今回は、企業がBS経営に徹して「資金ショート」を防ぐ方法を見ていきます。※本連載は、戦略財務コンサルティング事務所・株式会社TCRの代表取締役で、財務全般のコンサルティング業務を全国で展開する武田健一氏の著書、『社長、その借金、なんとかできます!〜元銀行マンが教える「見切り」の事業再生』(合同フォレスト)より一部を抜粋し、傾いた事業を立て直すファーストステップとなる「資金ショート」完全防止対策について解説します。

「借入金=返すお金」という意識を忘れない

BS経営(現在動かせるお金がどのくらいあるか)を基盤とした経営に徹しながら、さらに徹底して資金ショートを防ぐためには、次の2点にも留意します。

 

①基本的には、運転資金となる現金・預貯金はたくさんあるに越したことはない。金融機関から借りられるときには、借りられるだけ借りたほうがよい。

 

②ただし、「お金に色」をつけておくこと。

 

お金にはもともと、「色」はありません。これは、そのお金が、資本であろうと、事業の売上金であろうと、借入金であろうと、お金はお金。それぞれの価値は変わらないということです。そして基本的には、事業を回していくためのお金、運転資金が潤沢であればあるほど、大きい利益をあげることができます。

 

つまり、売上を伸ばすためには、借金であってもお金はあったほうがよいのです。

 

そこで私も、社長さんたちには「お金は借りられるだけ借りたほうがよいですよ」とよく申し上げています。しかし、多くの社長さんたちが犯しがちな過ちがあります。それは、お金には色がついていないだけに、資本金や売上金と、借入金、これらすべてを「同じ種類のお金」と考えてしまうことです。

 

資本金や売上金と、借入金、これらには決定的な違いがあります。それは、「借入金は返さなければならないお金である」ということです。

 

そういうと、「そんなこと、当然のことじゃないか。今さらなにを」と思われるかもしれません。しかし、実際に、私のところにいらっしゃる社長さんたちも含めて、この意識が薄れてしまっている方が多くいるのです。

負のスパイラル「借入金返済のための借入金」に注意

手元に残る利益を計算するときには、売上高から諸々の経費を差し引いて、さらに、借入の返済金を差し引かなければなりませんが、これを忘れてしまうのです。そして、資金繰り表を作成してはじめて、この現実に気づく方も少なくありません。

 

売上はだいたい一定水準を保っているし、月々の支払いもほぼ一定。それなのに、なぜか繰越残高が毎月、毎月、減っている。なぜだろうとよく見れば、借入金の返済額の分がそのままマイナスになっている―そんなケースが非常に多いのです。

 

これに初期段階で気づけば、なんとか営業努力で売上を伸ばし、フォローするということもできるでしょう。しかし、借入金の返済によって繰越残高がどんどん目減りしていることに〝ギリギリ〞になるまで気づかず、あるいは手を打たず放置してしまった結果、「借金を返すために借金をする」はめになってしまうケースもまた、多いのです。

 

こうして一度でも借金を返すために借金をしてしまうと、さらにその「借金のための借金」を返済するために、また借金……という、アリ地獄のような〝借金の連鎖〞に陥ってしまうのがオチです。

 

こうなるともはや、売上アップだけでこの状況から抜け出すのは、かなり不可能に近いでしょう。単純に計算してみても、たとえば、毎月100万円の返済があった場合、返済額は年間で1200万円にもなります。この1200万円をきっちり返すためには、最低でも税引き後の利益として1200万円が必要なのですが、それには、コンスタントに税引き前で2000万円の利益を出し続けなければなりません。

 

この数字を見ても、ただ売上をあげているだけでは、アリ地獄からの脱出はとうてい無理なことがわかると思います。

 

しかし一方で、このような場合に、第4章でお話しする「リスケジュール」、通称「リスケ」によって、当座の手当てをしながら態勢を整え、最終的にはアリ地獄からの脱出に成功し、事業を軌道に乗せることができたという例は、枚挙にいとまがありません。

 

いずれにしても、このようなアリ地獄にうっかり滑り落ちることのないよう、借入金は「現実に動かすことのできるお金」ではあっても、「現実にお金がある」という意味での「お金」からは、外しておかなければならないのです。

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