今回は、「うめこんじょう【梅根性】」を解説します。※本連載は、元小学館辞典編集部編集長で、辞書編集者として多数の辞書作りに携わってきた神永曉氏の著書、『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信出版局)の中から一部を抜粋し、変化し続ける「ことばの深さ」をお伝えします。

意地ばかり張り、自分を変えない意固地な性格のこと

うめこんじょう【梅根性】〔名〕

 

梅は意固地、柿は融通のきく性格って・・・

 

以前、NHKの朝の連続テレビ小説を見ていて知ったことばに、「梅根性」というものがある。普通の国語辞典には載っていないのだが、さすがに『日本国語大辞典(日国)』にはある。それによると、

 

「(梅はなかなか酸味を失わないところから)しつこくて、なかなか変えがたい性質」

 

なのだという。意地ばかり張って、自分を変えようとしない意固地な性格のことを言うのであろう。これに対するのが「柿根性」なのだそうだ。やはり『日国』には、

 

「渋い柿がすぐ甘くなるような、変わりやすい性質。融通のきく性質」

 

とある。

「梅根性」「柿根性」とも江戸時代の用例あり

「梅根性」「柿根性」ともに江戸時代の用例があり、『日国』にも引用されている。『祇園物語』(1644年頃)という江戸時代初期に書かれた仮名草子と呼ばれる仮名書きの小説のもので、以下のような内容である。

 

「いやしき諺にも梅根性、柿根性と申事あり。梅は黒やきにしてもすけ(酢気 = 酸っぱさ)をあらためず。柿は一夜のあく(= あく抜きのこと)にてそのまま甘(あまく)なり候」(筆者注…一部読みやすくした)

 

江戸時代の初期には比較的なじみのあったことばだったのか、『祇園物語』とほぼ同内容のことが、当時の代表的な狂言師・大蔵虎明が書いた狂言論集『わらんべ草』(1660年)にも出てくる。

 

今はほとんど知る人のないことばだが、ぜひ復活させたいことばだと思った。朝、出かける前に見ているドラマであるが、時折思いがけない拾いものがある。

 

□大和ことば・伝統的表現

 

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