物件供給の「難易度」から見たハワイ不動産の将来性

前回は、「Trump Tower Waikiki」のオープン以来のリセールの状況などをご紹介しました。今回は、物件供給の「難易度」からハワイ不動産の将来性もについて見ていきます。

全米の人口増加率は、2030年までに+9.29%に

本連載では米国不動産の中でもハワイ不動産をメインにお話をしていますが、今回はハワイ不動産の現状だけではなく、将来性についても考えてみましょう。「The Ritz-Carlton Residences Waikiki」や「Ward Village」、「Park Lane Ala Moana」など、新築のプロジェクトがいよいよ竣工し、最近のハワイ不動産市場を見ていくと、よくこんなに新築物件ができるなぁ、と思う状況が続いております。現状だけを見ていると、なんとなくこれからもハワイにはどんどん新築物件が供給され、供給過多になるのではないか、と危惧する気持ちになりますが、実際今後はどうなるのでしょうか?

 

2017年6月27日に、興味深い調査結果が出ました。National Apartment Association(NAA)とNational Multifamily Housing Council(NMHC)からリリースされた「Barriers to Apartment Construction Index」です。NAAならびにNMHCは、日本で言うところの「全日本不動産協会」や「全国宅地建物取引業協会連合会」のような業界団体になります。

 

この「Barriers to Apartment Construction Index」というデータは、文字通り「アパートメント建設における障壁指数」ということになります。大前提として、全米50州における2030年までの人口推移予測と、それに伴い今後必要になるであろうアパートメント戸数の予測を行ったデータです。それにあわせて、全米50州の各主要都市それぞれのレポートも開示されており、さらに各都市ごとに新築物件の供給の難易度をランキングしています。

 

このデータで見ると、全米の2030年までの人口増加率は+9.29%となっており、2016年度と比較すると約3,180万人の人口増加があり、それに伴い追加で必要になるアパートメント戸数は約460万戸となっております。

 

では日本はどうかというと、2015年度と比較すると、2030年度までの人口増加率は-7.88%、約997万人の人口減、となります。

 

[図表1]年齢区分別将来人口推計

出典:内閣府「平成24年度版 高齢社会白書」
資料:2010年は総務省「国勢調査」、2015年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果
(注)2010年の総数は年齢不詳を含む。
出典:内閣府「平成24年度版 高齢社会白書」
資料:2010年は総務省「国勢調査」、2015年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果
(注)2010年の総数は年齢不詳を含む。

 

この人口減少が、日本では将来不動産の空室リスクが高くなるのでは? と言われる所以です。ただし、日本が全部ダメになるわけではなく、エリアによっては人口が増える都市もあります。そのため一概にはいえませんが、シンプルに考えた場合には、不動産は「需要と供給」によって価値が決まるという面が多分にあり、人口が増える=需要が増えるエリアで所有した方がいい、という発想になります。

物件の供給が米国内でもダントツで難しいハワイ

では、ハワイにおいてはどうなのでしょうか?

 

ハワイの中でも、主要なOahu島の状況を見てみましょう。


Oahu島を管轄しているのは、Honolulu Countyというところになりますが、2016年度と比較すると、2030年度までの人口増加率は+6.05%約70,000人の人口増を見込んでいます。
 

[図表2]Honolulu_Barrier to Apartment construction

 

出典:’Barriers to Apartments Construction Index‘ National Apartment Association and National Multifamily Housing Council
出典:’Barriers to Apartments Construction Index‘ National Apartment Association and National Multifamily Housing Council

 

人口増加率、また実際の人口増加数においては、全米と比べると微々たるものではあるのですが、特筆すべきは物件の供給の難易度です。


これは各都市における特有の規制やそもそもの空地率、また、過去の実際の新築物件供給数等から算出した、新築物件供給への障壁指数であり、数値が高い程、供給が難しいことを意味しています。
 

[図表3]

 

19 Honolulu 2 Pittsburgh
13 Boston 2 Chicago
12 Baltimore 1 Detroit
9 Miami 0 Atlanta
9 Memphis 0 Cleveland
8 Philadelphia 0 Tampa
8 Seattle -1 Birmingham
8 San Francisco -1 Dallas Fort Worth
6 Denver -1 San Antonio
6 New York City -2 Austin
5 San Diego -2 Richmond
5 Los Angeles -2 Nashville
5 Riverside -2 Houston
5 Phoenix -2 Oklahoma City
5 Raleigh -3 Louisville
5 Milwaukee -3 Sioux Falls
4 Sacramento -3 Charleston
4 San Jose -4 Charlotte
4 Orlando -4 Las Vegas
3 Minneapolis -4 Cincinnati
3 Portland -5 St.Louis
3 Albuquerque -5 Indianapolis
3 Washington.D.C. -5 Kansas City
2 Salt Lake City -5 Little Rock
2 Columbus -6 New Orleans

 

Honoluluはなんとダントツ1位の障壁指数「19」ということになっております。ボストンやニューヨーク、サンフランシスコなどはイメージし易いかと思いますが、実際にはホノルルが全米において最も新築供給が難しいエリアである、という調査結果となりました。

 

Honolulu Countyの人口増加率は全米平均よりも下ではありますが、減少するわけではなく、増加することには変わりありません。にもかかわらず、様々な要素を加味して考えると、供給そのものが非常に難易度の高いものとなっており、不動産の基本である「需要と供給のバランス」で考えると、供給自体に制限があるため、不動産投資家目線でみると良い意味で需給バランスが取れているエリアであることが分かります。これが2008年のリーマンショック時にもアメリカ本土で起きたような不動産価格の大幅な下落がHonoluluでは起きなかった理由の一つでもあります。

 

このように見ていくと、冒頭に記載した現在のハワイの新築ラッシュというのは、歴史的に見るとかなり特殊な時代だった、と、あと20年~30年後には思うのではないでしょうか。実際に、現在竣工した、また引渡中のプロジェクト以降、Ward Village以外には正式に決定した大きな新規プロジェクトが存在しておりません。ここ数年の動きだけを見て「ハワイは供給過剰なのでは?」という判断をされるのはもしかするとミスリードになってしまうかもしれませんね。

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連載田村仁のホノルル不動産通信

株式会社Crossover International 代表取締役

仙台第一高等学校、法政大学経済学部経済学科卒業。宅地建物取引士。
2002年より某大手ディベロッパーにて一棟物件、区分所有物件の事業用不動産の販売を手掛け、2005年より中古不動産のバリューアップに特化した不動産会社の創業・ブランディング構築に携わる。2008年より株式会社Seven Signatures Internationalにおいて、主に米国ハワイのホテルレジデンス・ラグジュアリーコンドミニアムプロジェクトの日本の超富裕層マーケティングのセールディレクターに就任。2017年に株式会社Crossover Internationalを設立。

WEBサイト http://www.crossover-international.com/

著者紹介

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