回収する方法

退去負担金賃貸借契約書リスク管理

入居者から「退去負担金」をできるだけ多く回収する方法

今回は、入居者が負担すべき金額である「退去負担金」などについて説明します。いくら請求するべきか、賃貸借契約書に明記するべき事項とは何かなどを見ていきましょう。

退去負担金を確実に回収するための「二つのポイント」

入居者が退去するときに支払う原状回復に要する工事費のうち、入居者が負担すべき金額を退去負担金と言います。この退去負担金をできるだけ多く回収することが、アパート経営においては非常に重要になってきます。住み方によっては、その原状回復費用だけで100万円近くかかるケースもあるからです。

 

そして、この退去負担金の取りっぱぐれが増えてきているのも事実です。退去負担金を確実に回収するためには、いくつかの工夫を講じなければなりません。退去負担金は「金額の確定」と「回収」という二つのポイントに分けて考える必要があります。

 

 

まずは「金額の確定」です。これは入居者が退去に当たって原状回復費用のうちいくら負担するかということです。

 

保証会社を利用することで回収自体に問題はなくても、前提として入居者にいくら支払うということを約束してもらわなければいけません。これが金額の確定です。この金額の確定にはまた二つのステップが重要になります。

 

一つめは賃貸借契約書にきちんと負担区分を明記することです。賃貸借契約書への記載がなければ負担区分は曖昧になり、現在の消費者保護の流れの中ではオーナー負担になってしまうケースがほとんどです。

 

次に退去立ち会いが重要になります。退去立ち会いとは、退去時に入居者立ち会いのもと部屋の中を確認し、どの部分が入居者の過失であるかというのを確認し、サインをしてもらうという行為です。例えば、たばこのヤニによってクロスが黄色くなっていれば、入居者の負担ということになります。

 

この退去立ち会いのやり方次第で入居者にいくら負担してもらえるか、その金額が決まってしまうのです。ここでサインがもらえなければそもそも債権になりませんので、保証会社の保証の範囲にもなりません。

 

このように、まずは退去負担金を多く設定し、入居者のサインをもらう(金額を確定する)ことが重要です。

 

次に「回収」に関してですが、当社は保証会社を利用しています。

 

現在当社では提携する保証会社と商品を開発し、新規の入居者に関してはこの退去負担金までを保証の範囲としています。これによって退去時に保証会社から退去負担金が入ってきますので、いわゆる取りっぱぐれがなくなります。

 

また、この保証会社を利用することにより、初期費用なしで入居者募集ができるというメリットがあります。敷金とは本来退去したときの負担金を担保する目的で入居者から預りますが、それが保証会社で保証されることによって、敷金を取る必要がなくなります。

 

「敷金なし」で募集できればリーシングにおける競争力が増し、入居率が向上していくというメリットもついてきます。まして、昨今の不況によって入居希望者の傾向としては初期費用を軽減したいというニーズが大きくなってきています。初期費用を抑えること(かつリスクヘッジもできること)が入居者獲得に大きな効果を発揮します。

リスク回避のために各種法定点検と物件巡回は必ず行う

アパート経営を行う上で、建物に関する各種法定点検は、リスク管理および退去防止という2点から必ず行うべきです。

 

 

まず、リスク管理です。アパート経営には所有者リスクというものがあり、それをどうやって回避するかを講じなければなりません。また、管理委託しているオーナーさんはそのリスクをある程度は管理会社に負わせられますが、自主管理のオーナーさんはすべて自己の責任で行わなければならないので注意が必要です。

 

企業経営と同様、万が一のことがあった場合に、潰れてしまうことがないよう、その万が一に備えるということです。万が一のリスク管理をしていないがために、倒産してしまっては元も子もありません。利益が最大化できなくなるどころか、マイナスになってしまいます。

 

建物に関するリスク管理として挙げられるのは消防点検、貯水槽点検等、法律で定められた、いわゆる法定点検のことです。

 

これは、意外に実施されていないオーナーさんが多いのが実情です。確かに小さいアパートでは、消防署の検査もほとんどないでしょう。

 

しかし、消防点検を実施していないがために、火災報知器が故障していることに気づかず、実際に火災が発生してしまった際に、報知器が作動せずに入居者が逃げ遅れ、死亡してしまうといったことが起こり得ることを、忘れてはいけません。

 

こんなことが実際に起きてしまったなら、オーナーさんは所有者としての責任を問われます。人が亡くなれば、億単位の損害賠償命令が下るでしょうし、火災報知器が作動しないことを知っていた上で放置したとなれば、最悪の場合は刑事罰にも問われることになります。実際に先日、都内の飲食店ビルから火災が発生。死者も出てしまい、業務上過失致死容疑でオーナーが逮捕される事件がありました。そのため、各種法定点検に関しては、最低限きちんと行い、必要な是正工事は速やかに実施することが重要です。

 

もちろん、その点検のためには多少のコストがかかりますが、リスクヘッジのためには必要なものでしょう。そのコストと万が一の場合のリスクとでは、比較対象にすらなりません。

 

そして、次に退去の防止です。アパート経営の利益を最大化するためには、先述の通り既存入居者の退去をできるだけ防ぐことが重要になります。きちんとアパートのメンテナンスを行い、入居者に快適に住んでもらえる環境を作ることで長期入居につながり、結果としては利益の最大化になります。その観点からも各種法定点検は必須と言えます。

 

ところで、物件は常に何かが起こる可能性があり、その可能性をできる限り排除していくことがアパート経営におけるリスク回避につながります。そういう意味では、日々の物件巡回が重要になります。

 

当社では巡回の専門担当者を配置して日々物件を巡回しています。この巡回で物件に不具合のあるところをいち早く発見し、事故を予防するためです。

 

また、ゴミが落ちていたり、ポストにチラシがたまっていたりすれば、片づけることによって物件がきれいになりますので、入居者満足度が向上して長期入居につながるでしょう(なお、日常清掃はこの巡回とは別に専門の清掃業者に依頼して定期的に行います)。

賃貸借契約書には更新料と原状回復費用を必ず明記する

滞納とは、払うべきであるとわかっているのに払わないことですが、そうではなく、「そもそも払う必要がない」もしくは「払う意思はなかった」と契約後に言われるケースについて説明します。これは更新料訴訟における「無効」の主張に見られます。また原状回復費用(退去負担金)についても同様の主張をされます。つまり、支払義務自体が争いになります。

 

このケースを回避するためには、賃貸借契約書に内容を明記しておく必要があります。ややこしいのですが、これらは滞納とは性質が異なり、そもそも「契約の無効」を主張してくることに特徴があります。

 

まず更新料ですが、平成23年7月15日に最高裁の判決が出たことで、契約書に書いてあれば有効となりました。そのため、賃貸借契約書には、更新料についてははっきりと何年ごとにいくらかかるかを記しておく必要があります。明記さえしておけば、法外な額でなければ入居者は必ず払わなければならなくなります。

 

次に原状回復費用(退去負担金)についてです。こちらも更新料同様、長い間裁判が行われてきましたが、同じく最高裁の判決が出ています。「賃貸借契約書に明記してある範囲については入居者が負担しなければいけない」という内容です。

 

ただし、東京ルールや国土交通省のガイドラインを超えて定めたものについては、訴えられた場合、貸主側は敗訴します。それでも、賃貸借契約書に、退去時にクリーニングを行うことや畳の表替えを行うことを明記しておく必要はあるでしょう。これをはっきりと書いていないと、退去時にそれすらも払う必要がないと言われ、貸主側は請求する権利がなくなってしまうからです。

 

非常に細かい内容ですが、これらを賃貸借契約書に明記することで、後々のトラブルはほとんど回避することが可能となります。

本連載は、2013年7月2日刊行の書籍『改訂版 空室率40%時代を生き抜く!「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本連載は情報の提供及び学習を主な目的としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資・経営(管理運営)の成功を保証するものではなく、本連載を参考にしたアパート事業は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本連載の内容に基づいて経営した結果については、著者および幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。なお、本連載に記載されているデータや法令等は、いずれも執筆当時のものであり、今後、変更されることがあります。

大谷 義武

武蔵コーポレーション株式会社 代表取締役

昭和50年 埼玉県熊谷市生まれ。東京大学経済学部卒業後、三井不動産株式会社に入社。同社にて商業施設(ショッピングセンター)やオフィ スビルの開発・運営業務に携わる。平成17年12月同社を退社し、さいたま市において有限会社武蔵コーポレーション(現在は株式会社)設立。代表取締役に就任。賃貸アパート・マンション(収益用不動産)の売買・仲介に特化した事業を開始する。

著者紹介

武蔵コーポレーション株式会社 常務取締役

昭和52年 東京都葛飾区生まれ。28歳の時に区分所有の物件を購入 し、不動産投資を始める。平成18年創業期の武蔵コーポレーションに入社し、現場責任者として賃貸アパート・マンション(収益用不動産)の売買・ 仲介業務に携わる。特にリフォームに関しての経験は豊富で、現在までに 2000室以上の収益用不動産の再生(リフォーム・改修工事)に携わってい る。再生後の物件入居率は99%を誇る。

著者紹介

連載空室を埋める「リーシングマネジメント」の進め方

空室率40%時代を生き抜く!「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式

空室率40%時代を生き抜く!「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式

大谷 義武 太田 大作

幻冬舎メディアコンサルティング

アパート経営は今までと同じやり方では利益が出ない時代へと状況が大きく変わってきています。歴史上初めての大きな転換期を迎えていると言っても過言ではありません。だからこそ今のうちに、アパート経営を見直し、しっかりと…

Special Feature

2016.12

「法人保険」活用バイブル<書籍刊行>

決算対策、相続・事業承継、財産移転・・・企業とオーナー社長のさまざまな課題解決に、絶大な効果を発揮する「法人保険」の活用…

GGO編集部(保険取材班)

[連載]オーナー社長のための「法人保険」活用バイブル~決算対策編

【第19回】保険のための医的診査 結果が「少し悪い」ほうが社長が喜ぶ理由

GTAC(吉永 秀史)

[連載]法人保険を活用した資産移転の節税スキーム

【第15回】「逆ハーフタックスプラン」活用時の留意点

Seminar information

不動産活用セミナーのご案内

償却メリットを狙った「京都の町家」投資の魅力

~建物比率5割超&4年で減価償却も可能!独自の不動産マーケットを形成する京町家だから実現する投資法

日時 2016年12月10日(土)
講師 平野準

海外不動産セミナーのご案内

償却メリットにフォーカスした「ハワイ不動産」投資の最新事情

~築古木造のタウンハウスで建物比率80%以上。「ハワイの償却物件」の実際と活用法

日時 2016年12月10日(土)
講師 大橋 登

海外活用セミナーのご案内

国際金融都市「香港」で始めるグローバル資産防衛

~本格的な海外投資環境を整えるメリットと現地の最新金融事情

日時 2016年12月10日(土)
講師 長谷川建一

The Latest