本連載は、未然防止研究所代表、ニュートラルベースNLP®認定マスタープラクティショナーとして、各種トラブルの未然防止の普及に取り組む林原昭氏の著書、『なぜあなたはいつもトラブル処理に追われるのか』(合同フォレスト)より一部を抜粋し、社内におけるトラブルを未然に防ぐ「現場目線」の3ステップの対策を紹介します。

チームで現状を「見える化」し、トラブルを素早く察知

本連載では、トラブルが起こった後、実行すべき「緊急対応」「再発防止」、そして「未然防止」の3ステップについて解説します。

 

<第1ステップ>トラブル発生後の緊急対応

 

トラブルが発生したら、まずは「トラブルに気付くこと」、そして「トラブルを隠さないこと」「トラブルの事実を知ること」「トラブルに対して即対応すること」「トラブル対応を担当者任せにしないこと」が大切です。

 

①トラブルに気付く

 

まずはトラブルの発生に気付く必要があります。顧客クレームなら、顧客から連絡があるのでトラブルに気付きますが、社内のトラブルは誰かが気付かない限り、放置される可能性があります。

 

トラブルとは、現状の姿とあるべき姿(正常な状態)との「差」をいいます。よって、トラブルに気付くためには、常にチームであるべき姿を共有し、現状が「見える化」されていなければなりません。

 

逆に言えば、あるべき姿が曖昧だったり、現状を正しく把握していなければ、トラブルに気付きません。

 

たとえば、顧客A社に提出する見積り書類を、本日17時に提出しなければならないとします。当日17時の時点で提出されていなければ、トラブルに発展するかもしれません。

 

この例でトラブルに気付くためには、あるべき姿である「本日17時、顧客A社に見積り書類提出」が共有化されていること、見積書を提出したか、あるいは提出していないかという事実が「見える化」されていること、この2つが誰にでも分かるようになっていなければなりません。

日ごろから部下に「トラブル報告」を欠かさぬよう指導

②トラブルを隠さない

 

ミスの当事者への叱責は、トラブルの隠ぺいを生むかもしれません。もし皆さんが業務上のトラブルを見つけて、それが自分のミスによるものだとしたら、そのときどうしますか。まずは上司に報告するでしょう。

 

でもその上司がいつも怒ってばかりいる人なら、報告したくないでしょう。だからといって報告せず、自分でそのトラブルを処理しようとしてもうまくいかず、より大きなトラブルに発展することは珍しくありません。

 

逆に、皆さんの部下が当人のミスでトラブルを起こして、その報告を受けたときどう対応しますか。しかも、これが初めてのことではなかったら、「またお前か、なぜ同じようなミスをするんだ。何度注意したら分かるのか」と怒り心頭になるでしょう。

 

でもちょっと待ってください。怒りたい気持ちはよく分かりますが、その態度がトラブルの隠ぺいを生むことは容易に想像できるでしょう。そして一度目のミスは当人の問題でしょうが、同じようなミスが続くなら、それは組織の問題であり、上司にも責任があると考えていただきたいのです。

 

もう1つは、叱責による隠ぺいではなく、トラブルの報告が即実行されない例を紹介します。トラブルの報告が大きく遅れると、故意ではなくとも結果的にトラブルが隠れてしまいます。

 

以前、私は中国の工場の責任者を務めていました。ここでは製品完成後、出荷前検査を実施して、船で日本の顧客に搬送します。あるとき、品質不具合が見つかったのにもかかわらず、そのまま日本に出荷されました。私がその事実を知ったのは、出荷から3日後でした。

 

私は製造のリーダーを呼んで、「なぜもっと早く報告しなかったのか」と問い詰めました。するとそのリーダーは「いつもトラブルを報告すると、原因は何だ、対策はどうすると聞いてくるので、原因を調べていました」との返答です。

 

いつもトラブルの報告を受けたとき、決して叱責はしなかったので、この工場ではトラブルを隠ぺいする空気はありませんでした。しかし、最初の報告を受けたとき、つい原因や対策を聞いていたことに気付き、大いに反省しました。

 

トラブルが起こったら、即報告することが必須です。そのためには、上司が率先垂範して態度に示すことです。日ごろから部下に対して、

 

「どんな小さいトラブルでも見つけたら、原因追究や対策は後にして、隠さず即報告してくれ。顧客に迷惑を掛けないように緊急対応することが第一優先。その後、チームでその原因と対策を検討し、再発防止・未然防止に努めよう」

 

と声に出して何度も何度も言ってください。

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