今回は、部屋の温度差がもたらす健康リスクと、高断熱・高気密住宅のメリットについて解説します。※本連載では、オーガニックで豊かな暮らしの家づくり推進協議会・会長で、明工建設株式会社の代表取締役・仁藤 衛氏の著書、『知らなきゃ損! 建てる前に必ず読む本』(知道出版)の中から一部を抜粋し、家づくりに潜む「7つの落とし穴」を明らかにし、それらを回避するためのポイントを解説します。

「平均寿命」と「健康寿命」に10歳以上の差がある日本

日本は、平均寿命は長いのですが、健康寿命との差が10歳以上もある国です。これは、先進国の中では最下位です。

 

では逆に、健康寿命を長く保てる家というものはどういう家なのか?

 

丁寧に説明すると、数字的な根拠も合わせてこれだけでも一冊の本になってしまいます。日本の家づくりについて、私が伝えたいことがうまくまとまっている文章がありますので、ここに引用させてください。

 

「――兼好法師が徒然草で『家の造りは夏を旨とする』と言ったのも、『底冷えのするような京都の冬でも暖房さえすれば何とかなるが、蒸し暑さだけはどうしようも出来ない。だから夏の対策を第一にして造ったほうが良い。』と言うことから出てきた言葉です。

 

高断熱・高気密住宅の必要性を説くと必ず、子供達が寒さに耐性の無い軟弱な子に育つのではないかと心配する方もいますが、精神修養で真冬の海に飛び込んだり、滝に打たれるのは医者に言わせれば愚の骨頂で『百害あって一利無し』で、むしろ危険性極まりないということです。

 

成人の場合も脳卒中や心臓病の発症原因になりますし、子供も身体を冷やすことで様々な疾病の引き金を造ってしまいます――」『改正住宅省エネルギー基準と手引き』(奈良憲道著/株式会社エクセルシャノン)より。

健康を阻害しない室温は「全室摂氏10度以上」

つまり、精神論がもたらす健康被害には、くれぐれも注意しなければなりません。

 

具体的に言いますと、健康を阻害しない室温は全室摂氏10度以上が目安です。自分の居る部屋、寝る部屋は10度以上になっていても、廊下やトイレ、浴室などはないがしろにしがちですが、ここも10度以上にしないと意味がありません。

 

「高齢者の『入浴事故死』の要因は部屋の温度差なので、その対策をした家をつくりましょう」という話は、どんな住宅会社でも当たり前にお伝えしていると思います。ですが、これだけでは不十分です。また、断熱性能を上げるためにこの断熱材が良いとか、サッシやガラスの性能はこれでないと駄目とか、そこでイニシャルコストは上がるが、ランニングコストはこれだけ下がる、健康住宅ですから医療費も減ります、といった程度の案内です。

 

本来は、この「イニシャルコスト」を上げなくても済む方法を提案するべきなのです。

 

余談ですが、先日、ある大手建材メーカーの営業マンが、サッシの新商品の説明に来ました。まったく的を得ていないどころかアルミサッシと樹脂サッシのメリット、デメリットもはき違えていましたので、みるにみかねて「サッシ部門に配属は最近ですか?」とお聞きしたところ、5年の実績とのことでビックリしました。その方にもせっかくだからと、サッシ素材の本質的な話をしたら、「ありがとうございます」とお礼までされました。

 

要点を言いますと、部屋の温度をコントロールするためには、窓の重要性に着目しなければならないということです。まず、日本のどの地域に住むのかによってその家の冷暖房期間を知ることができます。寒さ対策か、暑さ対策か、どちらがどのくらい必要なのか、私ならばすぐに調べておおよその日数を割り出しお知らせします。

 

そして、その対策として窓が鍵になるのです。暑さも寒さも窓の開口部から熱の出入りによってもたらされます。そこで、窓の財種、サッシの材種が重要だということになるのです。やかんの取っ手が樹脂なのは、熱が伝わりにくいことでもわかるように、熱伝導の高い材種のサッシを使うよりも、熱伝導の低い樹脂などの材種を選ぶことによって、当然ながらエアコンの温度設定も違ってくるのです。また、人が感じる体感温度も、壁や建具の表面温度により大きな影響を受けますから、サッシの選定を間違えると、断熱材の入っていない壁以下の性能になってしまうこともあります。つまり、性能が良いからコストが高くなるのではなく、高くならないように性能を上げるのが大事なのです。

 

建材メーカーの方よりも物事の本質を知ることにより、住宅会社主導で、流通を調整しコスト管理をすれば、お金のかからない家づくりができると断言できます。

 

少しでも質の良い家を安く手に入れて欲しいというのが、私の一番の願いですから。

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    本連載は、2017年8月15日刊行の書籍『知らなきゃ損! 建てる前に必ず読む本』(知道出版)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    仁藤 衛

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