ファミリー企業の「技術」が事業承継に与える影響

前回は、円滑な事業承継にも繋がる「地域ブランドの育成」について取り上げました。今回は、ファミリー企業の「技術」が事業承継に与える影響について見ていきます。

世代を超えた競争優位の源泉となる「技術」

企業活動における技術は、研究開発技術、生産技術、販売技術など多様で、それは、顧客の問題解決を行う企業の能力ともいえます。例えば、和菓子メーカーであれば、甘いものに目がない顧客(甘味が欠乏している問題)に対して、好みにあった甘味をもつ羊羹(甘味の欠乏の問題解決)をつくる能力(技術)があると考えれば分かりやすいでしょう。このように、技術は顧客価値を生み出すことができる源泉であるといえるでしょう。


顧客価値がある製品サービスは、顧客に対して長期的に購買しようとする意欲を喚起するだけではなく、競合企業と差別化した製品サービスを顧客に提供することができます。

 

それでは、事業承継の関係からは、企業の技術についてどのように考えることができるのでしょうか。

 

第一に、世代を超えた製品サービスにおける競争優位の源泉と考えることができることです。例えば、世界で最古の企業である金剛組(創業578年)は、約1,400年以上にわたって宮大工という建築手法を40世代にわたって現在に継承してきました。

 

第二に、継承される技術は、後継世代が時代や経営環境に応じた経営実践を行う際の指針としての役割をしてくれることです。先の金剛組は、奈良時代の技術を寸分違わず現在に継承しているわけではありません。平安、鎌倉、室町、江戸、明治の時代を通じて、後継世代が各時代の新技術を追加して現在の技術を編み出しているということができます。

継承技術は「後継世代の経営革新」の起爆剤に

最後に、世代を超えて継承される技術は、何を生み出すのかについて考えていくことにしましょう。

 

第一に、時代に応じた新製品や新サービスを開発することができることです。第二に、時代に応じた新技術を開発する際のベースを提供してくれることです。例えば、先述の金剛組の宮大工の技術を考えると分かりやすいでしょう。

 

最後に、技術を通じて、新たな市場を開拓することに繋がることです。例えば、酒造会社が自社の醸造技術を使用して、海外でジャパニーズワインとして製品開発し、新たな顧客を開拓するような場合があげられます。

 

日本の老舗企業では、長期的に培われてきた技術を活用して、後継世代が経営革新の起爆剤として活用していることが理解できます。

 

 

<参考文献>
落合康裕(2016)『事業承継のジレンマ:後継者の制約と自律のマネジメント』白桃書房.

曽根秀一(2010)「企業の生き残りにかんする経営史的アプローチ―我が国の老舗企業の近代化と家訓に着目した比較的分析―」『びわこ経済論集』第9巻第1号.

本連載は書下ろしです。原稿内容は掲載時の法律に基づいて執筆されています。

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連載円滑な世代交代を実現――事業承継の要諦

日本経済大学 経営学部 准教授 名古屋商科大学大学院 マネジメント研究科 客員教授

1973年神戸市生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。博士(経営学)。経営学者。
大和証券(株)入社後、本社人事部、大和証券SMBC (株)金融法人部をへて、2014年より日本経済大学経営学部(東京渋谷キャンパス)准教授就任。ファミリービジネス学会理事。
現在、ファミリー企業の事業承継について経営学の観点から研究を行う。大学での研究活動を軸に、ビジネススクールにおけるケースメソッド形式による事業承継講座を担当するほか、企業の事業承継に関する助言指導や実務家向けセミナーの講師などを務める。2015年末に日本で初めてとなる同族経営の実証研究書となる『ファミリービジネス白書』を同友館から発刊。同書の初代企画編集委員長を務める。

著者紹介

事業承継のジレンマ

事業承継のジレンマ

落合 康裕

白桃書房

【2017年度 ファミリービジネス学会賞受賞】 【2017年度 実践経営学会・名東賞受賞】 日本は、長寿企業が世界最多と言われています。特にその多くを占めるファミリービジネスにおいて、かねてよりその事業継続と事業承継…

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