前回に引き続き、「シニア人材の雇用」で起きやすいトラブルを見ていきましょう。今回は、「褒め育てる」ことに関連したトラブルを紹介します。

若手社員は「褒めて伸ばせ」がトレンドだが・・・

前回の続きです。

 

シニア人材の問題点(4)褒めて育てることが難しい

 

最近の若手社員に対しては、𠮟って育てるよりも褒めて伸ばせというのがトレンドのようですが、シニア人材には褒めて伸ばすという方法はほぼ通用しません。若手の社員とは別の対応が必要になるのもシニア人材の弱みになります。

 

若い新入社員の場合、仕事ができないところからスタートするので、できたら褒めることを繰り返すなかで自信をつけさせて実績を上げていくという形の人材育成ができます。

 

一方、シニア人材の場合は、もともと仕事ができるのは当たり前ですから、褒めて伸びるというものではありません。むしろ、褒め方によっては子ども扱いされているように感じて、自尊心が傷つく恐れもあります。

相手の価値を認める言葉、共感する言葉を投げかける

シニア人材を動かすには、褒めるよりも、相手の価値を認める言葉や共感する言葉を投げかけるほうが有効です。

 

例えば、「よくできましたね」ではなく、「うまくいきましたね」と声をかけると、相手の価値を認めていることになります。「頼りにしています」「あなたのおかげでうまくいきます」「あなたでないと、できない仕事ですね」などの言葉がけもいいでしょう。

 

このように若手社員とシニア人材で違う対応をしなければならないのは、教育担当者には煩わしく感じられるかもしれません。しかし、年齢性別にかかわらず、人は自分なりの価値観を持って行動し、生活をしています。

 

もともと人の考え方や価値観を変えるのは容易なことではありませんが、一般に人は歳をとるとともに自分の考えに固執して、それを変えるのが難しくなります。いわゆる「頭が固くなる」ということです。シニア人材にその傾向があることは認めなくてはなりません。

 

シニア人材は今までずっと仕事をしてきた方々ですから、自分の仕事に対しては自信があり、ポリシーも持っています。それを損なうことなく、現場の状況と擦り合わせることができなければ、新しい職場でも活躍できません。それができるかどうかが、シニア人材を活かせるかどうかのカギとなるでしょう。

本連載は、2017年5月29日刊行の書籍『シニア人材という希望』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

シニア人材という希望

シニア人材という希望

中原 千明

幻冬舎メディアコンサルティング

超高齢社会の到来とともに、日本人の働き方は大きく変わる――。 都市銀行でマネジメント職を歴任。定年後に起業し、多数のシニア人材を雇用する経営者が語る“新しい労働の在り方"とは? 2013年4月1日、高年齢者雇用安定…

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