本連載は、日本彩珠宝石研究所の所長で、独自にコレクション収集も行う飯田孝一氏の著書、『宝石Q&A』(亥辰舎)より一部を抜粋し、宝石に関する様々な疑問についてQ&A方式で答えます。

年単位で陽に当て続ければ色は褪めるが・・・

Q:クンツァイトやアメシストは、陽に当てると色が褪めるってほんとですか?

 

A:本当です。しかし全ての石ではないので、心配には及びません。

 

 

<解説>

 

クンツァイトやアメシストの中には、日の光に長い時間曝され続けるとその色が無くなってしまうものがあります。時間といってもそれは年単位という時間で、その石が置いてある場所と、光に曝されている時間の積算によって退色の程度は大きく異なります。また明るめの石にその様な現象が多く見られます。

 

それらの宝石に退色の原因を作るのは、光の中の[紫外線 UltraViolet]です。特定の波長を持つこの光は、人の肌の細胞を刺激して黒色メラニン(ユーメラニン)を生成し、黒い染みを作る事でも知られています。

 

その紫外線が宝石の中に入ると、結晶の構造によってはそのエネルギーが結晶に色を形成している構造を破壊してしまう事があります。その結果、宝石の色は消失してしまうのです。

 

これは例えれば、衣服を一季節のあいだ陽に曝しておくと、染料が分解して色が褪めてしまう事にも似ています。無機質の宝石と有機質の染料とはその性質は同じではありませんが、無機質の宝石の中にも紫外線によって退色してしまうものがあるのです。

 

当然その性質の有無は、他の石にもあって、宝石として認められる“不変”という要件の一つにもなっています。簡単に色褪めしてしまうものは、宝石としては認められないのです。

宝石は、必ず「暗い箱の中」にしまっておく

<かんたん宝石学>

 

クンツァイトとアメシストの他にも、日の光によって退色する性質を持つものが知られています。

 

一例を上げると、スモーキー・クォーツは長いあいだ陽に曝されると間違いなく色が無くなってしまいます。次に挙げる宝石の中にも、その色を失ったり変色してしまうものがあります。

 

アクアマリン、アパタイト、イエロー・サファイア、イエロー・クォーツ、ジルコン、スキャポライト、ダンブライト、トパーズ、トルマリン、フルオライト、ヘミモルファイト、ユークレース、ローズ・クォーツにはその様な性質が備わっています。

 

これらの中の特定のものが褪めやすいのですが、人工的に着色して作られたアゲートやカルセドニーの中にも退色するものがあります。有機質の宝石では、サンゴやカラー・パールはその傾向が強い事で知られています。スギライト、ロードナイト、シンナバー、そして一部のロードクロサイトは反対に黒くなってしまう事があります。

 

したがって、宝石は使わない時は必ず暗い箱の中にしまう事をお勧めします。窓際や鏡台の上に置きっぱなしにしてはいけません。

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