前回は、都心の「1K・1LDK物件」の賃貸需要が高い理由を取り上げました。今回は、賃貸市場に影響を与える「民泊」の現状を見ていきます。

「住宅宿泊事業法案」の閣議決定で民泊が解禁に

訪日外国人が急増しているのは周知の通りで、平成28年には2000万人を超える外国人が来日しています(図表1参照)。

 

[図表1]


政府は、さらなる外貨の獲得のため、平成32年に4000万人、平成42年には6000万人の訪日外国人客数を目指すと宣言しました。ここで問題になってくるのが、宿泊施設の問題です。今は、ホテルを取るのも一苦労で、受験シーズンにはホテルが取れなくて困っている受験生が増えているというニュースも報道されています。

 

この問題を解決するために運用検討がされているのが、いわゆる「民泊」です。旅館業法との兼ね合いや近隣問題など解決すべき問題があるため法整備が遅れていましたが、政府は平成29年3月10日に民泊を全国で解禁する住宅宿泊事業法案(民泊新法)を閣議決定しました。この閣議決定により、家主には都道府県へ届け出、仲介業者には観光庁への登録を義務付けることで、誰もが民泊事業を営めるようになります(図表2参照)。

 

営業日数の上限は年間180日とし、地方自治体が条例で短くできる規定も盛り込まれました。早ければ、平成30年1月にも施行される見込みです。

 

[図表2]

賃貸物件の民泊転用で、既存物件のニーズは高まる

この民泊が整備されたあかつきには、賃貸市場に与えるインパクトがとても大きいのは間違いありません。なぜなら、通常に賃貸で貸すよりも民泊を運営した方が、家主の収益性は高まるからです。民泊仲介の世界最大手である米国のエアビーアンドビー社によると、エアビー利用訪日客は、平成28年に370万人いたと公表されました(図表3参照)。

 

[図表3]

 

順調にエアビー利用者が増えれば、賃貸住宅から民泊に転用される物件も増えることでしょう。政府は、平成28年に2000万人いた訪日外国人数を東京オリンピックがある平成32年には4000万人に、そして、最終的には6000万人を目指しています。

 

最終的に訪日外国人が4000万人増えた場合、全員が1泊だった場合のシミュレーションでも、4000万人÷365日=約10万9000部屋が今後は必要になる計算です。当然ホテルの建築も進むでしょうが、図表4のように相当数の賃貸物件が民泊に転用されることも予想できます。

 

[図表4]

民泊に有利な物件の条件は「都心」「駅近」

もし仮に、民泊市場に参入する人が民泊物件として選ぶのであれば、外国人が目的地まで辿り着きやすい駅近物件を選択することがほとんどでしょう。

 

つまり、駅近物件から民泊物件として運用が始まるのであれば、賃貸市場から魅力的な駅近物件がなくなってしまうため、場所によってはその地域の平均家賃が上がることも考えられます。そういった恩恵を受けられるのも、物件をたくさん建築できる場所のある地方より、建物を建てる土地の少ない都心であることは間違いないでしょう。

 

平成27年の相続税改正により、不動産市場は大きな影響を受けました。こういった法令改正により不動産市場は大きく影響を受けるため、高いアンテナを張って情報収集をすることが非常に重要なことです。

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