今回は、機関投資家や大手証券会社のディーリング部門は、株式市場で長期投資家の脅威になるのかを見ていきます。※本連載は、さわかみホールディングスの代表取締役で、日本における長期運用のパイオニアとして知られる澤上篤人氏の著書、『これが長期投資の王道だ』(明日香出版社)より一部を抜粋し、株式「長期投資」の極意を紹介します。

一見すると「とんでもない怪物」だが・・・

ディーリング運用がますます幅をきかすようになってきた流れの延長線上で、新しい主役がどんどん登場してきている。オプション取引やらインデックス先物の売買、あるいは先物との裁定取引、そしてデリバティブ(金融派生商品)などが、すごい勢いで存在感を増してきている。

 

このあたりになると、もはや機関投資家と大手証券会社のディーリング部門の独壇場である。彼らは数学や統計学で高度に理論武装した金融工学をベースに、コンピュータを駆使してありとあらゆる投資対象の価格のズレを突いては、ディーリング益を積み重ねようとする。

 

こうなると、企業の利益成長を楽しみに待とうとする長期投資も、なにもあったものではない。マーケットが存在して、値動きさえあれば、どんな投資対象でも構わない。価格差を瞬時に突いて、値ザヤを取っていく。

 

われわれ長期投資家からすれば、とんでもない怪物が登場してきたわけだ。大量の資金を背景にして、マーケットのどんな小さな値動きにも飛びかかっていく。それがマーケットの価格変動をやたらと大きくしてしまう。

長期投資のペースとリズムを大事にすれば脅威ではない

だからといって、大騒ぎすることもない。彼らは彼らで好きにやってくれればいい。こちらは、長期投資のペースとリズムを大事にしていくだけのこと。

 

むしろ、彼らが暴れれば暴れるほどに、マーケットでの価格形成をぶ厚くしてくれる。だから、大いに歓迎である。なにしろ、マーケットにはありとあらゆる価値観や利益目的が流れ込んでくる場なのだ。機関投資家によるドッタンバッタンの運用だって一向に構わない。

 

機関投資家は巨額の資金を擁している。そんな彼らが短期のディーリング運用に走り、オプションや先物取引をますます多用すれば、それだけ彼らのマーケットでの価格支配力が高まることになる? それに対して、長期投資家は多勢に無勢で勝ち目がないのでは?

 

たしかに世界的にみてこの40数年というもの、年金運用中心に機関投資家化現象が進んだ結果、本格派の長期投資家は絶滅危惧種的な存在となってしまった。それは事実である。

 

しかしながら、心配はいらない。長期投資の土壌はますます大きく豊かになってきている。

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