前回は、相続税対策に役立つ不動産物件の特徴を取り上げました。今回は、所有不動産における「サブリース契約」について、その留意点を見ていきます。

管理会社が「入居者募集・設備管理」などを代行

相続税対策で急増している貸家建築の安心材料になっているのが、サブリース契約です。

 

[図表]

 

サブリース契約の仕組みは上の図のようになっていて、土地の所有者が建築したアパートをハウスメーカーやその関連会社が一括して借り上げ、30~35年の長期間にわたって家賃収入を保証するというものです。サブリース会社がオーナーと賃貸借契約を結んだ上で、今度は入居者との間で転貸借契約を結び転貸人として直接管理するという方法になります。

 

このサブリース契約は、入居者の募集や設備管理などさまざまな手間がかかるアパート経営において、管理会社がすべて代行してくれるので、初心者の参入ハードルはかなり低くなり、これから相続税対策として自分の土地にアパートを建て始めようと思っている人には利用しやすい制度と言えるでしょう。

数年ごとに契約が見直され、家賃が下がるケースが多い

しかし、このサブリース契約が、大きな問題を生んでいます。平成28年11月、テレビCMでもおなじみの大手ハウスメーカーに対し、同社とサブリース契約を結んでいるオーナー130人が、家賃収入から天引きされた家具・家電のレンタル料約4億8500万円の返済を求めて名古屋地裁で集団訴訟を起こしました。

 

他にも、サブリース契約は30~35年という長期契約ですが、2年ごとに家賃の見直しという契約内容になっていることが多く、2年ごとに家賃が引き下がることによって購入当初の計画通りにいかなくなり、多くのトラブルの原因になっています。この問題は深刻化しており、国民生活センターでサブリース被害の特集が組まれるレベルです。

 

サブリース契約は、入居者の有無にかかわらずオーナーに決められた家賃を送金する必要があるため、一般の賃貸管理契約に比べ手数料が高めに設定されています。そのため、オーナーが手にする賃料は、一般の賃貸管理契約に比べ少なくなるのです。

 

サブリース運営会社も、ボランティアでやっているわけではありません。購入当初の家賃が35年取れるというはずもなく、その都度家賃を見直しするのは当たり前と言えます。ただ、購入する側のオーナーに知識がないことも多く、35年一括借り上げという文言だけで安心できるというのは大きな錯覚と言えるでしょう。

契約解除が難しく、物件売却の足かせになることも

この問題のもう一つのポイントは、サブリース契約を解除するのに一苦労するということです。各社契約内容はさまざまですが、転貸借先の入居者とやりとりをしているわけですから、簡単に解除できない契約内容になっています。そのため、いざ売却となった時もサブリース契約を継続しなければならないケースもあり、売却が困難になり流動性が低下することも懸念しなければなりません。

 

逆に言うと、サブリース契約を結ばないと入居者の確保が難しい立地で不動産経営を行うのではなく、一般の賃貸管理契約でも安心して入居者が確保できる立地で不動産経営を始めから行うことが大事だということです。購入前にサブリース契約にするのか、一般の賃貸管理契約にするのかを、よく考えてから物件購入することをお勧めします。

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