物価、為替相場・・・経済動向と「金利変動」の関係

今回は、経済動向と「金利変動」の関係を見ていきます。※本連載では、松本大学松商短期大学部経営情報学科の藤波大三郎教授による著書『たのしく学べるファイナンシャル・プランニング』(創成社)の中から一部を抜粋し、ファイナンシャル・プランニングの基礎知識の中から「金融資産運用」について解説します。

好景気なら金利は上昇、悪化すれば金利も低下

(3)金利の変動要因

 

政府の経済についての将来的な見通しでは、10年くらいかけて経済成長は回復し、金利も上昇するとしています。そこで経済動向と金利の変動について説明します。

 

一般に景気が良いとお金を必要とする企業が増えて金利が上昇し、景気が悪化すると金利は低下するわけであり、1990年代にバブル経済が崩壊した後、わが国は長く低金利の時代が続いています。バブル経済のピークの頃は高金利の時代であり、定期預金の金利も高かったのですが、現在ではそうしたことはなくなっています。

 

次に物価と金利について見ますと、物価がインフレとなって上昇する時にはモノの価格が上がるのでそれに関連するお金の動きも増えて金利も上昇します。一方、物価が下落すると金利も低下することになります。金利のうち、短期の金利については日本銀行の金融政策によって動かすことができます。たとえばインフレになれば経済への悪影響を考えて日本銀行は金融を引き締めてインフレを止めようとします。

 

一方、デフレになると物価が下落しますので金利の水準も下がってしまいますが、このデフレが起こると実質金利は上昇します。実質金利とは金利に物価上昇率の影響を加味したもので、通常、金利-インフレ率=実質金利となります。デフレではモノの価格は下がるけれども金利は、通常、マイナスにはならないので実質的な金利は高くなります。このような状況では企業は新たな設備投資を行うことは難しくなり、景気が悪化してゆきます。

 

こうしたデフレと景気の悪循環をデフレスパイラルと呼びます。1970年代くらいまでは世界の先進国の経済はインフレが問題となっていましたが、今世紀に入ってからは、日本はもとより世界の先進国の経済でもデフレに陥らないことが課題となっており、経済の状況は大きく変わりました。

金利が上昇すると、なぜ株価は下落するのか?

また、為替相場と金利の関係は複雑なものがあります。まず、金利が高くなると、その国での金融資産運用の収益性が高まるので、その国の通貨は強くなります。逆に金利が低くなるとその国での金融資産運用の魅力は小さくなるので、その国の通貨は弱くなります。ここから金利が非常に低い場合までを考えますと、金融緩和政策をするだけでその国の通貨は安くなります。日本が金融緩和政策を始めたことで円安が発生したのはこのためです。

 

なお、為替相場の変動といっても限度があります。為替相場は長期的には購買力平価と呼ばれる理論的な為替相場の水準が基本となります。これはある国と相手の国で同じ商品を購入するためにかかるお金で為替相場が決まるという考え方です。

 

たとえばハンバーガーが日本で100円、米国で1ドルとすると、為替相場は1ドル=100円となるということです。こうした考え方をさらに物価全般に広げ、インフレ率の差で為替相場が決まっていくと考えられています。日本がデフレであった時代は、為替相場では円高が起こってしまうことになります。

 

一方、現在のように日本銀行がインフレ目標を採用していると円安が生じやすくなります。実際の為替相場には短期的な思惑での売買をする人々が多くいるためにこの通りにはなりませんが、長期的にはこの購買力平価を基準にして為替相場は変動するといわれています。為替相場の変動の原因は他にも多くのものがあり、たとえば金利差、国際収支などを反映しながら変動するといえるでしょう。

 

このインフレと為替相場には資産運用で大切なことがあります。それは物価上昇率の高い国の通貨は将来的には価値が下落して、日本から見ればその通貨に対して円高が起こる確率が高いということです。高い金利の国の物価は高い場合が多く、その場合、高金利の通貨の外国債券に投資を行っても、将来的には円高により為替差損が起こってしまう可能性が高いということです。いつもそうであるというわけではありませんが、長期的にはそうしたことが起こる可能性が高いといえます。実際、日本がインフレ目標を導入して金融緩和を始めると円安が起こったわけですが、インフレの起こる国の通貨は、他の通貨に対して弱くなるということです。こうした基本を知っておくことが海外の債券や株式に投資を行う場合に重要となります。

 

また、株価と金利も大きな関係があり、金利が上昇すると株価は下落することが一般的です。株価は将来の経済の動きを反映しますので、金利が上昇する予測が出た時点で株価は下落するという現象が起こります。この現象は簡単にいえば、金利が上昇すれば債券への投資で十分な収益が得られますのでリスクの大きい株式投資の魅力は小さくなるからということもできます。

 

為替相場の話に戻りますが、インフレが起こるとその国の通貨は安くなる、弱くなると述べましたが、景気が良くなるとその国への投資が多くなるため、その国の通貨が強くなります。つまり、多少のインフレが起こっても実質経済成長率が高くなれば、その国の通貨は弱くならないといえます。そうした意味では、海外の債券、株式で資産運用を行う場合、経済成長力のある国への投資が大切という当たり前のことになるでしょう。

 

[図表]先進国の消費者物価上昇率の推移( 5年毎の平均伸び率)

資料:内閣府ホームページ。
資料:内閣府ホームページ。

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連載ファイナンシャル・プランニングの知識から学ぶ「金融資産運用」

松本大学松商短期大学部経営情報学科 教授

1954年岡山県生まれ。東京大学法学部卒業後、太陽神戸銀行(現三井住友銀行)入行。さくら銀行資本市場部主任調査役、ルクセンブルグさくら銀行副社長、さくら能力開発センターシニアインストラクター、三井住友銀行人事部研修所上席所長代理等を経て、2008年より現職。中央大学商学部兼任講師、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本証券アナリスト協会検定会員、不動産証券化協会認定マスター、宅地建物取引士。

著者紹介

たのしく学べる ファイナンシャル・プランニング

たのしく学べる ファイナンシャル・プランニング

藤波 大三郎

創成社

要所を押さえることで,効率よくFPの知識を得ることができる! 目次 第1章 ライフプランニングと資金計画 第2章 リスク管理 第3章 金融資産運用 第4章 タックスプランニング 第5章 不動産 第6章 相続・事業承継

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