前回は、企業が知っておくべき「シニア人材」の特徴を説明しました。今回からは、シニア人材の魅力について、より具体的に見ていきましょう。

積み上げてきた「経験」は、本で身につけた知識に勝る

シニア人材でもっとも強みとなるのは、40年前後仕事を続けてきたなかで得た専門知識と経験です。それには、銀行なら銀行、不動産なら不動産といった、それぞれの業界に特有の慣習なども含まれます。

 

知識だけなら若い人でも勉強して身につけられるかもしれませんが、経験は一朝一夕に積むことができません。長い時間をかけて積み上げてきた経験は、本を読んで身につけた知識よりはるかに勝ります。

 

医師や弁護士、パイロットや電車の運転士などが資格を取ったあと、先輩の指導のもとで実習を行うのは、やはり学校の授業だけでは学べないものがあるからです。恋愛や結婚と同じように、実際に経験してみて初めて分かることは多々あります。

 

たとえば、不動産関係でトラブルになるのは、不動産の所有権が複雑だったり、土地の境界があいまい、過去の書類に不備があるなどの問題のあるケースが大半だからです。

 

トラブルといってもまったく同じ状況ということはありませんから、法律や過去の事例に照らしながらケースバイケースで対応することになります。こういった教科書には載っていないような複雑な要素が絡み合った案件や、機転を利かせて柔軟に対処しなければならない事案ほど、シニア人材の豊富な専門知識と経験が活きるのです。

外見にも表れる、ベテランならではの安定感

また、シニア人材のコミュニケーション能力の高さも、武器となる経験の一つです。シニア人材は今までの社会人生活で、さまざまな困難を乗り越えてきたので、トラブルが起きたときの対応に長けています。

 

例えば取引先からクレームがあったとき、今の若い世代はメールや電話で済ませてしまいがちですが、シニア人材は、とにかく先方に飛んでいって謝罪すると思います。そして、取引先の言い分を聞きながら、うまく落としどころを見つけるのです。

 

これは人生経験によって培われていくものなので、若い社員がすぐに身につけられるスキルではありません。若い社員はシニア人材と一緒に仕事をすることで、多くのことを学ぶことができます。学べることの量、質は同世代の社員と仕事をするのとは比べものにならないはずです。

 

そのほかに、経験豊富なスタッフがいることで顧客に安心感を与え、信頼を得やすいというメリットもあります。

 

若手社員のフレッシュさや初々しさは、裏を返せば、頼りなさや不安な印象ということでもあります。その点、ベテランならではの安定感は、外見にも表れます。ベテランがいるだけで相手の対応が変わってくるというのは、大きなメリットです。

本連載は、2017年5月29日刊行の書籍『シニア人材という希望』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

シニア人材という希望

シニア人材という希望

中原 千明

幻冬舎メディアコンサルティング

超高齢社会の到来とともに、日本人の働き方は大きく変わる――。 都市銀行でマネジメント職を歴任。定年後に起業し、多数のシニア人材を雇用する経営者が語る“新しい労働の在り方"とは? 2013年4月1日、高年齢者雇用安定…

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