不動産業者の提案する「アパート経営」に潜むリスクとは?

前回は、不動産の資産価値を守るという観点からのリフォーム業者の選び方について説明しました。今回は、業者の提案どおりに「アパート・マンション経営」を始めるリスクなどについて見ていきます。

自ら借金するほどのリスクを取る必要があるのか?

将来性のない土地には収益物件を建てないほうがよいのですが、それでも「老後と相続のために、アパート・マンション経営を始めましょう」とすすめる不動産業者が後を絶ちません。大手不動産業者でも、関連するセミナーを毎週のように開催し、顧客を集めています。

 

そのような話がもし自分のもとにあったら、まずは疑ってみるべきかもしれません。「当社では借り上げ保証をします」と言われても、「家賃保証はできないのか?」と考えてみるべきです。経済が好転する環境であればアパート経営は賃料の値上げも見込めますが、現状では建物が古くなり賃料は下がるだけです。建築費用を借り入れで賄っている場合には、建物は減価して借金だけが残ってしまうようなことになりかねません。

 

業者がパンフレットを見せて、「当社のバリエーションで、このような素敵なアパートも建てられます」と言われても、「私は更地で売却したいと考えている」と伝えてみてください。そうすれば、その土地の価値を周囲がどのように見ているのかが、よくわかります。本当にいい土地ならば、買いたいという業者がたくさん出てきます。

 

アパート経営をすすめられて実際に始めるのは余裕の出てきた高齢者が多いのですが、高齢になって、自ら進んで借り入れを起こしてまでリスクを取る必要はないのです。まず、お金に換えて、孫に1500万円、子どもや配偶者に毎年120万円ずつ渡して、わずかな贈与税を納めていけば、そのほうがより安心して暮らせる人も多いはずです。

 

東海地方の資産家で二人の子息のいるFさんは、大手不動産業者から2棟の賃貸アパート経営をすすめられていました。その建築費用は1億3000万円ほどです。Fさんは預貯金が少なかったため、建築費用のほとんどを銀行から借り入れすることを想定していました。私はその話を聞いたとき、「そんな損なことはやめましょう」とアドバイスしました。

 

土地そのものは1億4000万円ほどの価格になります。そのため、Fさんは、土地の半分を売却して、残った土地にアパート1棟を建て、銀行借り入れを7000万円ほどに抑えておきたいと考えていたようです。その考えに税理士も加わり、「貸家建付地にしておけば、25%は安く相続できます」とアドバイスをしていました。

 

相談を受けた私がすすめたのは、「半分の土地を事業用資産にするのはかまわないけれど、土地の半分を売却して得たお金で、東京の収益性の高いマンションを2部屋買っておいたほうがいい」ということです。そして、「それを賃貸に出したほうが、利回りがよい」と伝えました。

 

自分が亡くなったときは、その都内に購入したマンションを二人の子息に渡せばよい。そのほうが、アパート経営を始めるよりも相続対策としてはリスクも少なく有効な方法なのです。

相続人が「もめる」火種になるケースも・・・

所有する土地でアパート経営を始めれば、賃貸収入が上がり、相続税の課税評価で不動産の価値が下がることにつながり、借り入れは財産と相殺できるので、相続税対策になる・・・と、不動産業者は大手も中小もアパート経営を盛んにすすめます。

 

しかし、実態は借金の返済が減価していく建物に変わることになり、賃料収入も数年先は同じ額を見込むことができず、資産家は〝賃貸経営競争〞に晒されることになります。業者が提示する借り上げ保証は家賃保証ではないので、3年先、5年先には、どうやって経営を維持していくかと、まったく気が休まらない状況になるでしょう。

 

借り入れ金利も上昇局面を迎えれば、変動金利なら、建物が古くなる一方で借金を育てているような感覚になるものです。そして、相続のときには、誰が古くなったアパートの経営を継ぐかで相続人がもめるのです。

 

また、前述のような資産家向けのセミナーは土地の価格を考慮に入れず、いわば建物に対しての利回りで収益を計算しています。「利回り6%、8%」といっても、土地の価格(価値)を考慮すると、利回りは確実に下がり、2%くらいになるのが現実でしょう。そうなると、条件の良い土地ならば駐車場にでもしておいて、買いたいという業者が見つかったときに売却したほうがリスクが少ないのです。空室が目立つアパートも、結局のところ完全所有権で売却しないと買い手がつきません。そうなると、入居者の立ち退き費用なども大きな負担となってきます。

 

ですから、そのような業者のすすめには慎重に対応しないといけません。判断を誤ると、後々、大きな負担に苦しむこともあるのです。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『塩漬けになった不動産を優良資産に変える方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載「売却」と「組み替え」で問題のある不動産を生きた資産に変える方法

東京アーバンコンサルティング株式会社 代表取締役社長

1967年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、三菱信託銀行入社。本店不動産部配属となり、不動産仲介・鑑定・開発・各種コンサルティング業務に従事する。その後、米国ロサンゼルス支店融資課長、次長、本店国際不動産コンサルティング業務担当部長等を歴任し、1991年に米国三菱信託銀行(ニューヨーク)会長兼社長に就任。
95年、英国系国際不動産コンサルティング会社である日本ナイトフランク株式会社代表取締役社長に就任。97年に東京アーバンコンサルテング株式会社を設立、現在に至る。
不動産鑑定士。不動産カウンセラー(日本不動産鑑定協会)。不動産コンサルティング技能資格(国交省所管)。宅地建物取引主任者(国交省所管)。不動産専門調停委員(東京簡易裁判所)。

著者紹介

塩漬けになった不動産を 優良資産に変える方法

塩漬けになった不動産を 優良資産に変える方法

相馬 耕三

幻冬舎メディアコンサルティング

バブル崩壊以降、買ったはいいものの収益を生んでいない賃貸物件や、地価の暴落でほったらかしになっている土地を抱える不動産オーナーは多くいます。ソニー生命の不動産整備などを実現してきた経験豊富な不動産コンサルタント…

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