建設業で注視したい「未成工事受入金・未成工事支出金」とは?

今回は、建設業の特徴的な勘定科目、「未成工事受入金」「未成工事支出金」について見ていきましょう。※本連載は、株式会社アイユートの代表取締役で、中小建設業専門の財務・原価コンサルタント、経済産業省後援ドリームゲート・アドバイザーも務める服部正雄氏の著書、『小さな建設業の脱! どんぶり勘定 事例でわかる「儲かる経営の仕組み」』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋し、建設業の生死を分ける「資金繰り」について解説します。

一般企業の前受金に相当する「未成工事受入金」

建設業の特徴的な勘定科目に、「未成工事受入金」と「未成工事支出金」があります。

 

「未成工事受入金」とは、一般企業の前受金に相当するものです。発注者から、工事の完成前に、請負代金の一部を受領する場合などがこれにあたります。新築住宅やリフォーム工事などでは、契約時に契約金として代金の一部を受領するケースもあります。

 

ゼネコンなどからの下請工事の場合には、工期が長く、下請会社の立替えが多くなるため、出来高と称して工事代金を分割して受領します。いずれの場合も、工事の完成時には完成工事高(売上)に充当します。

 

「未成工事支出金」とは、売上になる前の工事代金の立替え金のことで、未完成工事に要した工事原価項目を集計し、棚卸資産として計上するものです。材料費・労務費・外注費・経費などに分類して管理する必要があります。税理士さんによっては、これを仕掛工事という科目で取り扱う場合もあります。

 

「未成工事受入金」と「未成工事支出金」、この2つの項目がほかの業種にはなく、中小建設業の経理が資金の管理が十分にできずに「どんぶり勘定」になりやすい理由です。これまで私が担当してきた建設会社の多くは、決算時に「未成工事支出金」を手で拾い、計算して税理士さんの決算処理に用いていますが、拾いもれが多発して、正しくない決算書になっています。

 

また、「未成工事支出金」や「未成工事受入金」の勘定科目がない、商業簿記的な決算書も少なくありません。経理体制が整っていない会社では、「未成工事受入金」の勘定科目がなく、得意先への請求高や入金高を、すべて売上として処理している会社もありました。

 

それらは正しい決算とはいえず、「未成工事支出金」の計上もれなどは税務調査で指摘され、修正申告を余儀なくされます。

 

とくに規模の小さい建設会社は、未成工事の把握が重要です。なぜなら、未成工事を把握しないまま会社の規模が大きくなった場合、実際の利益との乖かい離りが大きくなるからです。

 

実際の経営状況がわからないまま、会社規模が拡大するのは非常に危険です。

2つの勘定科目の処理次第で、建設業の利益は変わる

<改善事例その3 専用ソフトで正しい試算表に>

 

土木工事業と建築工事業の年商10億円のC社では、決算まで「未成工事受入金」と「未成工事支出金」の把握ができず、毎月の試算表が正しいとはいえませんでした。

 

公共工事などの前受金を「未成工事受入金」として処理せずに、売上高で計上していたため、期中は大きく利益が発生して、税金対策なども考えていました。

 

しかし、前受金として入金していた工事代金を、決算時に売上高から「未成工事受入金」に振り替えたため、大きく利益が減少して赤字になってしまいました。

 

そこで、専用ソフトを使って「未成工事受入金」と「未成工事支出金」を毎月の試算表に反映するようにしたところ、決算時と同じように正しい試算表が作成できるようになりました。業績をタイムリーに把握できるようにもなり、結果として、銀行からの評価も高まりました。

 

このように、「未成工事受入金」と「未成工事支出金」の2つの勘定科目の処理次第で、建設業の利益は変わります。「脱!どんぶり勘定」の肝といえるでしょう。

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株式会社アイユート 代表取締役
中小建設業専門財務・原価コンサルタント
経済産業省後援ドリームゲート・アドバイザー
 

大学卒業後、機械メーカー/電気工事業にて取締役経理担当、経営企画担当等を経て2007年4月より株式会社アイユート代表取締役に就任。
長年にわたる実務経験を活かして中小建設業を専門に、“脱!どんぶり勘定”で業績向上を図る支援を中心に活動中。
住宅工務店、建設工事業、土木工事業、専門工事業(基礎外構工事業・給排水設備業・電気工事業・解体工事業・防水塗装工事業)等で原価管理の改善、経営の「見える化」、財務改善等、経営支援実績多数。
社名のアイユートはイタリア語の補佐役的な意味で、建設業会計の仕組みや原価管理の体制ができていない中小建設業の経営者の補佐役として活躍。
経営改善の意欲があり、勉強熱心な中小建設業の若い経営者を多数顧客層にもち、建設業経理に精通した社員の雇用が難しい中小建設業、また特殊な業界であるため顧問の税理士さんが支援し難い部分を、外部の臨時経理部長的な立ち位置で補佐する支援を実施中。
自らも熟年起業家として10年前に起業した経験をベースに、起業家支援も実施中。

著者紹介

小さな建設業の脱! どんぶり勘定 事例でわかる「儲かる経営の仕組み」

小さな建設業の脱! どんぶり勘定 事例でわかる「儲かる経営の仕組み」

服部 正雄

合同フォレスト

計数管理と利益意識の向上が、会社経営を救います! 自社の数字を理解し、利益を必ず確保するという意識を高めて、粗利益率や債務超過を改善。中小建設業ならではの資金繰り・利益計画など、儲けるための考え方を、実例を使っ…

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