中国株式市場への上場を目的とした「外資株式会社」の設立条件

今回は、中国への三資企業以外の企業の進出形態のひとつ「外資株式会社」の概要や設立条件、中国の株式市場などについて見ていきます。※製造業やサービス業など、多くの外資企業が進出する中国市場。本連載では、中国ビジネスコンサルタントで、Mizuno Consultancy Holdings Limited代表取締役社長・水野真澄氏の著書、『中国ビジネス投資Q&A』(株式会社チェイス・チャイナ)の中から一部を抜粋し、中国ビジネス展開に関する疑問をQ&A方式を紹介します。

初回上場基準は「発行済株式が3,000万元以上」

外資株式会社は外資企業の一形態であり、「外商投資株式会社設立の若干の問題に関する暫定規定(対外貿易経済合作部令1995年第1号)、以下、暫定規定」を根拠としています。

 

① 会社形態と設立手続

 

1)外資株式会社の形態

暫定規定には、『外資株式会社とは、全ての資本が同額の株式により構成され、株主は自己が引き受けた株式をもって会社に責任を負い、会社は全ての財産をもって会社の債務に責任を負い、外国出資比率が25%以上となる法人』と定義されています。

 

つまり、株式会社も出資者は出資金の範囲で会社に責任を負う形態であることが規定されています。

 

2)設立方法

外資株式会社の設立には、発起設立方式、募集設立形式、更には既存の外資企業からの形態変更という方法があります。

 

発起設立方式とは、会社設立時に発行する株式の全てを発起人が引受ける方式をいい、募集設立方式とは、発起人は一部の株式のみを引受け、残りは株主を公募する方式をいいます。一般的には、外資形態で設立当初より株主を公募することには困難が伴うことから、外資株式会社の設立方式は、発起設立方式か、既存の外資企業からの形態変更の何れかが採用される可能性が高いといえます。

 

発起設立方式を採用する場合、発起人の中の最低一者は外国出資者である必要があります。尚、発起人が取得する株式の譲渡は、会社設立登記から3年間は制限されます。

 

また、既存の外資企業を株式会社に改組する場合、その外資企業は直近3年間連続して利益を計上していることが条件付けられます。

 

3)資本金

暫定規定には、外資株式会社の資本金は3,000万元以上と規定されていますが、この最低資本金規定は、「一部の規則及び規範性文書の改正に関する決定(商務部令2015年第2 号)」により廃止されています。

 

但し、2016年1月1日に施行された、改定版「初回株式公開発行及び上場管理弁法(中国証券監督管理委員会公布)」では、初回上場基準として、依然として発行済株式が3,000万元以上であることが義務付けられていますので、上場を前提とする場合は、この金額を設定する必要があります。尚、暫定規定には、発起人は会社設立許可証の取得日から90日以内に資本金全額を払い込むことが要求されていますが、やはり、商務部令2015年第2号により、この条件も廃止されています。

 

4)認可機関

暫定規定には、認可機関は商務部であることが規定されていますが、現在では、三資企業と同様、外商投資産業指導目録の奨励類・許可類については総投資額10億米ドル以下、制限類については総投資1億米ドル以下の場合は、地方に認可権限が委譲されています(国弁発[2016]14号)。また、外資株式会社に対しても、非ネガティブリスト企業の場合は、商務主管部門の許可は免除され、備案制に移行されています。

流通する株式「A株」「B株」の違いとは?

② 株式の上場

外資株式会社が株式を上場させる場合は、「外商投資株式会社の関連問題に関する通知(外経貿資字[2001]39号)」・「上場会社の外商投資に関わる関連問題に関する若干意見(外経貿字発[2001]538号)」・「外商投資株式会社の非上場外資株のB株流通関連問題に関する通知(商資函[2008]59号)」が根拠法となります。

 

初めて株式を公開する外資株式会社は、上場申請前3年以上合法的に存続している(適切な法的手続を行っている)必要があり、外資関連政策に合致していることが要求されます。

 

また、上場後の「非上場外資株比率が25%以上となること」、「外資株の資本金総額に占める割合が10%以上となること」が要求されます。また、初めての株式公開に際しては、商務部の書面による同意の取得と中国証券監督管理委員会に対する関連書類の提出が求められます。

 

③ 中国の株式市場

 

1)上場市場

中国の証券取引所は、上海と深圳に設置されています。

 

流通する株式は、外国投資家の取扱いが制限されるA株と、国内投資家・外国投資家の双方に開放されるB株に分かれています。

 

A株市場・B株市場は独立しているため、上場する企業も異なっていますが(A株の規模のほうが大きい)、双方に上場する企業も存在します。A株・B株をメインボード(主板)と呼称しますが、深圳証券取引所のA株は、通常のものと中小企業板に分かれています。更に、深圳証券取引所には、メインボード以外に創業版が設定されています。

 

因みに、外資株式会社の上場は、A株・B株・創業板の全てが可能です。メインボード(A株・B株)と創業版の上場基準は、以下の通りです。

 

●メインボード(上海・深圳)

「初回株式公開発行及び上場管理弁法」・第26 条には、以下の条件が設定されています。

 

●直近3年連続して利益を計上し、且つ 3年間の純利益累計が3,000万元超であること

●直近3年の営業キャッシュフロー累計が5,000万元超であること

●若しくは、直近3年度の営業収入累計が3億元超であること

●発行前の株式総額が3,000万元を下回らないこと

●直近年度末の無形資産(土地使用権、水域養殖権、採鉱権を除く)の純資産に占める割合が20%を超えないこと

●直近期末に補填していない欠損がないこと

 

●創業板(深圳)

「初回株式公開発行及び創業板での上場に関する管理弁法」・第11条の条件は、以下の通りです。

 

●法に基づき設立され、且つ3年以上持続して経営されている株式会社であること

●直近2年度連続して利益を計上し、その累計純利益が1,000万元を下回らないこと若しくは、直近年度で利益を計上し、営業収入が5,000万元を下回らないこと

●直近年度末における純資産が2,000万元を下回らず、且つ補填していない欠損がないこと

●発行後の株式総額が3,000万元を下回らないこと

店頭銘柄「新三板」「E版」「Q板」とは?

2)店頭銘柄

店頭銘柄として、「新三板」、上海株式託管交易センター(SEE)の「E版」・「Q板」市場などがあります。

 

●新三板

新興中小企業の店頭銘柄市場で、「全国中小企業株式譲渡システム業務規則(中国語:全国中小企業股份転譲系統業務規則)」を根拠としています。

 

新三板は、2006年に北京中関村科技園区内の企業に限定して登録が開始され、2012年には上海張江高新技術産業開発区・武漢東湖新技術産業開発区・天津浜海高新区企業に拡大、その後2013年に全国企業を対象とする様になっています。

 

登録条件は、2年以上存続している株式会社(上場市場の場合は3年以上であるため、相対的に期間が短い)であること、継続して経営する能力があることなどで、資産規模・利益水準については明確な基準は設定されていません。外資企業でも公開は可能です。

 

●E板(EはExchangeの略)

E板とは、「非上場株式会社株式譲渡システム(中国語:非上市股份有限公司股份転譲系統)」を指し、取引対象を内資株式会社に限定しています。

 

よって、現時点では外資株式会社は登録対象とはなりません。登録基準は、「上海株式託管交易センター非上場株式有限会社株式譲渡業務暫定管理弁法」に定められていますが、資産・損益水準などは条件付けられておらず、株主総数は200人以内に限定されている小規模なものです。

 

また、「登録資本・払込資本若しくは純資産が500万元未満の株式会社の株式譲渡システム公開を認める事に関する通知(滬股交[2014]1049号)」により、資本金・純資産が500万元未満の株式会社についても株式公開が認められましたが、500万元以上と未満の会社では、公開にあたっての審査機関・使用する銘柄番号が区分されます。

 

●Q板(QはQuotationの略)

Q板とは、「中小企業株式オファーシステム(中国語:中小企業股権報価系統)」を指します。

 

Q板は、株主数が200人を超えない株式会社、有限責任会社、及び上海株式託管交易センター(SEE)が認定するその他の組織・機構が登録できると規定されています。

 

つまり、株式会社だけではなく、外資を含む有限責任会社の登録も可能です。

 

登録基準は、「上海株式託管交易センター中小企業株式オファーシステム業務管理弁法」に規定されていますが、違法歴がない実態のある会社であれば、一切の実績がなくても登録が可能となっており、非常に柔軟性がある(投資家から見ればリスクが高い)市場です。

本連載は、2017年9月1日刊行の書籍『中国ビジネス投資Q&A』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載中国進出企業のための最新「中国ビジネス制度」Q&A

Mizuno Consultancy Holdings Limited. 代表取締役社長

1963年生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業後、丸紅入社。本社財経部門、丸紅香港華南有限公司(経理部長・コンサルティング部長)、丸紅廈門貿易有限公司(社長)、丸紅深圳貿易有限公司(董事)、 丸紅広州貿易有限公司(管理部門長)、丸紅出資コンサルティング会社(社長)を経て2008年に退職。同年、Mizuno Consultancy Holdings Ltd(水野諮詢集団有限公司)を香港に設立し、現在は、香港、上海、広州、深圳、ベトナム、日本にも拠点を持つ。中国・アジアでビジネス展開を行う日本企業に対するコンサルティング業務を推進する他、新聞や雑誌等の執筆、TV出演などの活動を行なっている。広州市投資促進局シンクタンクメンバー(広州市投資促進局専家庫専家)、肇慶市顧問、 香港貿易発展局、横浜市(IDEC)、中小企業基盤整備機構などのアドバイザーを兼務。また、上海総合保税区(現自由貿易試験区)の2009年優秀パートナーに選出される。

Mizuno Consultancy Holdings Limited  https://www.mizuno-ch.com/

コンサルティングに関するお問い合わせ info@mizuno-ch.com

著者紹介

中国ビジネス投資Q&A[2017改訂版]

中国ビジネス投資Q&A[2017改訂版]

水野 真澄

チェイス・チャイナ

中国の法制度はドラスティックに変化し、また日本企業の関心も、組織再編、特殊形態取引、Eコマース、上場、資金調達と資金の有効活用、撤退など、多様化を見せています。 本書は2017年現在の法令・制度改定、最新の中国ビジ…

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