顧客担当者による「運用方針」のヒアリング
1.運用方針の確認
口座開設前にも運用方針を確認しますが、実際に運用を開始するにあたって、顧客担当者がヒアリングを行います。顧客自身も自分のニーズがわかっていないことが多く、あるいは漠然として具体的な指示を出せないことが多いからです。
例えば、「安全、確実に増やしたいのか、できるだけ多くの資産を子孫に残したいのか」「目標とするリターンは5%なのか10%なのか」「そのために許容する損失リスクは資産の1割までなのか、3割までなのか」といったことです。
特に重要なのは、運用目標(リターン)とリスク許容度のバランスです。最初はどうしても、リターンは多くリスクは少なくなりがちですが、顧客担当者との間でそれを現実的なレベルにすり合わせていきます。
顧客担当者は、運用をスタートしてからも同じことを繰り返し聞いてきます。
2.ポートフォリオの提示
スイスのプライベートバンクは基本的に、顧客との間で確認した運用基本方針に基づき、一任勘定で運用を行います。
実際の投資対象として多いのは、海外の株式や投資信託ですが、近年はヘッジファンドを組み込むケースも増えています。
どのようなポートフォリオを組むのか、ポートフォリオ案(サンプル)が顧客に対して提示されます。一任勘定が基本とはいえ、助言サービスやカストディ(有価証券の保管・運用)のみのサービスも可能です。
もちろんわからない点は質問したり、場合によっては希望を出すことも可能です。日本人は一任勘定というと、相手にすべて丸投げし、後からその結果に対して細かく注文をつける傾向があります。
しかし、スイスでは一任勘定だからこそ自己責任が大前提です。運用方針を最終的に承認するのは顧客であり、プライベートバンクはその方針に基づき責任を持って運用しますが、最終的な責任は顧客が引き受けるということが常識です。
なお、バンク・フリックなど一部のプライベートバンクは、自社では一切運用せず、すべてを外部の運用会社にエクスターナル・アセット・マネジャーとして委託しています。これは自社の運用能力に自信がないからというより、顧客のニーズに合わせて世界中から最適な運用会社を探してくることに特化するという戦略的な判断によるものです。
顧客から預かった資産をベストな方法で守り、また増やすための目利きに徹するというのは、ある意味理にかなった戦略ではないでしょうか。
運用状況は四半期~年1回の間隔でレポートされる
3.運用と報告
運用にあたっては、特に期間は設定しません。短期的な投資ではないので、出口戦略はありません。あえていえば顧客の寿命くらいまで、現在50歳の人であれば80歳くらいまでのスパンで運用していきます。
運用状況については定期的にレポートが送られてきます。間隔は年1回が普通でしたが、最近は半年単位や四半期単位で報告してくれるところが増えてきています。月次報告は通常ありません。
4.組み換え
もちろん、運用しているファンドの成績や市場環境によっては、その都度、ポートフォリオを見直していきます。顧客側からのリクエストも可能です。