前回は、突発的な病気で「介護状態」になった際に利用できる介護保険サービスを紹介しました。今回は、在宅で介護をしたい際に利用可能な介護保険サービスを見ていきましょう。

「在宅介護サービス」を利用し、費用の負担を減らす

<ケース2>父親(要介護3)と母親(要支援1)のふたり暮らし

 

地方の持ち家で高齢の夫婦ふたり暮らし。息子は東京在住。父親は月額14万円の年金を受給しており、要介護3。母親は要支援1で、自分のことは一通りできるものの、父親の介護までは難しくなっています。しかし、父親が施設に入所すると、その介護費用負担で、母親の生活が一気に厳しくなるという状況です。

 

この場合「①できるだけ在宅介護サービスを利用して現在の生活を維持する」「②息子の自宅近くに引っ越してデイサービスを利用する」「③息子が母親を引き取り、父親は東京の施設を探す」などの選択肢がありますが、本人の要望に沿って進めていきます。

 

両親ふたりとも住み慣れた土地を離れるのを嫌がったり、自宅を売却したくないということであれば、まずは母親の負担を減らすべく介護サービスを複数利用するのがいいでしょう。月額14万円あれば、在宅介護サービスをいろいろと利用することができます。

配食サービスや訪問入浴サービスを活用し、生活を維持

①できるだけ在宅介護サービスを利用し、現在の生活を維持する

 

夫婦で今の自宅での生活を維持する場合、父親のベッドや車いすは、レンタルを利用します。普段のベッドに手すりをつけるだけで問題なく生活できる場合もあります。そしてその上で食事と入浴ができるサービスを利用します。

 

配食サービスや訪問入浴サービス(1回1387円)などもありますが、入浴や食事の提供があるデイサービスであれば、週2回でも月額1万円程度で利用できます。デイサービスは9時から17時までで送迎もあるため、父親がデイサービスを利用すれば、その間母親は父親の介護から解放され心身を休めることができます。

 

またそれ以外の日に週1回訪問看護を利用し体調管理をします。父親に認知症の症状が強く出ているようであれば、デイサービスの回数を増やします。

 

並行して母親の家事軽減のため、週に2回ほど夫婦で配食サービスを利用するようにします。また買い物が大変だという場合には、ネットスーパーを活用します。最近では多くの大手スーパーマーケットが、宅配サービスを行っています。

 

母親が自分で注文できない場合は、子どもが母親から注文内容を定期的に聞き、代わりに注文手続きをするのもよいでしょう。2日に1回、電話やメールで注文内容を聞くことも立派な安否確認です。

 

さらに必要であれば、母親に週に1回生活援助をつけ、下ごしらえやごみ出しなどを行うようにします。ごみの内容をヘルパーが定期的に確認することで、注文した食材をきちんと食べているか把握することができます。

 

ホームヘルパーによる生活支援を週に1回から2回利用しても、自己負担額は1000〜2000円程度の追加ですみます。

 

ヘルパーに1回の来訪で掃除と2食分をつくってもらえば、食事の支度はほとんどしなくて済むようになります。時には母親の体調を見ながら父親にショートステイを利用してもらってもよいでしょう。1泊2日で1万円ほどかかりますが、月2回ほど利用することで母親の心身を休めてもらうことができます。

 

このプランであれば、月額5万円程度の介護費負担で十分に今までの生活を維持できます。

 

[図表]ケース2の場合 父親(要介護3)と母親(要支援1)のふたり暮らし

 

この話は次回に続きます。

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    本連載は、2017年6月23日刊行の書籍『人生を破滅に導く「介護破産」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。介護保険サービスの金額は、社会福祉法人サンライフの金額を参考に記載しています。実際の金額は利用する施設などへお問い合わせください。本来、施設の種類によって「入居」「入所」と書き分けるべきですが、文章の分かりやすさに配慮し、すべて「入所」に統一しています。

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    杢野 暉尚

    幻冬舎メディアコンサルティング

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