外資企業の「最高意思決定機関」・・・中国内でのルールとは?

今回は、中国内における外資企業の「最高意思決定機関」等について解説します。※製造業やサービス業など、多くの外資企業が進出する中国市場。本連載では、中国ビジネスコンサルタントで、Mizuno Consultancy Holdings Limited代表取締役社長・水野真澄氏の著書、『中国ビジネス投資Q&A』(株式会社チェイス・チャイナ)の中から一部を抜粋し、中国ビジネス展開に関する疑問をQ&A方式を紹介します。

様々な決定・許可の権限を持つ「出資者総会」

Question 外資企業の意思決定機関と役職

 

外資企業はどの様に意思決定を行うのですか? また、董事・総経理・法定代表人の関係を教えてください。

 

Point

 

●外資企業の最高意思決定機関は、独資企業の場合は出資者総会、若しくは出資者。中外合資企業・中外合作企業の場合は董事会となる。

 

●董事は出資者が派遣する代表者で、出資比率を参考に人数を取決める。董事会は出席した董事の多数決により決議される。

 

●総経理は董事から任命された現場管理の責任者と位置付けられる。

 

●法定代表人は、董事長、若しくは総経理の何れかから選ばれ、会社の登記事項・政府機関への報告などに責任を持つ役割である。

 

Answer

 

1.外資企業の最高意思決定機関

 

① 会社法の規定

 

会社法・第36条には、「出資者総会(中国語:股東会)は会社の権力機構であり、本法に従って職権を行使する」と規定されており、出資者総会を会社の最高意思決定機関と位置付けています。また、出資者総会は、経営方針の決定、董事・監査役の選任と交代、董事会決議の許可、利益処分の決定、増減資や組織変更の決定、定款の修正などに権限を持つことが規定されています。

 

② 外資企業関係法の規定

 

中外合資企業法実施条例には、「董事会は合資企業の最高権力機関であり、合資企業の一切の重要事項を決定する」、中外合作企業法実施細則・本レポート内の文章や画像、素材イメージ等の無断転載、無断複製を禁止します。 28第24条には、「合作企業は、董事会、または連合管理委員会を設置する。董事会・連合管理委員会は合作企業の権力機構であり、合作企業定款の規定により、合作企業の重要事項を決定する」と規定されており、董事会が最高意思決定機関とされています。

 

独資企業法には、董事会については特段の規定はありませんが、実務上、董事会(執行董事制が採用されている場合は執行董事)が重要事項の決定を行っています。

 

③ 会社法と外資企業関係法の齟齬の調整

 

上記①・②の通り、会社の最高意思決定機関に関して、会社法と外資企業関係法では齟齬が生じています。この調整のために、国家工商行政管理局より、「外商投資企業の会社批准登記管理の法律適用に関する若干の問題についての執行意見(工商外企字[2006]81号)」が公布され、以下の通り規定しています。

 

中外合資企業・中外合作企業は引続き董事会を最高意思決定機関とし、出資者総会を設定しない。独資企業は出資者総会を最高意思決定機関とする。但し、出資者が一人の独資企業は出資者総会を設置せず、出資者が董事会決議を承認する。

 

④ 出資者総会と董事会の決議方法の違い

 

上記③の規定により、中外合資・中外合作企業の場合は、依然として董事会が最高意思決定機関となっています。独資企業の場合は出資者総会が最高意思決定機関であり、董事会決議を承認するかたちで決議を行います。

「出資者総会」と「董事会」の決議方法の違い

因みに、出資者総会と董事会の決議方法の違いは、以下の通りです。

 

●出資者総会

 

出資比率に基づき議決権を行使します。会社法・第43条は、会社定款の改定、登録資本金の増加、若しくは減少の決議、及び会社の合併、分割、解散、若しくは会社形態の変更を決議する場合、三分の二以上の議決権本レポート内の文章や画像、素材イメージ等の無断転載、無断複製を禁止します。 29を有する出資者の同意を義務付けています。それ以外の内容は、定款に定める議決方法で決定できます。

 

●董事会

 

出資者が派遣した董事による多数決で決議を行います。

 

中外合資企業法実施条例・第33条は、会社定款の改定、合弁の中止・解散、登録資本金の増加、若しくは減少の決議、及び会社の合併、分割については、董事会の満場一致決議を義務付けています。それ以外の事項は、会社定款に定める決議方法に基づき議決できます。

 

2.董事と総経理の関係

 

総経理は董事会により指名された現場管理責任者(董事会が招聘・解任を決定)であり、董事会の決議事項の執行に責任を持ちます。

 

3.法定代表人の位置付け

 

法定代表人は政府機関に対する報告業務に責任を持つ者であり、董事長・執行董事・総経理のなかから一名を選択することが、会社法・第13条に規定されています。

 

尚、中外合資企業の場合は、董事長を合弁会社の法定代表人とすること(董事長が職責を執行できない場合、副董事長、その他の董事を指名)が規定されているため、会社法の定めにかかわらず、これに基づく法定代表人の決定を要求される場合があり得ます。

本連載は、2017年9月1日刊行の書籍『中国ビジネス投資Q&A』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載中国進出企業のための最新「中国ビジネス制度」Q&A

Mizuno Consultancy Holdings Limited. 代表取締役社長

1963年生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業後、丸紅入社。本社財経部門、丸紅香港華南有限公司(経理部長・コンサルティング部長)、丸紅廈門貿易有限公司(社長)、丸紅深圳貿易有限公司(董事)、 丸紅広州貿易有限公司(管理部門長)、丸紅出資コンサルティング会社(社長)を経て2008年に退職。同年、Mizuno Consultancy Holdings Ltd(水野諮詢集団有限公司)を香港に設立し、現在は、香港、上海、広州、深圳、ベトナム、日本にも拠点を持つ。中国・アジアでビジネス展開を行う日本企業に対するコンサルティング業務を推進する他、新聞や雑誌等の執筆、TV出演などの活動を行なっている。広州市投資促進局シンクタンクメンバー(広州市投資促進局専家庫専家)、肇慶市顧問、 香港貿易発展局、横浜市(IDEC)、中小企業基盤整備機構などのアドバイザーを兼務。また、上海総合保税区(現自由貿易試験区)の2009年優秀パートナーに選出される。

Mizuno Consultancy Holdings Limited  https://www.mizuno-ch.com/

コンサルティングに関するお問い合わせ info@mizuno-ch.com

著者紹介

中国ビジネス投資Q&A[2017改訂版]

中国ビジネス投資Q&A[2017改訂版]

水野 真澄

チェイス・チャイナ

中国の法制度はドラスティックに変化し、また日本企業の関心も、組織再編、特殊形態取引、Eコマース、上場、資金調達と資金の有効活用、撤退など、多様化を見せています。 本書は2017年現在の法令・制度改定、最新の中国ビジ…

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