GDP、有効求人倍率、日銀短観・・・景気動向を示す指標の概要

本連載では、松本大学松商短期大学部経営情報学科の藤波大三郎教授による著書『たのしく学べるファイナンシャル・プランニング』(創成社)の中から一部を抜粋し、ファイナンシャル・プランニングの基礎知識の中から「金融資産運用」について解説します。

「資本市場」と「短期金融市場」に分けられる金融市場

1.マーケット環境の理解

 

(1)金融市場の仕組みと金融政策

 

金融市場は、期間が1年超の資本市場と1年以内の短期金融市場とに分けられます。短期金融市場はインターバンク市場と呼ばれる金融機関だけが参加する市場と、オープン市場と呼ばれる一般企業も参加できる市場があります。インターバンク市場の1つであるコール市場は明治時代からあり、期間が1日からの取引もある市場で日本銀行がコントロールできる市場です。

 

また、銀行の定期預金の金利はこの短期金融市場の金利をベースに決められているのが現在の状況です。日本銀行がコントロールするという意味ではこの短期金融市場の状況は重要な意味があり、日本銀行の金融政策の効果が直接的に現れる市場といえます。

 

資本市場は英語ではキャピタル・マーケットと呼ばれ、株式市場と公社債市場からできています。企業が設備投資に必要な資金を株式や社債などの発行によって調達する過程から生まれた市場です。

 

株式市場は資産運用において大切な役割を果たしていますし、公社債市場も国債、社債の取引で重要な役割を果たしています。特に国債の取引は長期金利とよばれる金利の水準を決めることになります。この金利水準が高くなると、企業の設備投資が減少します。また、日本銀行は、現在、後で述べる長短金利操作付き量的質的金融緩和政策を用いてこの公社債市場に大きくかかわっています。

 

なお、公社債市場は取引所取引より店頭取引の方が多くなっています。株式は定型的な取引として取引所取引が効率的ですが、債券はさまざまな種類があるために相対(あいたい)取引が主となっているからです。

経済成長を知る最も基本的な指標はGDP

(2)景気指標・経済指標

 

経済成長については、GDP(グロス・ドメスティック・プロダクト、国内総生産)がその基準になります。この数値は四半期ごとに内閣府から発表され、その都度、大きな関心を呼んでいます。特に実質経済成長率、つまり、名目的な経済成長率を物価の変動率で修正したものが重要となります。このGDPに関するデータは、精度をあげながら段階的に公表されます。これは、速報性と正確性の双方を考えたための仕組みです。

 

そして、長期的な経済成長とは別に短期的な景気の変動というものがあります。経済成長は景気の変動を繰り返しながら起こるのが一般的です。その短期の景気動向を見る指標として景気動向指数というものがあります。これは先行指数、一致指数、遅行指数の3つに分かれるのですが、先行指数の代表的なものが株価です。

 

株価は実際のGDPの変動を1年程度先取りして変動するといわれています。景気が良いのに株価が下落する時は、1年後には景気の後退が始まる可能性が高いといえます。最近では2008年がそうでした。日常の景気が良いのですが、米国発の金融問題は結局2008年にリーマン・ショックを引き起こし、日本の株価も大きく下落しました。そして、翌年に戦後最大の景気後退が起こりました。株価を見ていれば来年の景気はある程度わかるということです。

 

一方、遅行指数では失業率が有名です。企業は景気が良くなってもすぐには従業員の数を増やしません。また、景気が悪化してもすぐにリストラは行いません。ですから、失業率の推移を見ていると実際の景気変動はわからないといえます。

 

雇用関係で現在の景気を反映する指標としては、有効求人倍率があります。これはハローワークにおける求職数と求人数の比率で景気の変動をほぼ同時に反映するとされています。こうした指標を総合的に見ながら、景気の変動を見ていくことが必要でしょう。なお、この指数についてはCI(コンポジット・インデックス)という指標が使われており、景気の方向感だけでなく量的な面も表せるようになっています。

 

その他、日本銀行の発表する日銀短観が四半期毎に発表されています。そのなかの業況判断DI(ディフュージョン・インデックス)が重要とされています。これは企業への大量のアンケートによって作成されています。対象となる企業数は1万社以上で、回答率は97~99%ときわめて高率です。日銀短観は、海外でも「TANKAN」として広く知られています。

 

また、物価指数については、消費者物価指数が総務省によって、企業物価指数が日本銀行によって発表されています。企業物価指数の方が、短期的変動が大きく、経済の動きを反映しているといわれます。また、消費者物価指数は、実際の物価動向より1%程度大きく現されるとされています。日本銀行が2%の消費者物価指数を目標としているということは、実際の市民生活の感覚では1%のインフレを目標としているとも考えられます。

 

消費者物価指数は、多くの品目を対象とした総合指数と、生鮮食料品を除く総合指数と、食品(酒類を除く)およびエネルギーを除く総合指数の3つがあり、生鮮食料品を除くものはコア指数、食品(酒類を除く)およびエネルギーを除くものはコアコア指数と呼ばれています。コアコア指数は米国他諸外国で重視されています。

 

黒田日銀総裁は、物価上昇率の目標達成を判断する時には総合指数を用いるとしていますが、日本銀行は、通常、天候の関係で価格変動が激しくなる生鮮食品の影響を省いたコア指数や、コアコア指数も重視するようになっているといわれます。また、後で述べるオーバーシュート型コミットメントでは、コア指数を用いています。

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連載ファイナンシャル・プランニングの知識から学ぶ「金融資産運用」

松本大学松商短期大学部経営情報学科 教授

1954年岡山県生まれ。東京大学法学部卒業後、太陽神戸銀行(現三井住友銀行)入行。さくら銀行資本市場部主任調査役、ルクセンブルグさくら銀行副社長、さくら能力開発センターシニアインストラクター、三井住友銀行人事部研修所上席所長代理等を経て、2008年より現職。中央大学商学部兼任講師、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本証券アナリスト協会検定会員、不動産証券化協会認定マスター、宅地建物取引士。

著者紹介

たのしく学べる ファイナンシャル・プランニング

たのしく学べる ファイナンシャル・プランニング

藤波 大三郎

創成社

要所を押さえることで,効率よくFPの知識を得ることができる! 目次 第1章 ライフプランニングと資金計画 第2章 リスク管理 第3章 金融資産運用 第4章 タックスプランニング 第5章 不動産 第6章 相続・事業承継

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