金融機関に「財産の相談」をするときの留意点とは?

前回は、不動産業者の提案とおりに「アパート・マンション経営」を始めることのリスクについて説明しました。今回は、金融機関に財産の相談をする際に注意すべき点などを見ていきましょう。

その金融機関は守秘義務を果たしてくれるか?

金融機関に財産の相談を行うときの留意点は、「守秘義務を果たしてくれるかどうか」、この1点に尽きます。特に、資産家の不動産を扱う信託銀行でも、ちょっと相談しただけでグループの不動産業者に情報が回ってしまうことがあります。特に個別の売買や信託などの相談、不動産の売却益の預金相談などをするときは、資産家のほうが慎重に対応すべきです。

 

あってはいけないことですが、その預金の使い道を聞いて、自分の銀行の商品の宣伝をしてきたり、不動産投資部門の営業マンに紹介するようなケースがあるのです。銀行は多くの人が想像している以上に属人的な面もありますので、担当者によって対応が変わることがあることも注意しておきたい点です。

 

銀行との付き合いの留意点は、特にアパート経営を始めるときの借り入れの際にもあります。その際の銀行選びのコツは、従来の都市銀行系のほうが金利が低く、アパートローンなど制度金融のバリエーションも豊富です。そして、できれば長期で、金利の低いときほど固定で借りておくことをおすすめします。

 

気をつけたいのは、繰り上げ返済と借り換え、途中解約の可否です。これは銀行や借り方によって変わるので、返済のシミュレーションを確認しつつ見極める必要があります。

 

なお、外資系や海外の金融機関との付き合いも考慮に入れておく必要があるでしょう。守秘義務は海外銀行のほうがしっかりしているといわれていますが、銀行によって預金や借り入れ、その他のサービスなども個別性が強くなります。特に海外銀行は銀行業務というより投資業務、外貨預金と資産家のフォーリン・エクスチェンジ(両替)業務が中心になっているので、一概にどういう銀行が良いと言うことはできません。

 

資産家の優遇金利は一律的な邦銀と比べ魅力的ですが、一方で、どんなサービスを受けるにせよ一般に手数料が高いということはいえます。業務それぞれにメリハリがあるといってもよいでしょう。

信託銀行の「遺言信託」を利用する場合には・・・

銀行のなかでも信託銀行は、資産家が財産を信託し、その運用を任せる方式をとることで、その他の銀行とは趣の異なるサービスを展開しています。法的には、信託業務と銀行業務を兼営している金融機関ということができます。

 

この信託銀行の業務サービスとして個人の資産家が注目を集めているもののひとつに、「遺言信託」というものがあります。遺言信託は、利用する本人だけでなく、相続人にとっても重宝するサービスです。遺言書の作成支援や保管、相続財産の名義変更、遺言の執行まで相続に関わる手続きをトータルで信託することができます。

 

ただし、費用がそれなりにかかる点に注意しないといけません。具体的な金額は各信託銀行や遺言信託する相続財産額によって変わってきますが、遺言書の作成と契約の基本手数料が30万円前後(公証人の手数料や戸籍謄本の取り寄せ費用などは別)であり、遺言書の保管・管理については管理料が年間5000円前後、遺言書を変更した場合の手数料が5万円前後はかかってきます。

 

さらに、遺言の執行段階では、相続財産の価額に1%前後の料率がかかります。ある信託銀行では相続財産1億円に対して1.785%、10億円に対して0.315%です。金額にしてみると、相続財産の価額が1億円の場合で178.5万円、10億円の場合は315万円かかることになります。加えて、相続税を申告する場合は税理士への報酬が必要ですし、不動産相続登記をする場合は、登録免許税と司法書士への報酬も必要になってきます。

 

これらの費用が納得できるものかどうかを考える必要があるのです。

 

信託銀行と取引のある高齢の資産家は、信託銀行から「遺言信託を利用されては、いかがでしょう」とアドバイスを受けることが多いでしょうが、彼らもビジネスとしてこのサービスをやっているのですから、各種の手数料を求めているのは事実です。まず、このことを理解しないといけません。

 

また、信託銀行の遺言信託では、未成年の相続人に対する後見人の指定など、「身分を証明する」こと自体は受け付けませんし、同様に遺言の文言に相続人の遺留分を極端に侵害したり、相続人間の法的な紛争を招きそうな内容も受け付けません。

 

最近、信託銀行では遺産整理業務に力が入れられていますが、総資産の総額に対する手数料率になっており、他の取扱業者に比べて手数料が高くつきます。後々になってもめないように、しっかりと納得して契約することが重要です。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『塩漬けになった不動産を優良資産に変える方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載「売却」と「組み替え」で問題のある不動産を生きた資産に変える方法

東京アーバンコンサルティング株式会社 代表取締役社長

1967年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、三菱信託銀行入社。本店不動産部配属となり、不動産仲介・鑑定・開発・各種コンサルティング業務に従事する。その後、米国ロサンゼルス支店融資課長、次長、本店国際不動産コンサルティング業務担当部長等を歴任し、1991年に米国三菱信託銀行(ニューヨーク)会長兼社長に就任。
95年、英国系国際不動産コンサルティング会社である日本ナイトフランク株式会社代表取締役社長に就任。97年に東京アーバンコンサルテング株式会社を設立、現在に至る。
不動産鑑定士。不動産カウンセラー(日本不動産鑑定協会)。不動産コンサルティング技能資格(国交省所管)。宅地建物取引主任者(国交省所管)。不動産専門調停委員(東京簡易裁判所)。

著者紹介

塩漬けになった不動産を 優良資産に変える方法

塩漬けになった不動産を 優良資産に変える方法

相馬 耕三

幻冬舎メディアコンサルティング

バブル崩壊以降、買ったはいいものの収益を生んでいない賃貸物件や、地価の暴落でほったらかしになっている土地を抱える不動産オーナーは多くいます。ソニー生命の不動産整備などを実現してきた経験豊富な不動産コンサルタント…

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