インドネシアの史実を小説に・・・客員教授が筆を取った理由

今回は、大学で教壇に立ち続けてきた著者が、1冊の書籍にどのような想いを込めたのかをインタビュー形式で探ります。※本連載では、毎回ひとつの事例をあげ、なぜ人々は本を出すのか、そして、本を出すことでどんなドラマが生まれるのかを探っていきます。

「インドネシアが独立した本当の経緯を知ってほしい」

木本あきら氏は拓殖大学客員教授として、教壇に立ち続けてきた。なぜ多忙な業務の傍らで筆をとり続けてきたのか。著書『勇者は語らず』を執筆された経緯を聞いてみた。

 

――出版をされたきっかけや目的は何ですか?

 

一昨年、インドネシア(ジャワ島)に駐在中、インドネシア独立戦争に興味を持ち、この戦争に参加した残留日本兵の行動と戦場跡、そして手厚く祀られている霊園を訪れました。また、ボゴールにある日本軍が創設したPETAという軍事学校(郷土防衛義勇軍)にも何度も足を運び、いかに日本軍がインドネシア独立にかかわったかを学びました。

 

独立戦争を指導して、勇敢に戦った生き残った日本兵も高齢のため亡くなり、最後の英雄である小野盛さんも私の駐在中に亡くなりました。

 

独立から70年も経つと、語り部がいなくなり、あの苛烈な独立戦争の史実が薄れていき、インドネシアの若者の多くは「独立の勇者たち」の存在さえ知らないものが多くなりました。

 

日本に帰って、多くの日本人に、インドネシアと独立運動にかかわった日本兵のことを聞いても、ほとんどの人がその史実を知らず、がっかりしました。これではアジア独立のために命を棄てた多くの英霊に申し訳ないと思い、この本を書く決心をしたのです。

 

この本は、ジャワ島で繰り広げられたオランダ軍相手の戦争物語ですが、次にスマトラ島での物語を書きたいと思っています。また、今年2月、天皇皇后両陛下がベトナムを行幸され、ベトナム独立戦争に参加された残留日本兵の遺族と親しく面談されましたが、フランス軍相手に戦った日本兵の物語を書きたいとも思っています。

 

――出版前後で何か変化はありましたか?

 

拓殖大学の理事長や理事から、この史実について学生に話してほしいということで、大講堂で講演しました。また東京ドームホテルで開催された新年会でも壇上から話す機会が与えられ、ボクシングやレスリングの世界チャンピオンとともに『勇者は語らず』(幻冬舎)が紹介されました。北海道でも、この史実について講演しました。

 

桜チャンネルやチャンネルAJERなどに30分間のインタビュー出演をし、さらに、防衛省現役隊員が読む「朝雲」紙、退役が読む「隊友」紙の話題の本という欄に紹介され、日刊スポーツ紙、拓大OB会の月刊誌「茗荷谷ニュース」にも紹介記事がでました。加えて、ある映画監督から「映画化は面白いね。ただ金がかかる内容ですね」とコメントされるなど、出版後、かなりインパクトのある数か月がすぎていきました。

 

本年2月28日から6日間、天皇皇后両陛下がベトナムを行幸され、ベトナム独立戦争を戦った残留日本兵の遺族と親しく面談をされたのですが、日本にいる息子さん(母親がベトナム人)が僕の本を読み、いたく感動したので、『勇者は語らず』のベトナム版を書いていただきたいと言ってこられました。ノンフィクション小説のインパクトは、すごいものがあることを改めて知りました。

 

 

――原稿に散りばめたこだわりや制作秘話など、ご著書の紹介をお願いします。

 

第二次世界大戦と日本について、日本のマスコミも教育も日本人の大半が「あの戦争は日本が悪かった、アジアの人々と国国に迷惑をかけた」という過度の自虐史観にとらわれていることに、僕は以前から違和感を持っていました。

 

日本はアジアで本当に悪いことをしたのか? そんなことはありません。当時のアジアの独立国は日本とタイだけでした。他の国々は白人による植民地でした。

 

インド、パキスタン、スリランカ、バングラデシュ、ミャンマー、マレイシア、シンガポール、香港はイギリスの植民地。ベトナム、カンボジア、ラオスはフランスの植民地。フィリピンはアメリカの植民地。インドネシアはオランダの植民地。

 

これらの国々は一切の自由はなく、差別され、搾取され、人々は奴隷状態でした。アジアは300年以上絶望の世界に置かれていたのです。

 

白人の国々は、自分たちは優勢人種、有色人種は劣っているとバカにし、植民地からの搾取により栄華を誇っていました。日本は、アメリカ、イギリス、オランダ、オーストラリアなどから経済制裁や、数々の無理難題を押し付けられ、堪忍袋の緒が切れ、これら白人国に戦いを挑むことになります。そして圧政に苦しむアジアの国々に独立の火を焚きつけたのでした。

 

結果、日本はアメリカに負けましたが、アジアでは、白人による植民地主義は終焉を迎え、すべての国が独立することができました。日本はアジアの解放という理想を実現させることに成功したのでした。

 

この史実を、インドネシアに残留した日本兵の血と涙と汗の物語として『勇者は語らず』を書き上げました。僕の言いたかったこと、それは“あの戦争(大東亜戦争)は侵略戦争ではなく、アジア独立のための正義の戦争だった“の一言です。

 

僕は約25年間アジア、アフリカ、カリブ海の国々で生活してきましたが、どの国も大変親日です。日本人は、そろそろ自虐史観を棄て、自信を持つべきです。

 

インドネシア独立戦争に参加した勇敢な日本兵の息子さんやお孫さんたちから、たくさんの思い出話を聞くことができました。彼らは一様に、独立のために命を懸けたお父さんやお爺さんを尊敬し、自分たちはそんな日本人の血を引いているという強い誇りをもっているのです。

 

次は、ベトナム独立戦争に参加した日本兵の物語を書きたいと思っています。彼らは士官学校の教官として、フランス植民地軍に戦いを挑み、独立させました。その後、ベトナムを中国の侵略から守り、ベトナム戦争でアメリカと泥沼の戦いを続け、ついにアメリカを敗退させた、すごい男たちの史実を書きたいのです。

 

 

木本あきら 著

『勇者は語らず』

 

 

日本(ふるさと)から遠く離れたインドネシアの地に、骨を埋めた兵士たちがいる。
これは、異国の独立戦争に命をかけた日本兵の、汗と血と涙の記録……。
アジア激動の時代を駆け抜けた男たちを描く、ノンフィクション小説!

日本が終戦を迎えた1945年、インドネシアではオランダからの独立を目指した戦争が本格化しようとしていた。

母国を離れインドネシアに駐留している高木中尉を中心とした1000人の日本軍は、その独立戦争に巻き込まれることとなる。

彼らは、祖国ではない国に骨を埋めることを自ら希望し、他国の戦争に命をかけたのだった。

 

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幻冬舎ルネッサンス新社 代表取締役社長

企画編集室・室長を経て現職。代表取締役となった現在も、毎月10冊以上の書籍編集に携わる。手がけるジャンルはノウハウ書、旅行記、写真集、絵本など幅広いが、特に得意としているのは小説と自叙伝。著者の出版目的を満たすことを重要視し、書き手と細かく議論を重ねる編集スタイルが特徴。これまで多数の重版実績を持つ。

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