今回は、中国で外資企業が「支店・連絡事務所」を開設する方法を見ていきます。※製造業やサービス業など、多くの外資企業が進出する中国市場。本連載では、中国ビジネスコンサルタントで、Mizuno Consultancy Holdings Limited代表取締役社長・水野真澄氏の著書、『中国ビジネス投資Q&A』(株式会社チェイス・チャイナ)の中から一部を抜粋し、中国ビジネス展開に関する疑問をQ&A方式を紹介します。

「経営性分公司」と「非経営性分公司」の違い

Question

 

外資企業が中国内に支店や連絡事務所を開設することはできますか?

 

Point

 

●外資企業は分公司(支店)、弁事処(連絡事務所)を開設することができる。

 

●分公司は営業活動ができる経営性と、連絡活動に限定される非経営性に分けられる。

 

●弁事処は登記のない連絡事務所であり、活動面の制限は多い。

 

Answer

 

1.外資企業の分公司

 

分公司は経営性分公司と非経営性分公司に分かれます。

 

経営性分公司は営業活動ができる分公司であり、非経営性分公司は営業活動が禁止されている(連絡業務のみに従事する)分公司を指します。

 

営業活動がどの様な行為を指すかについては一概にはいうことはできませんが、実務上は、発票起票の有無が重要な判断根拠となっています。

 

つまり、非経営性分公司とは、発票起票の権利を放棄することで収入ゼロの確認を税務局より受け、(非経営性としての)分公司登記を行うものです。よって、企業所得税・増値税の納税も不要であり、会計上も分公司所在地での記帳が免除されます。

 

当然、非経営性分公司の所在地では、これらの税金収入がなく、従業員の個人所得税程度の税収となりますので、開設は歓迎されない傾向にあり、北京・上海では非経営性分公司の開設は認められず、その他の地域でも事前に対応可否を確認する必要があります。

 

尚、経営性分公司については、以下の特徴があります。

 

≪経営性分公司の特徴≫

 

●会計処理

 

分公司の財務諸表を個別作成する必要がある。

 

●企業所得税

 

「地区を超えて経営し一括納税する企業所得税の徴収管理暫行弁法の公布に関する通知(国税発[2008]28号)」に基づき、本店(総公司)所得と経営性分公司所得を合算し、50:50の比率で分配の上、納税する。複数の分公司がある場合は、分公司に帰属する50%相当を、分公司の規模(営業収入、給与総額、資産総額に応じて決定)に基づき配分する。

 

●増値税

 

経営性分公司は発票起票が可能であり、増値税納税義務者となる(条件を満たせば、一般納税人資格を取得できる)。尚、本支店取引でも増値税の課税対象取引となる。

 

●税関登記

 

分公司は税関登記ができないため、貿易取引の当事者にはなれない。

 

●本支店の資金移動

 

本支店間での資金移動は柔軟に認められる。

登記を行わずに弁事処を開設することは合法的だが…

2.外資企業の弁事処

 

弁事処とは、登記のない連絡事務所のことです。連絡業務のみが認められることは非経営性分公司と同様ですが、登記なしで開設する点に違いがあります。

 

登記なしで拠点を開設することの妥当性(合法性)について、国家工商行政管理局は、「外商投資企業関連審査登記管理法規適用における若干の問題に関する執行意見(国家工商行政管理局・商務部・税関総署・外貨管理局)」において、以下の通り規定しています。

 

わが国の法律は、弁事処の開設を禁止していない。外資企業の弁事処が登記を受理されない理由は、外資企業の弁事処開設を、より簡便にするものであり、既存の弁事処は今後も継続できるし、営業活動を行う分公司に転換することもできる。会社登記機構は、弁事処営業活動に従事することを防止するために、一層、監督強化をしなくてはならない。

 

つまり、登記を行わずに弁事処を開設することは合法的ではあるものの、営業活動は一切認めておらず、その管理を厳格に行う立場を表明しています。

 

営業行為の定義は非経営性分公司と同様ですが、弁事処は登記がないことから、開設地では一切の税金や社会保険を納付せず、本店所在地での対応となります。

 

この点、少なくとも個人所得税は納付する非経営性分公司よりも立場は微妙で、所在地からは歓迎されない存在となります。また、弁事処は組織としての登記がないため契約当事者になることはできず、人員採用、オフィス賃貸、銀行口座開設などの一切の行為ができず、活動上の制限も大きくなります。

 

このため、どちらかというと、組織が軌道に乗るまでの暫定形式という位置付けとなっています。

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    本連載は、2017年9月1日刊行の書籍『中国ビジネス投資Q&A』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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