前回は、間違った「差別化」で失敗したパチンコホールの事例を取り上げました。今回は、「新規客」を取り込む施策を見ていきます。

既存客の意見を取り入れても「新規客」は獲得できない

データ分析は苦手なB店の店長ですが、アンケート調査は大好きでした。「遊技客の声を直接拾って集客に活かす」という方法がわかりやすかったためです。B店では3か月ごとに実施されていて、できるだけその結果に応えるよう努めていました。

 

ところがアンケート調査に従って導入した施策は次のアンケート調査で既存客の満足度が少し上がるだけで、新規客の集客にはまったく役立っていなかったのです。結果、資金を無駄に使うことになり、店長は「やはりデータは無意味だ」と考えるようになりました。

 

B店が実施したアンケートに答えてくれるのはB店にやってきた遊技客だけです。彼らは商圏にあるA店でもC店でもD店でもなくB店を選んでいる人たちなので、100点満点はくれないにしても、B店に対する満足度は高めだと言えます。

 

仮に他店人数調査の結果が図表のとおりだったとします。B店は地域最下位であり、やってくる100人は商圏にいるパチンコファン800人の12.5%に過ぎません。

 

[図表]他店人数調査での遊技客数

 

少数派である彼らの意見を取り入れ、彼らの好みに合うホールにしてしまうと、残りの700人にとってさらに満足度が低い「行きたくないホール」になってしまう可能性が高いのです。

 

これは地域最人気ホールのD店でも同じです。D店を好む300人は商圏にいるパチンコファン800人の37.5%に過ぎません。アンケート調査を行って、自店に来ている遊技客の好みに特化してしまうと、残りの6割強をとりこぼす危険性がさらに高まってしまうのです。「自店にすでに来ている少数派」の意見を聞いても、「自店に来ない多数派」を取り込む助けにはなりません。

これまでやったことがない、逆張りの施策で集客を狙う

新規客を集めたいのであれば、「B店に来ない人」のニーズを想像することが欠かせません。「今までどおりのホールなら行かない」というのが、彼らの共通認識ですから、「自店を否定している人」と想定する必要があるのです。

 

だとすれば、集客に必要なのは「これまでやったことがない施策」を実施することです。少数派しか取り込めないこれまでの施策をすべて白紙に戻し、営業内容を根底から見直すことこそ集客への早道だと言えます。

 

B店の店長にとって180度の方針転換は勇気が要る決断でした。「既存客を失うのでは」という不安が大きく、「理屈は理解できても踏み切れない」というのが彼の考えでした。

 

そこで私は「動かないことにもリスクがある」ことを説明しました。現在のジリ貧状態は決断を避けてきた過去の延長線上にありますから、この先も同じことを続ければジリ貧がさらに進むだけです。

 

そのことを理解した店長はアンケート調査に頼らない180度の方針転換を決意しました。

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